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白河オリンパス 白河事業場本館棟(中編)

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発注図書に、“すべて”を盛り込む

課題やニーズが発注図書にすべて組み込まれており、
「フロントローディング」の意義を感じました。(八木沢)

山下PMCが取りまとめた発注図書に対して、どのような印象を受けましたか?

八木沢
びっくりしました。私どもの課題やニーズがすべて組み込まれていました。御社のマネジメントプロセスの特徴「フロントローディング(※1)」というのは、まさにこれなのだなと思いました。最初が肝心で、ここまで初期段階でまとめておくことによって無理なくプロジェクトが進むのだろうと感じました。

※1 フロントローディング:初期工程に負荷をかけ、作業を前倒しして進めること

安瀬
CMなしで進めた他のプロジェクトと異なる点も、やはりこの発注図書の存在ですね。基礎的な仕様が早い段階でできていると手戻りがなくなるので、その後の打ち合わせの頻度や、検討の時間を少なくできたのではないでしょうか。
三河
今回の発注方式のポイントは、条件をしっかりと明示しながら施工者の提案に委ねる部分を用意することで、施工者の技術力を生かし、コストを下げ工期を短縮する点です。今回の発注図書には、これまでに培った発注要件設定のノウハウを盛り込みました。
重冨
具体的には、ゼネコンの技術力をフルに活用してもらうように“性能規定”をしています。性能規定とは、ある性能を満たすなら、AでやってもBでやってもCでやってもいいという発注要件の設定の方法です。コストや工期を左右するので、その表現の仕方やまとめ方が重要でした。また、単に性能を規定するだけではなく、工事の進め方などプロセスも組み込んでおき、ルールづくりをしておくことが、フロントローディングにつながります。
八木沢
細やかな条件を織り込んでひとつの発注図書へと緻密にまとめ上げていく重冨さんの情熱はすごかったですね。
発注図書の一部。各部屋の温湿度条件や必要な設備が示されている

建物のスペックだけではなく、決定プロセスまで発注図書に盛り込みました。(三河)

三河
建物のスペックだけではなく、チームの活動のスペックというのでしょうか、誰がどうやってプロジェクトを推進するのかをプログラム化しておくことも重視しました。オリンパス様はこのプロジェクトのためにレディースワーキング・グループ、環境安全ワーキング・グループといった合計17ものワーキング・グループを編成し、社内から情報をうまく集めて下さいました。そんなみなさんの思いが詰まった結晶になるように、これまでに何をどう決めてきて、今後は誰が何を決めないといけないのかということまで発注図書に盛り込んだのです。仕様だけを決めるのではなく、意思決定プロセスを記録として残し、協力体制をプログラムすることにも取り組みました。
木村
ユーザリクアイアメント、つまりユーザの要求条件は言語情報ですが、御社はそれを設計に使える情報へと翻訳する必要があるわけですよね。たとえば我々は、エントランスならば10人同時に入っても圧迫感がなく、光が入って明るい、といった要望を出します。そこにCMが介在することで、お客様がエントランスに入って考えを整理する時間なども検討事項の中に入ってきて、緊張感をやわらげるために入り口と受付との間に距離を置きましょう、といった仕様にまで変換されます。こうした条件は、我々だけでは出しきれません。踏み込んで考えていただけることがありがたいと感じました。
三河
ご要望をいかに翻訳し、設計メンバーに確実に伝えるということは意識しています。口頭で伝えていただいたものを書面に落とし込む方法には、我々ならではの工夫があります。
木村
発注図書の存在からは、進捗の透明性を担保するという効果も感じました。我々のニーズを建設会社の設計・施工プロセスの管理までつなげ、言語情報をスペック情報に置き換えた結果がこの1冊にまとまっています。設計条件や仕様から、業務の進捗やコスト管理も含めてあらゆるプロセスが一元化され、誰もがこれを参照すれば、施設が正しく抜け目なくできているのかを把握できるようになっていました。
    本館棟1階の、総務系部門の執務スペース 450席の食堂。交代制で昼食をとる。
    衛生管理上、大半の作業スペースには窓を設けられないため、食堂は明るく開放的な空間とし、リラックスできるよう配慮されている
    本館棟エントランスロビー。入り口から受付までほどよい距離があり、緊張感をやわらげる 新築の本館棟と既存の修理部門棟をつなぐ廊下。
    精密部品を運ぶために水平性を確保しながら新築棟と既存棟とつなぎ、車の動線を確保するために限られた柱で支えられている

発注条件を固め、いよいよ設計施工者を選定するという段階での、選定プロセスについての印象をお聞かせください。

八木沢
各社に、用意した事前資料に基づいて説明してもらうだけではなく、その場でコンペのようなことまでなされたので驚きました。
重冨
御社が人材やつながりを大事にされていることがわかってきたので、チームワークや熱意をはかる“資質評価”をしっかりとさせていただこうと、当社としても初の試みでしたが、即日課題を出しました。我々が出した課題に対してその場で各社がディスカッションして結論を出し、プレゼンテーションをするというものです。
三河
最終的には技術提案書の評価とコストの評価、そして即日課題に対する対応力=資質評価の3本立てで評価しました。資質評価では、チームの誰がリーダーシップを取り、計画のみならずコストや工期まで限られた時間で、どのようなチームワークで仕上げられるかを考えていただきました。
木村
選定される側にとっては厳しいですが、すばらしい試みですね。
重冨
提案書の美しく表現された紙面では見えてこない個人の課題解決力や、チーム全体の連携や雰囲気といった、これから何年も一緒にプロジェクトを共に過ごすパートナーとして外せない部分を御社に見ていただこうと、このような試みを行いました。

関連する用途

  • R&D/生産施設

    市場の構図やニーズがめまぐるしい変貌を続けるなか、経営戦略のイノベーションとともに研究開発のあり方を見直す企業が増えています。従来の研究開発施設は、研究開発部門主体で計画・整備・運営されてきましたが、近年の研究開発は、企画段階から運営段階まで、経営戦略を色濃く反映する方向へと転換し始めています。その際にカギを握るのは、経営と直結する「事業(研究開発)戦略」の立案です。経営戦略というトップダウンの判断と、研究開発運営というボトムアップの提案を統合した事業戦略を立ち上げ、それに基づく研究開発施設の構築が求められています。

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