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週刊 施設参謀

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発注者目線の仕事術 発注者目線の仕事術

vol.10クリティカルパスを示し
関係者を工程管理に巻き込む

鴨下 清

講師:鴨下 清山下ピー・エム・コンサルタンツ事業推進本部事業推進第二部部長
1969年生まれ。東京芸術大学大学院修了。山下設計を経て山下PMC入社。事業推進第二部部長として、武田薬品工業湘南研究所や横浜市新市庁舎整備事業などを中心に、PM・CM案件の統括マネジャーを務める

炭山 数文

講師:炭山 数文山下ピー・エム・コンサルタンツ事業管理本部QCDS部プロジェクトマネジャー
1943年生まれ。大手建設会社で建築系エンジニアとして勤務。大型プロジェクトを中心に参画し、うち3件がBCS賞を受賞。中堅建設会社の技術系役員を経て山下PMC入社。工事計画、工程計画、見積関連業務、施工管理など幅広く担当する

発注者は1日でも早い事業の開始を望む。商業施設やホテルなど、あらかじめ開業日が決められているプロジェクトであればなおさらだ。もし予定工期が守れず竣工が遅れるような事態になれば、発注者からの信頼は地に落ちる。施工者には違約金などのペナルティーが課せられるだろう。

スケジュール遅れの原因には、工事費の高騰によって施工者の確定が遅れる、十分な人員を確保できずに工事現場での作業がストップする、などの昨今の建築界を取り巻く厳しい現状が挙げられる。その一方で、発注者の承認が必要な場面であらかじめ意思決定期間が十分に確保されていない場合、後の工程に影響を及ぼす場合もある。

そうした事態を避けるためスケジュールの立案に当たっては、発注者の意志決定に要する社内調整の手順をあらかじめ確認し、それらを織り込んだ期間を確保することが重要だ。特に発注者の関心が深いと思われる要素については、余裕を持ったスケジュールを設定するなど配慮を重ねることで、信頼を勝ち取ることができる。

関係者の進む道を示す

建築技術者の標準的な業務範囲は、建物をつくること。完成して引き渡すまでが工期の区切りだ。だが発注者の立場で見れば、そこからが業務のスタートとなる。引き渡し後のことまで考慮に入れたアドバイスができれば、信用につながるだろう。

例えば、建築のハード面に関するスケジュールだけではなく、引き渡し後の移転のために必要となる社内調整の内容や、その時期などを含めて項目を提示する。発注者は設計・施工段階と並行して、運営開始後を見据えた検討などに着手しなければならない。数多くのプロジェクトを手掛けている設計者や施工者であれば、その経験から発注者にフィードバックできることも多いはずだ。

こうして発注者目線でスケジュールを明確にすることは、発注者に迅速な意思決定を促すうえでも効果的だ。そこでさらに一歩踏み込んで、「検討課題一覧表」を作成することを勧めたい〔図1〕。多くのプロジェクト関係者が混在するなかで、課題に対する検討主体が不明確なまま進行することは、スケジュールが遅れる要因ともなり得るからだ。

この一覧表はプロジェクトの関係者が検討すべき課題をリストアップして期限を定めることで、全体のスケジュールを崩さずに進めるための手助けとなるもの。それぞれの項目に、決定希望日と最終期限を設定して作成する。

建物の基本計画から配置計画、部材の色や家具の仕様決定など、プロジェクトの完成までに決定が必要な事項は多岐にわたる。発注者のどのレベルの承認が必要となり、その検討主体が誰になるのかを明示することで、プロジェクト関係者の間で役割を調整する重要なリストになる。それぞれの協力を引き出しながら、建築に関わる工程と、プロジェクト関係者の担当業務との相互の関係を「見える化」することで、スケジュール通りの意思決定を実現できる。

関係者に向けて課題を整理

[図1]
関係者に向けて課題を整理
課題ごとに検討の主体となる関係者を割り当ててリスト化し、提出日、決定希望日、最終期限とともに示す。

・株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツは、2018年4月1日に、株式会社山下PMCに社名変更しました。
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