PROJECT 02

矢崎総業/矢崎部品 
ものづくりセンター(中編)

プロジェクト座談〈中編〉

「ものづくり」から「営みづくり」へ

[2011年1月~2011年3月]

15ヶ月という短工期を可能にした、性能発注方式

短工期でプロジェクトを確実に実行するために、ゼネコンの
設計・施工一括での性能発注方式を提案させていただきました。(木下)

実際にCM方式を導入されてみて、手応えはいかがでしたか。それまでに経験された施設づくりのプロセスと比べての違いや、よいと感じた点を教えてください。

藤村:
改めてよかったと感じるのは、性能発注方式ですね。この方式を提案していただいたおかげで、我々が望むような建設コストと短工期での竣工が実現できました。

木下:
スケジュールの厳しさは、当初からこちらに伝わってきていました。プロポーザル前にはじめて牧之原の事業所を案内いただいたときに藤村さんから「私どもの考えている工期で終わりそうにないなら、できないと今の時点で言ってくださいね」と何度も言われました。発注者としてプロジェクトをまとめる立場の方々が大きなプレッシャーを感じられているということが、ひしひしと伝わってきました。だからこそ、この工期でプロジェクトを確実に実行しないといけないと強く感じた上でプロポーザルに臨み、ゼネコンの設計・施工一括での性能発注方式を提案させていただきました。
藤村:
プロポーザルの段階で、すでに性能発注方式を前提とした濃密なスキームを構築いただいていました。その時点では、私どもは性能発注方式などは知りません。設計施工者に提案を依頼する発注図書をつくる期間も、1~2週間もあれば十分だと思っていたくらいですから。しかし6週間、計6回の打ち合わせで山下PMCが作成してくれた基本計画書はとても緻密で、練りに練られた要項書などが一体的に組み合わされた発注図書となっていました。おかげでゼネコン各社からも、同じ土俵に乗った、裏付けのしっかりした素晴らしい提案が出てきたのです。
松浦:
性能発注方式では、設計図を描く前の初期段階で建設費を確定することになります。そのため発注前の早い段階で可能な限り、スケジュールやコスト、品質に関わるリスクを把握する必要があるのです。

設計室細やかな工程管理を行うために作成した表。工種ごとの進捗状況がひと目でわかるよう見える化されている。

設計会議施設コストの増減管理表をまとめたファイル。こうして記録を残すことが、後々の齟齬を防ぐ。


大変だったのは、初期条件の整理です。
改修棟の既存インフラや製造機器類の何を残すのかを整理しないと、
発注から設計施工へと進められなかったのです。(松浦)

木下:
自動車業界で事業を展開されているみなさまにとって、性能発注方式はなじみのよいやり方だったのではないでしょうか。自動車の細かな性能に関わる部品製作というのは、自動車メーカーからのオーダーに対して製品開発するというものですよね。性能発注方式に当てはめると、CMを含む発注者側が自動車メーカーの立場で、設計施工側が部品メーカーという図式になります。発注者側が条件を設定し、それに対して設計者や施工会社からコスト削減や工期短縮を可能にするアイデアをもらう方法です。コストを下げるにしても仕組みから構築しなおして合理的に下げることができます。強引にコストダウンを迫って誰かが嫌な思いをする、という仕組みではありません。
藤村:
これまで私どもが目にしてきた、設計事務所や施工会社が設計図を描いてから発注をかけるというやり方は、何百年という長い歴史に裏付けられたものなのですよね。失礼ながら少し業界が古いというか、非効率にもみえる部分がありました。その点、性能発注方式は合理的な方法だと感じました。また、あらかじめ契約図書に責任の所在が明らかにされていたので、想定が狂ったときにも私どもは大いに助けられました。

新築1棟と改修2棟という複合的な施設計画となっていますが、どの棟を改修し、どの場所を建て替えるかというのは、どのように決められたのでしょうか。

藤村:
牧之原の事業所の中でものづくりセンターの構想に必要な棟を自由に選べることになり、比較的しっかりしたつくりの3棟を選び、うち2棟は改修で進めることにしたのです。私どもは基礎工事が要らない改修工事が大半ならば大したことはないと高をくくっていたんですよ。
木下:
新築と改修で、引渡し時期や改修後の用途など、条件が異なるものを短期間でまとめて性能発注にかけるというのは難しいことでした。特に改修はどこまでを壊し、どこを残すかを決めなくてはなりません。建物が古く、改修開始後にも想定外の不具合が出てくることも予想できました。改修では、そのような改修特有の想像力をもつことと、それに加え、既存の壁と新設の壁の取り合いのような細かな配慮を施設の現況に応じ過不足なく盛り込む必要があるのです。
松浦:
大変だったのは初期条件の整理ですね。何より改修棟のうち1棟、ものづくり技術棟を他の棟よりも4ヶ月早い、2011年内に竣工させ、稼働させなくてはなりませんでした。

藤村:
ものづくり技術棟はそれまで使っていたラインやクレーン、プレス機などが入ったままという状態でしたね。
松浦:
既存のインフラや製造機器類のどの範囲のものを取り除き、どれを残さなくてはいけないのかをまず整理しないと、発注から設計施工へと進められなかったのです。