PROJECT 10

アトレ恵比寿西館(中編)

PROJECT 10

駅と街をつなぎ、地域に回遊性をもたらす商業施設

技術面をCMにまかせ、事業に専念する

プロジェクトはキャスティングで8割決まると思っています。(永富)

本プロジェクトにはプランテック総合計画事務所、ジェイアール東日本建築設計事務所、大成建設といった多様な会社が関わっています。どのように選定されたのか、意図を教えてください。

永富:
私は、プロジェクトはキャスティングで8割が決まると思っています。つまり役割分担がしっかりしていて、それぞれの役割を果たせる人が機能すれば自然と上手くいくという考え方です。
たとえば設計をジェイアール東日本建築設計事務所にお願いしたのは、駅の構造をよく把握していると思ったからです。その中でも多様なキャラクターの設計者がいますので、担当として今回のプロジェクトに必要な得意分野を持つ設計者にお願いしました。
鴨下:
永富さんは現在、株式会社アトレに出向という形で来ていらっしゃいますが、それ以前にJR東日本に在籍されていた頃から多様なCM会社とお付き合いされているので、われわれのような職能の人間の使い方を理解されていると感じています。
永富:
“使う”というと偉そうな立場みたいに聞こえますが(笑)そうではなくて私ども発注者に足りない能力があるという自覚があるので、そこを補完いただきたいという気持ちでお願いしています。
このプロジェクトの場合は、CMに頼りたい要素が4つほどありました。まずマンパワー不足を埋める量的補完。知識やスキルをサポートしていただく質的な補完。建設市場を観測しコストをコントロールする役割。そしてプロジェクトマネジメントでした。

  • 1階エントランス。ガラスファサードのカフェを設け、街との距離を縮めている

山下PMCは、どのような特徴があるCM会社だと感じていますか?

永富:
建設プロジェクトというものは産声をあげてから工事完了までフェーズが移り変わり、そのたびにCMに求められる役割も変わります。たとえば企画段階の参謀役、工事の発注先が妥当かどうかの評価、各プロジェクトメンバーの役割が果たされているかどうかの確認とメンテナンス……。
その中で山下PMCさんはあらゆる領域をカバーする多様な人材を抱えており、プロジェクト全体をマネジメントできる会社だと捉えています。
日下:
今回CMをしていただいた中ではコストと品質のバランスを適正化いただけたことが特にありがたかったです。
CMについての解説書や業界誌などには極論するとゼネコンが施主を騙すといいますか、情報の非対称性を利用して工事費を多めに見積もることがあるから、それを防ぐために客観的な立場でチェックしてくれるCMを入れた方がよい、という主旨のことが書いてあります。
しかし山下PMCさんは各社の進捗状況を見ながら、コストコントロールに留まらない総合的なマネジメントをされていたので、その偏った視点の解説を鵜呑みにすべきではないと改めて感じました。現在のように工事費やマーケットが不安定な時期には、とりわけ有効な職能なのではないでしょうか。

  • 8階屋上庭園「アトレ空中花園」。プラントハンターの西畠清順氏(そら植物園)が植栽プロデュース

会社を象徴するような施設ができたことがありがたいです。(日下)

技術面におけるプロジェクトの進行役をCMにまかせることで、事業主さんや運営者さんとしての本分に注力できたというところもおありだったのではないでしょうか。

永富:
山下PMCさんに会議の切り盛りをお願いしましたが、それは不足しているスキルとマンパワーを埋めていただくためでした。会議をコーディネートいただいている間に私は西口連絡通路の行政協議をしたり、個性の強いテナントさんとの折衝に時間を充てたり、屋上の植栽を相談するためにそら植物園の西畠清順さんにアプローチしたり、事業の成否を左右する多様な業務に時間を使うことができました。
日下:
山下PMCさんは会議の進行役なども担い、コストチェックにとどまらない総合的なマネジメントをされていました。当社にとって本件は大型のプロジェクトであったため、私も会議には定期的に参加していましたが、とてもスムーズに進めていただいていると感じました。私はゼネコン時代に互いの責任を追求し合うような殺伐とした会議も経験しましたが、それとは違った前向きな雰囲気でいつも空気がよかったですね。

共用部の階段や壁には、意匠性豊かなタイルが貼り巡らされている
共用部の階段や壁には、意匠性豊かなタイルが貼り巡らされている

共用部の階段や壁には、意匠性豊かなタイルが貼り巡らされている


2016年4月に開業され、客足は非常に順調だとお聞きしています。手応えはいかがでしょうか。

永富:
恵比寿周辺に暮らす方々をターゲットとし、そこでの生活をより豊かに、より楽しむことができる場所を意図して開発しましたが、現在のところイメージ通りのお客さまに来ていただいています。1997年から恵比寿を拠点にアトレ本館を運営させていただいているので、街にいらっしゃる方々のキャラクターを理解していたことが大きかったのだと思います。
日下:
私自身の立場としては、長い間方針が定まらなかった土地を開発へと舵を切り、アトレさんと組めたところで目的の8、9割は達成できたというところはありますね。アトリウムとしては、会社を象徴するような施設がずっと欲しかったのですが、そういう施設になったということがありがたいです。

アトレ恵比寿西館