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東京水産振興会 豊海センタービル 後編

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[2010年4月~2012年5月]重要なのはオーナー、テナントの責任区分の整理

発注後に混乱を来すことがないよう、
A、B、C工事の工事区分や、オーナーとテナントの資産区分、
さらには運営をどう行うかなど、ルールを決めておきました。(木下)

塩見
山下PMCさんが入る以前の、設計施工分離方式で進めていた頃の案では、検査室の中に柱がありました。それを取ることができないかと設計事務所に相談したのですが、難しいと言われました。ところが今回は最初の提案のときから、見事に柱のない空間になっていましたね。
木下
柱があると検査機能が成り立たないとわかっていたので、そうした条件も含めて発注図書を構築しました。また、通常のビルの場合はオーナー側がA工事(本体工事)、テナント側がC工事(内装・設備工事)の費用を扱い、テナント入居に伴いオーナー側への依頼工事(B工事)をテナント費用負担で行うというように、すっぱりと分かれるものですが、本プロジェクトではA工事に対し、テナントの東京顕微鏡院さんの意向がかなり影響します。そこで発注後に混乱を来すことがないよう、A、B、C工事の工事区分や、オーナーとテナントの資産区分、さらには運営をどう行うかなど、ルールを事前に決めておきました。1ヶ月半で東京顕微鏡院さんのニーズを出してもらい、実験機器レイアウトを行い、区分をオーナーとテナント両者に確認し、調整するというのは非常にタイトなのですが、みなさんにご協力いただいたおかげで何とか対応できました。

オーナー、テナント、CMという立場の異なる三者で、どのように合意形成を進めて行かれたのでしょうか。工夫点を教えてください。

木下
私どもが立場の異なる2者のCM業務を行うにあたってチームとして気をつけたのは、守秘義務の徹底です。オーナーさんから聞いたことをテナントさんに、あるいは逆の立場でも、明確に「伝えてください」と言われたこと以外はとにかく何も話さないことを徹底しました。プロジェクトを進める上では「言った、言わない」の齟齬はトラブルの種になりやすく、入居後も長くつづくお互いの関係にも影響を及ぼしかねないので、非常に慎重に対応しました。

無柱で見通しが効く、東京顕微鏡院の理化学的試験検査室。

松浦
もう1つ気を配ったのが資産区分です。テナントビルですから将来的には、東京顕微鏡院さんがこちらから出て行く可能性はゼロではありません。出られた後にも他のテナントさんに貸せる状態にしておく必要があります。本体工事に振り分けるべきものと、東京顕微鏡院さんが負担されるものを明確に区分し、かつ物理的に後から切り離せるようにすることが重要でした。

  • A、B、C工事の工事区分。各工事区分ごとの資産、工事、運用の区分を明確化することで、利益相反する複数の発注者のプロジェクトをトラブルなくマネジメントした。

設備系統を破綻なくおさめることはもちろん、メンテナンスにも踏み込んで、ゼネコンと一緒に考えていきました。(松浦)

検査施設の複雑な仕様を、オフィスビルのテナントという枠組みの中で実現するために、どんなやりとりがあったのでしょうか。

塩見
技術面での相談に乗っていただけたのも、ありがたかったですね。冷凍冷蔵庫前の結露の問題についてはずいぶん相談に乗っていただき、ほぼ完璧な形でまとめていただきました。ダクトやガスの配管なども、かなり無理を聞いてもらって、床下を這わせたり、きれいにおさめてもらいました。
松浦
複雑な設備系統を破綻なくおさめることはもちろんですが、東京顕微鏡院さんに属する貸室の中でメンテナンスまでできるように、使い勝手の部分にも踏み込んでゼネコンと一緒に考えていきました。設計段階、施工段階を通じて、関係者で知恵を出しあって、よい建物になったと思います。
木下
今回はA、B、C工事を同時に発注したのですが、最も懸念したのは、A工事は妥当でもB、C工事は高額というパターンに陥ることでした。ゼネコンを決める権利はオーナーさん側にしかないので、本体工事だけが安くてテナントの内装工事は高額という業者を選定する可能性がありました。それではプロジェクトが上手くいかない可能性があるので、A、B、C工事すべて最安値という形でまとめられるように苦心しました。
髙橋
両者が納得できる形にまとめるのは、非常に難しかったのではないでしょうか。やり遂げられたことは、すばらしいと思います。
木下
今回は、われわれが誠実に対応すればオーナー側とテナント側のCM業務を両立できると自信を持つことができました。私どもの糧になったという意味でも、よいプロジェクトになりました。本当に、どうもありがとうございました。

関連する用途

  • R&D/生産施設

    市場の構図やニーズがめまぐるしい変貌を続けるなか、経営戦略のイノベーションとともに研究開発のあり方を見直す企業が増えています。従来の研究開発施設は、研究開発部門主体で計画・整備・運営されてきましたが、近年の研究開発は、企画段階から運営段階まで、経営戦略を色濃く反映する方向へと転換し始めています。その際にカギを握るのは、経営と直結する「事業(研究開発)戦略」の立案です。経営戦略というトップダウンの判断と、研究開発運営というボトムアップの提案を統合した事業戦略を立ち上げ、それに基づく研究開発施設の構築が求められています。

  • オフィス

    多くの業界が国内のみならずグローバルな視点をもって事業を推進されているなか、最近はカーボンニュートラルへの対応も考えていく必要に迫られています。自社オフィスにおいては、企業理念を体現するブランディングの実現や、イノベーションの創出を促す空間、web会議が根付いたことへの施設側の対応が求められています。また、テナントオフィスにおいては、採算性の向上や周辺競合施設との差別化を図るブランディングに加え、在宅勤務の増加によるオフィス面積減少の動きへの対応など、新たなオフィスビルの構築が求められています。

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