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アトレ恵比寿西館(後編)

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街に受け入れられる施設づくりの工夫

街とつなぐという施設コンセプトを隅々に浸透させていらっしゃいますね。(鴨下)

行政との協議などを経て、駅へとつなぐ立体的な動線を実現されました。実際に稼働させてからの効果のほどはいかがですか。

永富
アトレ恵比寿西館へのアクセスのうち45%が4階連絡通路から、55%が1階からです。1階から4階は朝8時から24時まで出入りできるようにして、街の動線として使っていただくようにしています。近くにお住まいの方には、連絡通路ができて便利になったと喜んでいただいています。
山田
45%が連絡通路からのアクセスとは驚きです。4階からアプローチされる方が多いと屋上や上層階への流れも増えますね。
永富
通常は上にあがるほど不動産としての床の価値は下がりますが、ここの場合は4階で一度盛り返すので、8階建のビルとしては、フロアごとの不動産価値に面白い傾向があるのではないかと思います。
  • 7階から8階へとつながる階段
  • エスカレーター周辺には江原俊裕氏によるテーマ『イギリスの公園にあるベンチ』を踏まえてデザインされたベンチが置かれている
鴨下
エスカレーター周辺にベンチや照明を置かれて街の通りの一角のような風景をつくられるなど、『La Patio(中庭)~「わたし」と「街」とをつなぐ場所~』という施設のコンセプトを隅々まで浸透させていらっしゃいますよね。開発のあり方は、出資される側から見てどのように映りましたか。
日下
親会社のクレディセゾンは元々小売の会社なので、幹部も小売業出身者が多いのです。彼らから見てもアトレさんはお任せできる会社だと感じられたようで、内部の動線やテナント選定についての細かい注文は一切ありませんでした。
永富
出資いただく事業主様からこれだけ任せていただき、賃借人が好きにやらせていただけるプロジェクトというのはなかなかありません。とはいえ言いたいことはおありだったのではないかと思いますが……。
日下
私と同様、クレディセゾンの役員も本件企画内容に大変興味を持っていたと思いますよ。私自身も関西出張の機会を利用して屋上に植えるためのオリーブの木を兵庫県まで見に行きましたからね。
永富
そら植物園の西畠清順さんと知り合ったのが既に工事もかなり進んだ段階で、ぎりぎりのタイミングで屋上の植栽をお願いできることになったんですよね。樹齢500年のオリーブの木を植えようという計画が出て、予算を管理されていたアトリウムの方に相談しました。植栽で増額になった工事費は他のエリアの分を抑えることで相殺し、最終的な工事予算は変更せずに進められました。

とはいえそもそも樹齢500年のオリーブの木というのは実際に見ていただかないとイメージが沸かないのではないかと考えて、スペインのアンダルシア地方からやってきたオリーブを日本の土と気候になじませるために移植されていた兵庫県川西市までお連れしました。
日下
このような象徴的で話題性が高いものがあれば、場所の価値向上につながると好ましく感じていました。
  • シンボルツリー、アンダルシア地方産の樹齢500年のオリーブ。足下にあるのは木彫りの恵比寿像

調査やマーケティングからご一緒し、開発方針・コンセプトを提案させていただきます。(山田)

最後、プロジェクトに関わられたご感想を一言ずつお願いいたします。

山田
街を変えうる大きなプロジェクトに最初から最後まで携わらせていただきました。さらに本日、事業主様、運営者様の想いをあらためてお聞きでき、事業価値を向上させるプロジェクトに携わることができたことを、とてもうれしく思っています。
鴨下
計画通りにお客さまがいらしているようで、プロポーザルの頃から描いていたベストな形を実現できてよかったです。最後にはお互いの力を尊重し合いながら意見を言える関係になり、そのような環境をつくるためにお力をいただいたアトリウムさん、アトレさんには心より感謝申し上げます。
永富
道路に橋をかける、短工期で実現させるなど、難しい仕事だったと思いますが、難しい仕事こそ山下PMCさんにお願いすべきだと思っています(笑)。難易度の高いプロジェクトを一緒に乗り越える関係がよいのではないかと思っています。
日下
メンバーに恵まれ、結果としてよいアセットができてうれしい限りです。当社はマンション事業なども手がけていて、商品企画部には建築士資格を持つ者もいますが、CMrに入っていただくことで時間効率があがりますね。

これから商品企画部の仕事をマーケティングに寄せていきたいと考えているのですが、現状では技術的な仕事をこなすことに時間を取られていて余裕がありません。CMのような立場の方に入ってもらえれば時間ができるので、会社の軸足を変えていくためにも有効だと思います。今後とも機会があれば、ご一緒できればと思っています。
永富
日下社長がおっしゃっているのですから、今後そういう機会があるのだろうと思いますよ(笑)。つくりたいものをつくることに事業を寄せていくべきというご意見は、おっしゃる通りだと思います。付加価値の高いものを生み出すことは、不動産として長く存在させるためにも有効で、事業者側の願望でもありますから。
山田
当社では、さまざまな開発案件で事業性検証や調査・企画の段階から事業主様とご一緒し、方針からご提案させていただくということもしています。
日下
CMrは早い段階からご一緒した方が間違いなくいいですよね。事業を行う上では社員が主体的に考えることが大切だと思っているのですが、社員が考えた計画が上手くいくかどうか、事業性の検証などをサポートいただけるとありがたいです。
山田
まさに私どもは事業主様の想いをどう形にするのかということを考えていますので、そのサポート役としてパートナーになれればと思います。
  • 左から山下PMCの鴨下清、株式会社アトレの永富宣治様、株式会社アトリウムの日下隆史様、山下PMCの山田久美子

プロジェクト概要


「多様な主体が関わるプロジェクトを円滑に進める」

アトレ恵比寿西館は2016年4月、JR恵比寿駅の西側に開業した商業施設。近隣居住者をターゲットに、飲食店や食料品店を軸とする日常的な利用を踏まえた25店舗が地上8階地下1階の9フロアに入居する。

施設の最大の特徴は、4階を地上18メートルの連絡通路で恵比寿駅3階コンコースとつないでいる点だ。これにより恵比寿駅および既存のアトレ恵比寿本館との連続性を生み出し、さらに駅東西を横断する動線へとつながり、街の回遊性を向上させている。

敷地および施設を所有するのは、クレディセゾンの連結子会社アトリウム。同社が所有する土地の利活用を検討するために、複数事業者によるプロポーザルを開催したことがプロジェクトのはじまりだった。新規の施設を既存駅舎と連絡通路で結び、既存アトレ駐車場を隔地駐車場として利用するという案を提案したアトレが、運営および開発コンサルティング業務を受託。アトレの主導により建設プロジェクトが進められた。

山下PMCは基本設計開始のタイミングで参画した。CMr選定のためのプロポーザルでは、実施設計段階から施工者が参画するスキームを提案。早期から参画した施工者が既存地下躯体の解体と連動して施工計画や構造を検討することで、既存地下躯体の一部を地下躯体掘削時および本体工事の山留壁と併用し工期短縮とコスト縮減を図るなどの具体的な提案を盛り込み、採用された。山下PMCが提案した地下躯体活用案は、施工を担当した大成建設によってスムーズに実施された。

市況が工事費高騰局面にある中、山下PMCは建設市場を観測しプロジェクト全体を通して品質・コスト・工期をマネジメント。適切な工事費におさまるように増減を管理した。

また事業主、運営者、設計者、施工者など多岐にわたる関係者が集まる会議を主導。適切なコストで必要な機能を実現しながら、デザイナーによる植栽が施された屋上の計画など、人を引き込むにぎわいの演出も後押しした。事業価値向上を重視しながら、関係者それぞれの利益をバランスよく最大化し、プロジェクトが円滑に進むようにバックアップ。事業の成功へと結びつけた。

プロジェクト概要

事業主 株式会社アトリウム
運営者 株式会社アトレ
建物用途 商業施設
PM/CM業務期間 2013年9月〜2016年3月
PMr/CMr 山下PMC
所在地 東京都渋谷区
延床面積 約9,700m2
規模/構造 地下1階、地上8階/S造一部RC造
基本・実施設計者・内装監理者・工事監理者 株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所
外装デザイン監修 株式会社プランテック総合計画事務所
環境デザイン 江原俊裕
植栽プロデュース 西畠清順(そら植物園)
工事施工者 大成建設株式会社

■山下PMC担当者
鴨下清、山田久美子、関根雄二郎、舟津四郎、炭山数文

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・記載されている会社名、商品名は、各社の商標、または登録商標です。なお、本文中では™、®マークは基本的に明記していません。

関連する用途

  • まちづくり/複合施設

    近年「まちづくり」や「複合開発」は一段と複雑化しています。事業主のビジョン・想い、立地、地域課題、マーケットの状況、都市計画の位置付けから納期、予算にいたるまで、諸条件によって大きくプロジェクトのあり方が異なります。通常の建設プロジェクトよりも長期にわたり、10年以上の時間を要することも少なくありません。関係者の数も膨大です。そこで重要となるのが、ブレないコンセプトと変化に柔軟に対応できるスキームの構築。創造力と実現力のある最適なプレイヤーが適切なタイミングで事業に参画することもプロジェクトの成否を左右します。

  • 商業施設

    消費嗜好の多様化が加速するなかで、商業施設にはこれまで以上にコンセプトの斬新さや、他施設との差別化が求められています。Eコマースの成長が著しいこの時代には、実店舗ならではのコンセプトメイクも重要です。従来通りの店舗計画が必ずしも最適といえず、商空間はそのあり方自体が常に問い直されているともいえます。適切なマーケット分析・敷地分析をベースに、違いを生み出す施設コンセプトを立案し、適切なMDへと展開していくことの重要性は今後ますます高まっていくでしょう。

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