PROJECT 07

田辺三菱製薬 本社ビル・加島オフィス棟 プロジェクトストーリー(アフターストーリー)

アフターストーリー

歴史ある薬問屋街から、企業文化を発信する

地域と心を通わせる社屋に

西:
本格的なCM導入は初めてだったので、実は不安もあったのです。CMとゼネコンの関係が少しギスギスしてしまうなど、導入によってプロジェクトが上手くいかなくなる事例があることも聞いていたので。しかし山下グループのリーダーシップの取り方が上手だったので、おそらく水面下で苦労されたこともあったのではないかと思いますが、私どもは最後まで気持ちのよいやりとりができました。本社ビル、加島オフィスいずれも執務環境については、快適でコミュニケーションが取りやすいと、多くの者が満足していると思います。
山内:
新本社ビルについては、様々な場面で反響を感じることができています。最近では社員の家族を対象に職場参観を実施したり、営業部門が取引先の社長を招待して食堂スペースでパーティを催したりと大変好評でした。また、道修町の伝統的な祭りである神農祭や、大阪市主催の「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2015」でも史料館や新本社ビル内の一部を公開する予定です。さらに地元商店会からも地域で行なわれるイベントの際に公開空地に屋台を出したいとのオファーをいただき、利用いただくことができました。新本社ビル建築のプロジェクトのコンセプトである地域との関わりを大事にしたいという想いは、とてもよく伝わっているようで、うれしい悲鳴を上げながら対応に追われています。

田辺三菱製薬の社員の方が描いた神農祭における公開空地のイメージ。
田辺三菱製薬の社員の方が描いた神農祭における公開空地のイメージ。

竣工後の公開空地。まさに描いた風景が実現しようとしている。(写真提供 田辺三菱製薬)
竣工後の公開空地。まさに描いた風景が実現しようとしている。(写真提供 田辺三菱製薬)

田辺三菱製薬株式会社の西 伸照様(中央左)、山内 俊行様(中央右)
山下ピー・エム・コンサルタンツの鴨下 清(左)、野村 康典(右)

取材を振り返って

田辺三菱製薬が山下グループにCM業務を依頼したきっかけは、関係者の意見をまとめる難しさを直感したからだという。本社ビルはものを生まない施設で、自ずとデザインと呼ばれる要素の比重が重くならざるを得ない。建物のデザインを舵取りすることの難しさは、誰もが直感できるところだろう。客観的な評価が難しく、誰もが納得できる合意を取りにくい。設計を依頼をするにも抽象的にしすぎると期待から大きく逸れた案が出る恐れがあるが、細かく指定しすぎると設計者のモチベーションを下げかねない。

はたしてCMrはデザインをいかにコントロールするのか。鍵になったのは、ゼネコン選定プロポーザルの要項をまとめた「発注図書」と、事業主がゼネコンを選定するために用いた「評価書」という黒子的な2つの資料であった。意外なほど地味。だがそこにはデザインに対する高いリテラシーと読み手をおもんぱかる想像力を駆使した、繊細で濃密な仕事が込められていた。

建築のデザインをマネジメントするというのは、名作を生み出す編集者のような仕事なのだろう。読者に寄り添い、時にはプロットまで踏み込んだ案を出し、作家のモチベーションを発揮させるように依頼する。そして今回この仕事が効果を発揮したことは、本社ビルのできばえが見事に証明している。

平塚 桂(取材:2015年9月8日)

TEXT:平塚 桂
PHOTO:笹倉 洋平