森永製菓新社屋「森永芝浦ビル」
人・社会・環境に優しいウェルネスカンパニーの実現拠点
森永製菓株式会社は、築50年を超え老朽化が進んだ旧本社ビルを離れ、新社屋「森永芝浦ビル」に移転しました。作り手と使い手がともに考え、ゼロからつくり上げた新社屋は、都会の一等地にありながら、敷地内外の緑や空を取り込むウェルネスな施設でした。
森永芝浦ビル
森永製菓が本社を置く新社屋。東京都港区芝浦1丁目、JR 山手線・京浜東北線「田町」駅・都営三田線・浅草線「三田」駅から徒歩数分圏内。東京支社が入居していた自社ビルを解体し、その跡地に建設された。芝浦公園、愛育病院からつながる緑・光・風の揺らぎを取り込む環境共創型オフィスになっている。「2024年度グッドデザイン賞」受賞。©株式会社エスエス 島尾望
話し手のご紹介
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竹澤謙介さん
森永製菓株式会社
総務部 総務グループ -
原田佳尚さん
森永製菓株式会社
総務部 総務グループ -
髙橋佑介さん
森永製菓株式会社
新規事業開発部/生産技術開発部
設備技術グループ施設・管理担当兼務
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笠原 拓
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進第二部門 事業推進部門 4部
チーフプロジェクトマネジャー -
小坂信哉
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進第一部門 事業推進部門 3部
プロジェクトマネジャー
本社ビルを新築する最大の目的とは?
社員が毎日、出社したくなるオフィスを目指しました
新社屋の建設、移転の経緯について教えてください。
- 竹澤
- 当社の本社はもともと田町駅直結のビルにありました。1973年に竣工した旧本社ビルには、当社はテナントとして入居しておりましたが、ビルの所有者によって解体する方針が決まっていました。山下PMCとプロジェクトがスタートしたのは2020年春ですが、その時点では、当社が期日までに旧本社ビルを退去しなければいけないことは決まっていたものの、移転先については、まだ何も決まっていませんでした。今の時代に、製菓会社が新たに本社ビルを所有する意義はあるのだろうか? という議論がまずありました。一般論として"持たざる経営"という考え方もありますし、ちょうどコロナ禍に突入して、オフィス不要論が広がり出した時期でもありました。
そんな状況で、新たに巨費を投じて本社ビルを建てるのであれば、社内はもちろん、ステークホルダーも納得できる施設でなければなりません。どんなビルであれば当社が所有するに資するのか? 長期にわたる展望が求められ、議論には相当な時間とエネルギーをかけることになりました。 - 笠原
- 初めに私たちはその状況を聞いて、新たに建設するかどうかも含め、"いったんフラットにして考えましょう"とご提案しました。
- 竹澤
- 現在この本社ビルが建つ場所には、東京支社が入居する自社ビルがありました。こちらも築50
年を超え、老朽化とオフィス機能の低下が進んでおり、建て替えが必要でした。つまり「本社機能の移転」という会社の経営計画面と「老朽化した旧支社ビルの有効活用」という不動産戦略面の両面から基本計画を考える必要がありました。 - 笠原
- 芝浦は都心の一等地ですから今後も大きな不動産のポテンシャルを持っています。どうしたらそれを最大限に有効活用できるのか。いくつものパターンが考えられました。本社ビルを持たずにテナントを借りてはどうか、旧支社ビルは売却するか、あるいは建て替えて不動産としての価値を高めた上で、本社機能は別のテナントビルに移したらどうか。それとも解体して本社ビルを新築するか、等々です。
- 竹澤
- 山下PMCさんには、旧支社ビルの劣化状況を調べて、改修した場合の費用、解体した場合の費用と、細かいシミュレーションをまず、出していただきました。
旧支社ビルを解体した跡地に新社屋を建設する決定を下したのは2021年でした。コロナ禍中で、オフィスニーズに対する懐疑的な意見が主流でしたが、落ち着けばオフィスに出勤する形態にまた戻るという確信もありました。
企業ビジョン「ウェルネスカンパニー」の体現を
新社屋には森永製菓の「2030ビジョン」が反映されているそうですね。
- 竹澤
- 当社は、2030年のありたい姿として、「2030ビジョン」を定めています。その主旨は「心の健康」「体の健康」「環境の健康」の3つの価値を顧客、従業員、社会に提供し続け、持続可能で豊かな社会の実現に貢献すること。そのために当社は「ウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」と宣言しています。
本社移転の議論の中では特に「環境の健康」が重要な柱でした。テナントビルではなく、自社ビルだからこそ提供できる価値として、環境共創型オフィスの実現を目指し、計画を策定していきました。 - 髙橋
- たとえば、エネルギー効率を最大限に高めた設計。雨水を利用して水資源の有効利用や、再エネ由来の電力プランを導入するなどして、実質的なCO2排出量ゼロを実現しています。また、エントランスの内外装の建材には創業者ゆかりの地、伊万里の木材を取り入れています。
- 小坂
- 伊万里の森から木材を伐採した代わりに、建物竣工後に森永製菓さんや設計・施工者の皆さんと伊万里市の森まで行って植林しました。施設づくりを通じて、持続可能な森づくりにも参加できたことは忘れられません。
- 竹澤
- ウェルネスカンパニーを体現するオフィスとして、従業員の健康への配慮も重要なポイントでした。体を動かせる「ウェルネスエリア」や屋上の「ウォーキングコース」などを設計に盛り込みました。新社屋は社員が来たくなるオフィスでなければなりません。
プロジェクトに関わったマネジャー
関連する用途
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オフィス
多くの業界が国内のみならずグローバルな視点をもって事業を推進されているなか、最近はカーボンニュートラルへの対応も考えていく必要に迫られています。自社オフィスにおいては、企業理念を体現するブランディングの実現や、イノベーションの創出を促す空間、web会議が根付いたことへの施設側の対応が求められています。また、テナントオフィスにおいては、採算性の向上や周辺競合施設との差別化を図るブランディングに加え、在宅勤務の増加によるオフィス面積減少の動きへの対応など、新たなオフィスビルの構築が求められています。
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