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コンストラクションマネジメント(CM)はどこからきたのか?

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建築やCMに関わる“そもそも”

建築の生産プロセスは長い年月をかけて各国の独自の文化や商慣習と呼応した形で進化してきた。その結果として、日本では総合請負業者であるゼネコン、設備の専門工事業者であるサブコンを始め、各種の専門工事業者などが施工サイドのプレイヤーとして発展してきた。

設計者としては、組織設計事務所やアトリエ系設計事務所、またゼネコン設計部といったプレイヤーが存在する。そのような中で、最近ではコンストラクションマネジメントを行うCM会社などが新たなプレイヤーとして参画してきた。

こうした多くのプレイヤーがそもそもどういう経緯で? いつからいるのか? といったことは当事者でさえも実は案外知らない。またそもそもなぜ設計者と施工者は別の主体なのか? もしくはなぜ日本のゼネコンは設計と施工の両方の機能を持っているのか? なぜ日本では重層下請構造が根付いているのか? 生産のしくみについても、改めて聞かれると業界関係者であっても答えに詰まる場合が多い。

そこで、建築やCMに関わる“そもそも論”について再確認することで、斜陽産業と言われる、日本の建築業界の今後の進むべき道について考えていきたい。

CMというのはどこからきたのか?

CMという言葉はここ10年ぐらいの間(2010年執筆時点)で認知度は高まっているが、「いまひとつ何をしてくれるのか分からない」という声が聞こえてくる。

建築の本でも最終章「今後の建設業界」や「最近の動向」で、「CM方式という新しい発注手法が芽生え始めている」等、申し訳程度の言及が多く、「何かしら期待は持てるが具体的な内容や効果は未知数」が現時点でのCMに対する一般的な認識であるように思われる。

当社は1997年にPM(プロジェクトマネジメント)/CM(コンストラクションマネジメント)の専門会社として設立。

2001年には日本CM協会が設立され、2004年にCMガイドブック出版、2005年からCM資格制度が設立された。こうしたなかで、CMは着実に普及してきている状況にある。

では、そもそもCMというのはどういう経緯で発生してきたのだろうか?

1.CMの歴史

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CMの歴史は1940年代のアメリカに遡る。産業革命に伴う技術革新は製造業などにマネジメント技術の進化をもたらした。
同時に建設産業においてもマネジメント技術は活用され、石油メジャーがプラント建設の管理手法としてマネジメント方式を用いたのがCM方式の始まりと言われている。

また2度の世界大戦における軍事産業の需要はCPM(※1)などのスケジュール管理手法を生み出した。1960年代に入ると、NASAのアポロ計画を代表とする軍事・宇宙産業は、VE(※2)・WBS(※3)などの新たな管理手法を創造し、現在のプロジェクト・マネジメント(PM)の基礎が確立された。

これらの手法はいずれも現在の建築PM技術として活用されている。PMI(Project Managemet Institute:米国プロジェクト・マネジメント協会)設立もこの時期である。

一般にこの時期のアメリカでプロジェクトが大規模化、複雑化するのに伴い、工期遅延や予算超過が多発したため、それを防止すべく、CM方式が広く採用されるようになったと言われている。

1970年代には公共建設プロジェクトでCM方式が普及し、大学教育においてもCM専門課程が相継いで設立された。

その後、1980年代にはPMIよりPMBOK(※4)が発行され、軍事・宇宙産業で発展したマネジメント技術がさまざまな分野に普及した。

2.日本におけるCMの歴史

一方で、日本におけるCMの検討開始は、1970年代に遡る。

当時、建設省や業界団体の多くは調査団をアメリカに派遣し、新たな管理方式であるCM方式に着目した。

しかしながら、CM方式は日本の契約慣行、商習慣にはなじみにくいという考えから国内において具体的にCMに取り組むところは1980年代の後期まで見られなかった。

バブル期に差しかかろうとする頃、特に大手のゼネコンでは急激にプロジェクトが大規模・複雑化し、さらに多くの建設需要に効率的に対応するために、従来型の施工体制を見直すようになり、CM方式に再度着目するようになった。

しかしながら、90年代初めのバブル崩壊により、建設投資は急速に冷え込み、CMに対する関心が再び揺らぐこととなった。

また、1993年の日米建設協議の改定案において、アメリカ政府は先進国においてCM方式を取り入れていないことによる参入障壁を指摘することにより、CM制度の導入ならびにCM方式の試験プロジェクトの実施を、強く日本政府に迫り、制裁措置に言及するようになった。

一方で、WTOの国際調達基準への準拠の一環として、1994年1月に日本政府は「公共工事の入札・契約手続の改善に関する行動計画」を発表し、発注の適正化を図るとともに、国際調達基準に基づいた調達を行なうことを掲げ、アメリカ政府の制裁措置を逃れた経緯がある。

90年代後半になると、設計事務所やゼネコンの中で組織的なCMの取り組みを行う企業が現れるようになり、民間においてCM方式が徐々に普及し始めた。

公共においても2000年以降、CM方式の導入検討は継続されており、各自治体でのCMモデルプロジェクトへの取り組みも始まっている。(引用:CMガイドブック)

そもそもCMとは何なのか?

歴史を見てみるとその発生経緯は概ね分かるが、では CMとはいったい何なのか?いったいなぜ 1970年代には日本にCMが普及せず、最近になって普及してきたのか?

2002年に国土交通省から出された「CM方式活用ガイドライン」ではCM方式を次のように説明している。

「CM方式とは、米国で多く用いられている建設生産・管理システムの一つであり、コンストラクション・マネジャーが技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行うものである」

当初 CM方式の効果としては大きくはこうした「管理的な機能」、それからアメリカ政府が日本政府にCM方式の実施を迫ってきたように「透明性・公正性」といった効果が想定されていたと思われる。

1970年代の時点では「管理的な機能」は設計者やゼネコンで満たされていると考えられており、「透明性・公正性」といった効果も日本の中ではそれほど求められていなかった、ということが普及しなかった要因であろう。

その後、CSRに対する意識の高まりや不動産証券化に伴う建設プロジェクトに対する透明性への要求、姉歯事件やゼネコンの官製談合事件などによる設計者・施工者に対する不信感、といった社会の流れの変化が CMの普及を促進してきた。

ただ、最近はCM方式の普及に伴い、CMに求められる領域が拡大する傾向にある。透明性や公正性の向上はもちろんのこと、品質・コスト・スケジュールの管理能力についてももはや当然備えておくべき能力であり、それらに加えてさらに「プロジェクトを強力に推進するリーダーシップ能力」「ファイナンスも含めて事業を組み立てていける企画力」「事業のコンセプトを発注者の視点で作り上げて行く創造型の提案力」「建築の周辺分野も含めた総合的なコンサルティング能力」等付加的な能力(付加価値)が強く求められるようになってきている。

CMの今後は?

こうした付加的な業務や能力は明らかに当初のCMの概念からは飛躍した領域ではあるが、デベロッパーや設計者・施工者がそれぞれで行ってきた、あるいは担い手のいなかったこうした領域をまとめて解決できる存在を求めるクライアントが現れ始めていることは確かである。

建築の分野に限ったことではないが、昨今は何をどう作るかといったハード的な要素だけでなく、どう活用するか、どう運用し収益をあげていくか、といったソフト的な要素の重要性が増してきている。

これまで設計や施工の業務や責任といったハード的な機能がゼネコンに一元化されてきたように、これからは知識やサービスといったソフト的な機能を一元化できる役割がCM会社に対して求められるようになっていくのかもしれない。

[注釈]
※1 CPM(Critical Path Method):プロジェクトの作業のうち、遅れると全体工程が遅延する作業経路(クリティカルパス)を明らかにし、限界工程を管理していく手法。
※2 VE(Value Engineering、バリュー・エンジニアリング):製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、システム化された手順により「価値」の向上を図る手法。
※3 WBS(Work Breakdown Structure):プロジェクト全体を細かい構成要素に分解し、計画を立てる手法。
※4 PMBOK(Project Management Body of Knowledge):プロジェクトマネジメント知識体系ガイド。米国プロジェクト・マネジメント協会が提唱する、PM のための標準的な知識体系。

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