田辺三菱製薬 新本社ビル・加島オフィス棟
歴史ある薬問屋街から、企業文化を発信する
本日は田辺三菱製薬 新本社ビルおよび加島オフィス棟の建設プロジェクトに中心的な役割を果たされたお2人に、山下PMCの担当者とともにプロジェクトを振り返っていただきます。
話し手のご紹介
-
山内 俊行
田辺三菱製薬株式会社
ビジネスエキスパートセンター
本社業務グループ
グループマネジャー
■本プロジェクトでの役割
本社建設プロジェクト
全体統括プロジェクトマネジャー(起案部門) -
西 伸照
田辺三菱製薬株式会社
製薬本部 製薬企画部
設備企画グループ
マネジャー
■本プロジェクトでの役割
本社建設プロジェクト
全体統括プロジェクトマネジャー(建設部門) -
鴨下 清
山下ピー・エム・コンサルタンツ
事業推進本部 事業推進第二部
部長
■本プロジェクトでの役割
統括プロジェクトマネジャー -
野村 康典
山下ピー・エム・コンサルタンツ
取締役 専務執行役員
事業管理本部担当役員
■本プロジェクトでの役割
電気計画プロジェクトマネジャー
[~2011年8月]くすりの道修町に本社ビルを建てる
創業の地である大阪、それも薬問屋街の
由緒を持つ道修町に建てたいという
揺るぎない想いがありました。(山内)
最初にお聞きしたいのは、なぜ大阪・道修町に新本社ビルを建てようとされたのかということです。
- 山内
- 田辺三菱製薬のルーツのひとつ、田辺製薬が1678年に大阪の土佐堀一丁目に「田邊屋振出薬」製造販売店を開いたことに由来します。その後1791年に道修町一丁目、さらに1855年に現在新本社ビルの建つ道修町三丁目に移転しました。それは薬問屋街として栄えていた道修町への満を持しての進出で、それ以来こちらを拠点に発展してきました。現在も道修町には、錚々たる製薬会社が本社やオフィスを置いています。このような歴史や背景があるため、経営陣をはじめ弊社の人間は、新本社ビルに対し、田辺製薬の創業の地である大阪、それも薬問屋街の由緒を持つ道修町に建てたいという揺るぎない想いがありました。
- 西
- 本社エリアの拠点統合の一貫でもありました。弊社は5つの製薬会社による合併を重ねてきました。2007年の田辺製薬と三菱ウェルファーマによる合併を経た後は、オフィスや研究所、工場などの拠点統合は大きなテーマでした。
- 山内
-
新本社ビル建設のプロジェクトが本格化したのは、2010年に本社を仮オフィスに移してからです。まず社内で構想を練るためのワーキング・グループを立ち上げ、2011年8月に新本社ビルの事業コンセプト”Heart &
Head
Quarters”を固めました。外部のコンサルタントに入ってもらい、経営層やステークホルダーに新本社ビルに何を求めるのかをインタビューしたり、社員がどういう働き方をしたいかグループディスカッションや個別インタビューをしたり、Webを利用した調査をしたりしました。その結果を踏まえ、歴史や土地、人との縁や心の交流を意識した会社だということを再認識し、”Heart”という言葉を含むコンセプトにまとまりました。企画を進める中で、道修町に建てる新本社ビルだけでは床面積が足りないこともわかってきました。
一方で製造部門の合理化を進める中で、技術系の拠点を再編しようという気運もあり、製造拠点を置いている大阪市淀川区の加島事業所内にも並行してオフィス棟を新設することになりました。
本社オフィスという特性上、プロジェクトを成功させるためには十分な経験と実績を持ったCMとの協業が不可欠だと感じました。(西)
お2人が関わりはじめたのは、どの段階からでしょうか。
- 西
- 私は2010年からです。構想自体はそれ以前から練られていましたが、具体化はこれからというところでした。私は設備投資案件を遂行・支援する部署に所属し、プラント建設案件があれば、それぞれの起案担当部門とともに建設を具現化してきました。かつては旧社のそれぞれのエンジニアリング部門に建築のスペシャリストがいましたが、現在では人員を絞り機能を統括管理の方に移行しています。
- 山内
- 私は2013年4月からです。新本社ビルの設計・施工者が決定し、実施設計がはじまった頃でした。私は元々、加島事業所で工場の設備導入の仕事をしていました。西が説明した、設備投資案件をすべて自前でやっていた頃の“残党”です。新本社プロジェクトメンバーの大半が設備の仕事の経験がない状況で建設が進もうとしていたので、技術面のサポートを期待されて呼ばれたのではないかと思います。
- 鴨下
- CM(コンストラクション・マネジメント)のことはご存知でしたか?
- 西
- 我々の部門では、以前から存じておりました。ただ工場であればCMに頼らずゼネコンやエンジニアリング会社と直接やりとりしても、我々のノウハウでやっていける自負があったので、これまではなかなか採用には至りませんでした。オフィスビルは極端にいえば、ゼネコンに丸投げしてもそれなりの建物はできると思います。しかし機能、目的が明確な工場建設などと違いオフィスビルというものは、自分の住まいと同じように求められる価値観は多種多様で、そうした想いを集約してひとつの形につくり上げることは、社内の担当者だけではとても難しいと感じていました。加えて本社オフィスという特性上、単に機能を満たすだけではなく、抽象的なコンセプトをプランニングに落としこまなくてはなりません。そして社内外のステークホルダーに対し、建設コストの妥当性、設計の提案についての公正な評価を説明することも要求されます。50年に一度あるかないかのこのプロジェクトを成功させるためには、十分な経験と実績を持ったCMとの協業が不可欠だと感じていました。
そこで複数のCM会社とコンタクトを取っていきました。社内ではCMの認知度が低かったこともあり、“建設アドバイザー”という呼称を用い、我々のオーナーズ・エンジニアリング業務の技術的・量的な補完のためには必要な役割だと訴えていきました。その結果2010年10月、CM選定のプロポーザル開催にこぎつけました。
- 大阪のオフィス街に位置する道修町。江戸時代から薬問屋街として栄え、今も製薬会社の本社や事業所が立ち並ぶ。
- 本社ビル14階に設けられた屋上庭園と、大阪都心部によく見られる屋上の稲荷神社。役員が定期的に参拝を行う。
プロジェクトに関わったマネジャー
関連する用途
-
オフィス
多くの業界が国内のみならずグローバルな視点をもって事業を推進されているなか、最近はカーボンニュートラルへの対応も考えていく必要に迫られています。自社オフィスにおいては、企業理念を体現するブランディングの実現や、イノベーションの創出を促す空間、web会議が根付いたことへの施設側の対応が求められています。また、テナントオフィスにおいては、採算性の向上や周辺競合施設との差別化を図るブランディングに加え、在宅勤務の増加によるオフィス面積減少の動きへの対応など、新たなオフィスビルの構築が求められています。
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