東京水産振興会 豊海センタービル
オーナー、テナント両者の納得を引き出す
本日は「豊海センタービル」のオーナーである東京水産振興会と、テナントである東京顕微鏡院からそれぞれお二方にお越しいただき、山下PMCの担当者とともにプロジェクトを振り返っていただきます。
話し手のご紹介
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井上 恒夫
一般財団法人 東京水産振興会
会長
■本プロジェクトでの役割
豊海センタービル
プロジェクトリーダー -
渥美 雅也
一般財団法人 東京水産振興会
専務理事
■本プロジェクトでの役割
豊海センタービル
施設管理部門マネジャー -
髙橋 利之
一般財団法人 東京顕微鏡院
副理事長
東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
豊海研究所
プロジェクトリーダー -
塩見 幸博
一般財団法人 東京顕微鏡院
食と環境の科学センター
統括所長
■本プロジェクトでの役割
施設管理部門マネジャー -
木下 雅幸
山下ピー・エム・コンサルタンツ
取締役 執行役員
事業推進本部長
■本プロジェクトでの役割
統括マネジャー -
松浦 裕
山下ピー・エム・コンサルタンツ
事業管理本部
LCM部 部長
■本プロジェクトでの役割
推進マネジャー
[~2010年1月]漁港区に、オフィスビルをつくりたい
豊海地区で、水産振興の核となる
中心的な建物をつくりたい
という強い想いがありました。(井上)
まずは東京水産振興会のお2人にお聞きしたいのですが、建物をつくられた経緯とは、どのような流れだったのでしょうか。
- 井上
- 豊海センタービルが完成する前は、当ビルの裏手にあった建物を事務所として使用していたのですが、10年ほど前に耐震診断を行ったところ、その性能に“イエローカード”が出てしまいました。築30年以上が経過したオフィスビルで、一部を和室中心の宿泊施設として活用していましたがその機能も既に不要となっており、2007年ごろ建て替えの話が持ち上がりました。当時は大手水産会社と共同出資して現在の2倍ほどの規模のビルを建てる計画だったのですが、なかなか計画がまとまらず、かなり難航しました。
- 渥美
- 当時の大型ビルの建設計画は建設会社の入札という段階まで進んだのですが、リーマンショック前の建設費高騰の影響などで頓挫してしまいました。
- 井上
- しかしこちらの建物の名前に「センター」という言葉を入れたことからもうかがえるかと思いますが、私どもにはこの地区の中心的な存在となる建物をつくりたいという強い想いがありました。そこで東京顕微鏡院さんを巻き込んでプロジェクトを再開しました。 ここは港湾法上漁港区になるので、土地や建物の利用についての制限がかかります。
- 渥美
- 新しいビルを建設するにはテナントにも制約があります。
進行中のプロジェクトを止め、
フォーメーションをすべて組みかえて、
基本計画からやり直すことにしました。(渥美)
その施設整備にあたり、コンストラクション・マネジメント(CM)という役割が必要だと感じたのは、なぜでしょうか。
- 井上
- まずテナントに迷惑をかけないよう、スケジュール通りに計画を進めることが最大の課題でした。入居予定の東京顕微鏡院さんは研究開発施設のため、一般的なオフィスビルのテナントとは異なる、かなり特殊な仕様が必要でした。当初は設計施工分離方式でプロジェクトを進めていましたが、テナントが予定通り2012年初頭に入居でき、かつ求める仕様に合う建物をつくるには、実施設計が終わるまで建設費や工期の見通しがつきにくい設計施工分離方式では難しいと感じはじめたのです。そこで2010年頭、ゼネコンの設計施工一括方式で仕切り直すことにしました。
- 渥美
- 進行中のプロジェクトを一旦止めて、フォーメーションをすべて組みかえて、基本計画からやり直したんですよね。
- 井上
- ただ設計施工一括方式での発注ははじめてで、私ども素人がゼネコンが示すものの品質やコスト、スケジュールが妥当かどうかをチェックするのは難しいと感じ、間にCM会社に入ってもらおうと、紹介を経て山下PMCさんに連絡したのです。
- 木下
- お話をいただいて最初に感じたのは、工程がかなりタイトだということです。スケジュールを前倒しするために、最初の打ち合わせに数通りのマスタースケジュール案を持っていきました。たとえば企画のみを山下PMCで行い発注をかける、基本設計まで私どもでやってから発注する……といった提案がありました。最終的には私どもが企画のみを1ヶ月半という短期間でまとめて設計施工一括方式を前提とした発注図書を整備し、すぐに発注をかけ、本体工事とともにテナント工事も並行で行い2011年末に同時竣工させる、という方針としました。
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豊海センタービル外観。海側の眺望を確保するためファサードの一部をカーテンウォールとして開いている。
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裏手から見た豊海センタービル。
関連する用途
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R&D/生産施設
市場の構図やニーズがめまぐるしい変貌を続けるなか、経営戦略のイノベーションとともに研究開発のあり方を見直す企業が増えています。従来の研究開発施設は、研究開発部門主体で計画・整備・運営されてきましたが、近年の研究開発は、企画段階から運営段階まで、経営戦略を色濃く反映する方向へと転換し始めています。その際にカギを握るのは、経営と直結する「事業(研究開発)戦略」の立案です。経営戦略というトップダウンの判断と、研究開発運営というボトムアップの提案を統合した事業戦略を立ち上げ、それに基づく研究開発施設の構築が求められています。
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オフィス
多くの業界が国内のみならずグローバルな視点をもって事業を推進されているなか、最近はカーボンニュートラルへの対応も考えていく必要に迫られています。自社オフィスにおいては、企業理念を体現するブランディングの実現や、イノベーションの創出を促す空間、web会議が根付いたことへの施設側の対応が求められています。また、テナントオフィスにおいては、採算性の向上や周辺競合施設との差別化を図るブランディングに加え、在宅勤務の増加によるオフィス面積減少の動きへの対応など、新たなオフィスビルの構築が求められています。
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