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白河オリンパス 白河事業場本館棟(後編)

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複雑なレイアウトと工事をチームワークで実現

人の流れと、ものの流れを、縦方向の動きも考慮して整理しました(重冨)

ゼネコンからの提案書についての印象を教えてください。

八木沢
ものづくりや物流のプロセスにとっては効率がよいのは正方形のプランなのではないかと考えていたのですが、それに近い提案が出てきたので感激しました。
三河
我々が作成し発注図書に付けた参考図はおよそ60m×100mの長方形平面でした。それが、コンペで選定された清水建設が提案したプランは、70m×85mほどの正方形に近いものでした。高速道路からの見え方に対しても効果的なプロポーションですね。
重冨
我々の参考図では、トラックと倉庫の間で荷物の積卸しをするトラックバースは着荷と出荷の2つに分割されていました。ゼネコン4社中3社はこの考え方を踏襲しましたが、清水建設だけはトラックバースを南側1本にまとめた案を持ってきました。この地域では冬に北から季節風が吹くことを理解した上での理にかなった提案で、コスト面でも利点がありました。

実はこの方向性は私たちも検討はしていましたが、ものの出入りを一箇所に集約させると、おのずと施設内での移動距離が長くなってしまい、また内部での横連携も複雑になってしまうという課題があったため、候補から外していました。清水建設はその問題を、共用部を徹底的に整理することで解決していました。この案が高く評価されたのは、御社と私たちとであらかじめ深い検討を行っていたからこそだと感じています。
  • トラックバース。出着荷用の扉は6つあり、うち手前の4つが着荷用、奥の2つが出荷用

調整をする上で、難しい部分もあったのではないでしょうか?

八木沢
階層ごとのレイアウトの取りまとめなどは難しかったですね。相反する意見が出て来たときには、調整をしました。
重冨
人とものの流れの整理が難しかったですよね。既存社屋は平屋でしたが、縦方向の流れも考慮して整理しました。特に、仕様と性能が特殊なエリアの計画は、時間がない中でしたが、何度も足を運んで条件を修正しながら作り上げました。
三河
今回は物流拠点と製造拠点が共存するため、ものの流れやセキュリティ、防虫防鼠、衛生管理の考え方をどう計画に落としこむかが重要でした。オリンパス様が17ものワーキング・グループから社内の情報をうまく吸い上げて下さったおかげで、合理的な施設計画が実現できたのです。
  • 区画ごとの衛生管理が徹底されており、来訪者は衛生区分がなされたスペースに入る際に白衣を着け、スリッパに履き替え、靴底洗浄機にかける
  • 各フロアの随所にリフレッシュルームがあり、スタッフは休憩の後、歯磨きと手洗いをする
  • 搬入された部品はエレベーターで、効率よく各階に運ばれる

工場を稼働させながら工事をされたそうですが、その調整も難しそうですね。

重冨
土地の開発工事段階で岩盤が見つかり、当初はダイナマイトを使用しないと崩せないという話だったのですが、我々がタッグを組んだ土木系コンサルタントのオオバが提案した火薬を使わずに済む工法を活用し、白河事業場および近隣の工場への負担を減らすことができました。
三河
御社の中でリスクマネジメントの考え方が浸透しているためでしょうか、何かあってもみなさんポジティブに解決してくださいました。だからこそ設計者や施工者も、技術力を発揮しようと頑張りますし、課題があっても乗り越えられました。
木村
そうですね。大きなプロジェクトでは何をクリアしたらゲートをパスできるかというゲート管理のような仕組みをつくっておくことが重要で、我々、CM側、建設会社側の立場の異なる三者がそれぞれいかにゲートをくぐり抜けられるか、コミュニケーションを取ることができたのが大きかったです。こうしたことは製品開発を行う上でも必要な姿勢ですが、今回はその対象が建物だったということですね。
八木沢
困難なことがあっても乗り越える手段を提案いただいたので、コストも抑えられ、工程もしっかり守りながら実現できました。

御社のマネジメントの方法は、私たち製造業の商品開発プロセスと共通する、思考や手順を持っていました。(木村)

最後、ご感想をお聞かせください。

木村
建設プロセスと製品開発との共通点を体感できたことは、私自身にとっても勉強になりました。内視鏡の製造設計でもフロントローディングの考え方は重視されており、早い段階で設計、工程、ものづくりという一連の流れを考えて是正を加えて行くという方法を取ることで、後戻りのない製品開発と生産活動ができるのです。小さな内視鏡と大きな建物でものづくりの方法はどう違うのかということに興味があったのですが、ユーザリクワイヤメントをまとめ、検証しながらつくっていくという方法は同じでした。
八木沢
今回は私ども施設管理部門メンバーの育成の場としても、よい機会になりました。私は東日本大震災が起きたときに施設管理の責任者だったので痛感したのですが、施設管理という役割は普段は表に出ず、何か起きたときに重要となる役割です。本プロジェクトを通じて有事にも対応できる施設管理のシステムも構築したいと考えていました。できあがった図面をチェックしていくような一般的な施設づくりのやりとりではなく、どんな施設とし、いかに管理していくべきなのか、といった本質的なことを、プロジェクトの初期段階で私たちも一緒に入って考えられたのがよかったです。
安瀬
はじめてCMが入るプロジェクトに関わることになり、当初は不安もありましたが、御社の考えていることが理解できてからは、うまくいくと確信できました。考え方を勉強させていただくことができたので、今回の経験は他の施設リニューアルの際にも生かすことができると思います。
  • 左からオリンパス株式会社の安瀬勉様、八木沢敏郎様、木村伸二様、山下ピー・エム・コンサルタンツの重冨 博之、三河一喜

取材・文:平塚桂
写真:新良太
編集:たかぎみ江
(2016年6月23日取材)

プロジェクト概要


オリンパス白河事業場全体の施設再整備計画の一環として生産・研究開発棟を新築するプロジェクト。オリンパス株式会社が世界シェア75%を誇る医療用内視鏡の基幹部分の生産および研究開発、保守メンテナンス、東北地方の集中購買拠点という複合的な役割が求められた。

計画の要点は3つ。施設建設のために必要な土地の造成工事を着実に遂行すること。近隣にあった集中購買拠点を統合し、調達→生産→流通のプロセスの効率化を図ること。東日本大震災での被災を受けた、耐震性能とBCP対応を盛り込むことだった。

限られた期間のプロジェクトで、発注図書の作成に使えるのは2ヶ月。5万点もの精密部品の組み立てに則した部屋割りを整理する必要があった。そこに購買と発送という2方向の物流も絡む。役割や扱う部品によってセキュリティレベル、衛生レベルが各4段階に分かれ、さらに必要諸室の温度や湿度の設定も異なる。

こうした複雑な条件を整理するため、白河オリンパス社内17のワーキング・グループの意見を集約した。事業主の優れた情報集約力も手伝って、抜かりない発注図書を構築。設計・施工者からは想像を上回る効率のよい計画案と、RCSS工法の採用による工期短縮の案を引き出すことができた。

今回、設計・施工者選定プロポーザルの際に山下PMCは提案書の評価のみならず、即日課題による資質評価を行った。この複雑なプロジェクトを限られた期間で実現できるよう、技術力のみならず、課題に取り組む高い意識や連携力を求めたからだ。

工事段階で敷地に大きな岩盤が見つかるなど、しばしば現れた課題に対しては、そのたびに発注者、施工者、CMで連携しながら解決し、予定したコストと工期内でプロジェクトを遂行できた。また設計段階で仕様変更が求められたが、変更可能な部分と増額すべき部分をあらかじめ発注図書に明記していた。こうした情報管理は、現代のグローバル企業での意思決定に不可欠な透明性の担保にもつながった。

プロジェクト概要

事業主 オリンパス株式会社
建物用途 工場、物流倉庫
PM/CM業務期間 2013年5月〜2016年5月
PMr/CMr 山下PMC
所在地 福島県西白河郡西郷村
延床面積 約28,500m2
規模/構造 地下1階、地上6階/柱RC梁S造
基本・実施設計者、工事監理者 清水建設株式会社一級建築士事務所
工事施工者 清水建設株式会社
土木開発設計者 株式会社オオバ

■山下PMC担当者
三河一喜、林智彦、重冨博之、多羅尾務、鈴木一成、福田博

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関連する用途

  • R&D/生産施設

    市場の構図やニーズがめまぐるしい変貌を続けるなか、経営戦略のイノベーションとともに研究開発のあり方を見直す企業が増えています。従来の研究開発施設は、研究開発部門主体で計画・整備・運営されてきましたが、近年の研究開発は、企画段階から運営段階まで、経営戦略を色濃く反映する方向へと転換し始めています。その際にカギを握るのは、経営と直結する「事業(研究開発)戦略」の立案です。経営戦略というトップダウンの判断と、研究開発運営というボトムアップの提案を統合した事業戦略を立ち上げ、それに基づく研究開発施設の構築が求められています。

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