朝日新聞社(1) 中之島フェスティバルタワー(後編)
課題は「神様が造ったホール」を、どのように継承するか
中之島フェスティバルタワー正面玄関を入ると、赤いカーペットが敷かれた大階段がある。
階段は、エントランスホワイエへと続く。
思い出と遜色ないホールを造りたかった
- 宍道
- 1958年に竣工した旧フェスティバルホールは、音響性が高く評価されており「神様が造ったホール」と表現するアーティストもいました。音響性の高さは世界的にも有名で、著名アーティストによるライブアルバムも多数録音されています。そのように、評価が高いホールをどのように継承するかというのも大きな問題でした。
- 田中
- 「どうして壊すんだ」と多くのアーティストから詰め寄られたこともありましたね。
- 宍道
- 多くの方からさまざまな意見をいただきました。建て替えのために4年間閉館している間に神格化され「以前の方がよかった」と言われることもあるでしょう。だからこそ、それ以上のものを造りたいと思いました。
- 田中
- アーティストや観客が抱いている「思い出」と比べてもいい音にしたい。音響面の「継承と進化」にも検討と議論を重ねました。
- 宍道
- 旧ホールは2階席まででしたが、現ホールは3階席になりました。これにより、天井の反射音が客席奥まで響き、初代と遜色ないとお客様からも好評です。
- 田中
- 当時、中之島建設室を設けていたのですが、「何としてでもゴールする」という気迫に満ちていました。
- 宍道
- ホールの竣工スケジュールを半年も前倒しできました。本来は、2013年春予定でしたが、2012年10月末になったことには驚きました。やはり、この中之島プロジェクトは、着工時のコストやスケジュールについて徹底的に精査していただいたことが大きかった。
- 田中
- 最も厳しい局面を一緒にできて、とてもよかったです。ここを固めていたから、工事期間中は円滑に進みました。
- 宍道
- それに、1棟目がうまくいったので、2棟目の中之島フェスティバルタワー・ウエストも竣工までスムーズに進みました。ウエストのときは、山下PMCには、「収益化をするためにどういう構成のビルにするべきか」を考える事業計画のフェーズを支援していただきました。
- 丸山
- どのような用途構成にするのがよいのかを丁寧に検討しました。ホテルのグレード感をどうするのかという課題もありました。そのビルも2017年に完成し、私たちも感無量です。ところで、中之島フェスティバルタワーは、新オフィスを造られて、竣工から数年経過した今、社内の評価はいかがでしょうか?
- 宍道
- 好評です。社員の多くが整理整頓を自主的にしています。新しい建物になり、社内の空気も一新し、働き方改革なども進んでいるようです。
- 田中
- 今、両ビルのそれぞれにテナントが入り、下から上まで全フロアとも活気があります。多くの人が日々、行き交っており、いいスタートを切れました。
- 丸山
- 働く人は2棟合わせて1万2000人と伺いました。テナントの皆様からの評価はいかがでしょう。
- 宍道
- 先日、賀詞交歓会をしたのですが、皆さん、入居してよかったとおっしゃっていただきました。自社ビルを処分して入居して下さった企業も多いのですが、安全・安心の構造、最新鋭の省エネ設備を擁する最先端のオフィスビルにご満足いただけていると感じています。2棟からなる中之島フェスティバルシティは文化の発信地として、時間の経過とともに価値が高まる、ブランド力の高い施設になったと確信しています。
プロジェクト概要
事業主 | 株式会社朝日新聞社 |
---|---|
所在地 | 大阪府大阪市 |
建物用途 | 本社オフィス、テナントオフィス、音楽ホール、商業施設 |
延床面積 | 約145,000m2 |
規模/構造 | 地下3階、地上39階/SRC造+PC造+S造 |
基本・実施設計者・工事監理者 | 株式会社日建設計 |
工事施工者 | 株式会社竹中工務店 |
PM/CM業務期間 | 2007年4月~2009年3月 |
PMr/CMr | 山下PMC |
■山下PMC担当者
村田 達志、土橋 太一、林 智彦、関根 雄二郎、松浦 裕、菅原 修、炭山 数文
関連する用途
-
まちづくり/複合施設
近年「まちづくり」や「複合開発」は一段と複雑化しています。事業主のビジョン・想い、立地、地域課題、マーケットの状況、都市計画の位置付けから納期、予算にいたるまで、諸条件によって大きくプロジェクトのあり方が異なります。通常の建設プロジェクトよりも長期にわたり、10年以上の時間を要することも少なくありません。関係者の数も膨大です。そこで重要となるのが、ブレないコンセプトと変化に柔軟に対応できるスキームの構築。創造力と実現力のある最適なプレイヤーが適切なタイミングで事業に参画することもプロジェクトの成否を左右します。
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放送・メディア
ネット配信等の隆盛やユーザー嗜好の細分化・多様化が進み、新聞・雑誌・テレビ等のトラディショナルメディアも変革の時を迎えています。これまでのメディア経営を主力としたビジネスモデルから脱却しようと新しいマネタイズを試みています。大都市で所有している不動産を活用したCREが活性化しているのはその一例です。
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オフィス
多くの業界が国内のみならずグローバルな視点をもって事業を推進されているなか、最近はカーボンニュートラルへの対応も考えていく必要に迫られています。自社オフィスにおいては、企業理念を体現するブランディングの実現や、イノベーションの創出を促す空間、web会議が根付いたことへの施設側の対応が求められています。また、テナントオフィスにおいては、採算性の向上や周辺競合施設との差別化を図るブランディングに加え、在宅勤務の増加によるオフィス面積減少の動きへの対応など、新たなオフィスビルの構築が求められています。
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