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アトレ恵比寿西館

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駅と街をつなぎ、地域に回遊性をもたらす商業施設

東京都心部に位置するJR恵比寿駅前に2016年4月開業した「アトレ恵比寿西館」は、カフェなどの飲食店や高級スーパーをはじめとする食料品店が充実した複合商業施設として、地元客の利用を軸に好調なスタートを切ったと伺っています。本日は事業主および運営者としてプロジェクトを推進したお2人に、山下PMCの担当者とともに振り返っていただきます。

アトレ恵比寿西館

話し手のご紹介

  • 日下 隆史

    日下 隆史

    株式会社アトリウム
    代表取締役社長
    ■本プロジェクトでの役割
    事業主の推進責任者

  • 永富 宣治

    永富 宣治

    株式会社アトレ
    開発企画部 課長
    ■本プロジェクトでの役割
    プロジェクトリーダー

  • 鴨下 清

    鴨下 清

    山下ピー・エム・コンサルタンツ
    事業創造推進本部
    第二部 部長
    ■本プロジェクトでの役割
    統括プロジェクトマネジャー

  • 山田 久美子

    山田 久美子

    山下ピー・エム・コンサルタンツ
    事業創造推進本部第三部
    プロジェクトマネジャー
    ■本プロジェクトでの役割
    プロジェクトマネジャー

駅とつなぎ、敷地条件を克服する

難しい敷地でしたが、駅と絡めて開発ができればうまくいくのではないかと考えました。(日下)

まずは、なぜアトレ恵比寿西館を計画されることになったのでしょうか。プロジェクトの経緯と、その目的や想いを教えてください。

日下
この土地は、2000年代後半に縁あって当社が取得したものでした。建物が3棟建っていましたが解体し、しばらく駐車場として運用していました。駅前でこれだけの広さの土地です。リーマンショック後という当時のマーケット環境では開発しようとしてもなかなか収支が合わなくて、一時期は土地のままの売却も考えていたのです。

しかし駅と絡めて開発ができればうまくいくのではないかと考えて、親会社のクレディセゾンと協議の上、開発を進めることにしました。そして事業提案を求めるプロポーザルを行った結果、アトレさんと一緒に進めていくことになりました。
永富
プロポーザルで当社が提案したのは、商業ビルを新築し、恵比寿駅および1997年に開業した「アトレ恵比寿本館」と連絡通路でつなぐ案です。また、附置義務駐車場については既存アトレ駐車場を隔地とすることで、敷地内を有効に活用することを提案しました。その計画面にご興味を持っていただき、選んでいただいたのだと思っています。
鴨下
連絡通路の提案には驚きました。行政との協議や構造的な解決が必要になりますから。
日下
提案をいただいた数社のうち、連絡通路をご提案下さったのはアトレさんのみで、事業の継続性や将来性という意味では内容が頭ひとつ抜けていました。

というのも敷地は駅前ですが、JR線と日比谷線との乗り換えという大きな人の流れから50mあまり南側に逸れています。したがってアクセスの動線が地上からのみでは、長い目で見ると事業が上手くいかないのではないかと感じていたのです。
鴨下
この場所の開発コンセプトが『La Patio(中庭)~「わたし」と「街」とをつなぐ場所~』でしたが、駅とのつながりだけではなく、街とのつながりも、とても大事にされていますよね。
永富
駅ビルの3階コンコースと新しい建物とを連絡通路でつないだのは、駅を介した人の流れの活性化に寄与したいという想いがあったからです。JR恵比寿駅を東西方向に横断する通路は、これまで駅のコンコースか、500mほど南にある恵比寿ガーデンプレイス側にしかありませんでした。新たに東西の動線を設けることは街の動線を多様化させることにつながり、街にとってもよいことだと考えました。
  • 通行者でにぎわう連絡通路
  • 連絡通路外観。右手が駅ビル、左手がアトレ恵比寿西館。「道路の上空を横断して設ける上空道路の占用については、通路の設置によって地上交通の緩和又は多数人の避難等相当の公共的利便に寄与する場合に限る」という規定を満たすものとして行政協議を行い、建築審査会の審査を経て設置されている

先々の課題を想定し、工事費の高騰局面にも対応する発注方式を提案いただきました(永富)

本プロジェクトにCMを導入しようと考えたのは、なぜでしょうか。

永富
私どもはアトリウムさんから開発を業務委託いただき、建設プロジェクトのマネジメントをコーディネートさせていただきました。CMを入れると計画や工事費の妥当性について第三者として評価してもらうことができ、アトリウムさんにとっても安心感が生まれるのではないかと採用を提案しました。
日下
私は実は、かつてゼネコンに出向していたことがあるのです。当時関わっていたプロジェクトでは、施主は1にコスト、2にコスト、3、4がなくて5に品質というくらいコスト重視で、品質を追求したいゼネコン側とのせめぎあいにジレンマを感じていました。

CM会社とご一緒するお仕事はこちらのプロジェクトが初めてでしたが、コストと品質のバランスを上手く取っていただける職能なのではないかと期待していました。
鴨下
我々がCMプロポーザルに参加させていただいた際には、敷地の特性を意識した計画を提案しました。地下に埋まっている地下躯体を上手く活用しながら工事を進めるなどの、技術面の提案に力を入れました。
  • 館内共用部。『La Patio(中庭)~「わたし」と「街」とをつなぐ場所~』というコンセプトのもと、家具や植栽などで街の一角を意識させる環境が生み出されている。環境デザインは江原俊裕氏
  • 小さなサイドテーブルのついたスツールは特注家具
永富
複数のCM会社の提案のうち山下PMCさんの評価が高かったのは特に、先々で起こりそうな課題を具体的に想定いただいた点と、工事費の高騰局面に対応する発注方式を複数提案いただき、それぞれどのような違いがあるのかをご説明いただいた点です。
鴨下
実施設計段階から既存地下躯体の解体と連動してプロジェクトを進めることが最大のポイントでした。早い段階で建設会社に入ってもらい、既存地下躯体をうまく利用しながら施工できれば、時間的にもコスト的にも有利になります。

当時の市況は工事費の高騰局面にありましたが、実施設計完了前の早い段階で施工者選定をすると、職人さんの手配も早めにできるので工事費の上ブレを回避しやすいと考えました。
  • アトレ恵比寿西館外観

プロジェクトに関わったマネジャー

関連する用途

  • まちづくり/複合施設

    近年「まちづくり」や「複合開発」は一段と複雑化しています。事業主のビジョン・想い、立地、地域課題、マーケットの状況、都市計画の位置付けから納期、予算にいたるまで、諸条件によって大きくプロジェクトのあり方が異なります。通常の建設プロジェクトよりも長期にわたり、10年以上の時間を要することも少なくありません。関係者の数も膨大です。そこで重要となるのが、ブレないコンセプトと変化に柔軟に対応できるスキームの構築。創造力と実現力のある最適なプレイヤーが適切なタイミングで事業に参画することもプロジェクトの成否を左右します。

  • 商業施設

    消費嗜好の多様化が加速するなかで、商業施設にはこれまで以上にコンセプトの斬新さや、他施設との差別化が求められています。Eコマースの成長が著しいこの時代には、実店舗ならではのコンセプトメイクも重要です。従来通りの店舗計画が必ずしも最適といえず、商空間はそのあり方自体が常に問い直されているともいえます。適切なマーケット分析・敷地分析をベースに、違いを生み出す施設コンセプトを立案し、適切なMDへと展開していくことの重要性は今後ますます高まっていくでしょう。

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