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The Report #16 がんばろう!建築業界

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工事費のUP、担い手不足、公共インフラ施設の老朽化、建設IT化など建築業界が抱える山積みの課題について、長きにわたり2代目アナリストKとして建設市況についてレポートしてきた山下PMCプロジェクト統括本部 本部長 鴨下 清が“答えのない想い”を述べます。

異常ともいえる工事費の高騰

昨今の建築業界についてこの課題を触れない訳にはいきません。今まで味わったことのない工事費の高騰が近年続いています。約30年間、建築業界に身を置いている私としても、また諸先輩方に伺ってもこれほどの高騰は初めての経験となります。

その要因としては、一例として以下があげられます。

(1) 建築業界全体の担い手不足 → 慢性的な労働者不足
(2) 労働時間の適正化にむけた働き方改革による工期の延伸 → 過度の残業の禁止
(3) 首都圏を中心とした大規模開発 → 現場監督・職人の不足
(4) 半導体など特定用途への膨大な建設投資 → 現場監督・職人の不足
(5) 事業継続に向け必要不可欠な投資 → 高度成長期に建設した施設の老朽化対策

このような要因の対応・対策のため建築業界全体がひっ迫している状況です。もちろんプロジェクトの建設地や用途、難易度、施工会社の受嘱状況などによりひっ迫状況は異なりますが、10年前に比べ2倍から3倍の工事費になっているプロジェクトも現れています。
人口の自然減や上記の要因などによって、現役の現場監督・職人の存在価値は高まっており、その方々に対して相応しい給料が支払われているのだとは思いますが、我々、建築業界の人件費とは比較にならないほど工事費のアップ率は激しい状況です。

もちろん資機材価格や運搬費なども高騰しており、様々な要因が複雑に絡み合っていることも理解していますが、「はたして、現場で頑張っている現場監督・職人の手元にしっかりと届いているのか?」気になるところです。
お客さまからお支払いいただいたお金が、プロジェクトに携わった会社・社員に適正に届いているのか確認する術を検討する必要があるかもしれませんね。それが見える化されることでお客さまの理解度が上がると思います。

建築費指数動向 事務所S造(東京)

出典:建築物価調査会 建築費指数
※2015年平均指数を100とする
●前年同月比 建築:+3.9% 設備:+6.7% ●直近4カ月比(2024/12、2024/8 ) 建築:+1.2% 設備:+2.3% ●設備コストは昨年度より建築コストを上回る急騰傾向が見受けられる。春先の設備機器類の価格改定による値上げラッシュが工事費に反映され始めたことによる影響もその要因と推察される

また現状の課題として、建築業界がお客さまに対して、高騰する工事費の理由を完全には説明できていないことがあげられると思います。
第三者的資料(公的な資料)だけでは説明し尽くせないほどのアップ率を提示しているプロジェクトが増加しており、「なぜこれほどまでに工事費がアップしているのか?」というお客さまからの問い掛けに対して、我々も説明を努力しているつもりですが、説明資料が儘ならない状況ではお客さまも工事費アップを受け入れることは難しくなります。
お客さまの理解度を上げるためには、たとえば、ある案件の10年前の精算見積を基に現在の価格を入れ込んだ見積をプロトタイプとして作成し、「何が高騰している要因なのか」をお客さまに見える化する資料を提示するなど、受け入れていただけるかどうかはともかく、アップ率の根拠を説明する資料・手法を建築業界で考えていく必要があると思います。

工事費高騰はお客さまの日本離れを生む?

前述の工事費の高騰が続いた場合、お客さまの事業によっては日本で新たに施設を建設する意味・価値を見出せず、海外への建設投資を検討するのは必然のことです。お客さまのビジネスの事業収支が海外で成り立てば日本に固執する理由は低くなります。
ビジネスを生み出すための施設を必要とするお客さまあっての建築業界ですので、海外を視野に入れて事業を考え始めるお客さまに寄り添う我々も、どの様な支援をさせて頂くことができるのか検討していく必要がありそうです。

このまま工事費の高騰が続いてしまうと、日本から海外に人も産業も流出してしまう危険がある

がんばろう!建築業界

建築業界では慢性的な労働者不足・高齢化が問題になっていますが、解決の一手を打てない状況が続いています。労働者不足は建築業界だけの問題ではないと思いますが、建築以外の業界との「人」の取り合いに勝てていないことが労働者不足の一因であることは言うまでもありません。他国の方に頼るという施策もありますが、先ずは日本国内で対策を練る必要があると思います。
便利で有益な未来に寄与し成長し続けるIT業界、世界が認めた日本の観光資源を活かし発展させる観光業界、健康増進・街づくりの起爆剤の一つとして成長するスポーツ業界、海外の賃金をベースに高い待遇を用意できる外資系企業など、様々な分野の業界が台頭しています。そのため、若者を中心とした多くの学生・社会人が他業界に魅力を感じ、就職活動をしています。
当たり前の話ですが、建築業界の担い手を増やすには、他の業界に勝る魅力を世の中に示していくことが重要です。建築業界は、中学生・高校生が将来の職業として選択するに値する業界なのだということを、業界全体でアピールすることが第一歩だと思います。最近目にすることが増えた建設会社さまのテレビCMもその一つですが、ものづくりの楽しさをもっと周知していくことが有効と考えます。

Osaka Metro主催の「未来創造たまご塾」は、新しい時代を生きる若者に必要とされる「起業家精神」を楽しく分かりやすく体感することができる大人気のワークショップ。関西エリアでは、大阪市内の小学生4年生から6年生を対象にしたワークショップが2024年3月に初めて開催され、12月に第2回が開催された。山下PMCでは、初回に続き協賛するとともに、当日のワークショップにも協力。
小学生が参加企業の社員や大学生と一緒に経済を回すゲームに取り組み、経済の仕組みを学ぶとともに、参加企業のブースをめぐった。当社のブースでも、コンストラクションマネジメント、建設業を少しはイメージいただけたのではないだろうか?

 

リアルに街に建築を出現させる楽しさ、利用し続ける人たちがいる嬉しさ、暮らしを支える・営みの場となる建築に携われる達成感など、これらを得られる建築業界の仕事というのは、自身の満足感に加え、社会の発展に必要な仕事であり、社会に貢献できる仕事であると、業界が一体となって世の中に伝えていくことで、少しずつ建築業界を支えてくれる若者が増えてくれるのではないかと思っています。

建築業界の皆さま、頑張って業界を盛り上げていきましょう!

山下PMC
プロジェクト統括本部 本部長
鴨下 清

次回の「The Report」は、山下PMC 柳原 剛がお届けします。

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