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20周年記念パネルディスカッション(3) 建築家 妹島和世氏

20周年記念パネルディスカッション(3) 建築家 妹島和世氏

山下PMC創立20周年記念の第2部として、Bリーグチェアマンの大河正明さん、JTB観光立国マネージャーの山下真輝さん、建築家の妹島和世さん、そしてチームラボキッズ代表取締役 松本明耐さんという各分野で先進的な取り組みを行っているパネリストたちによるトークセッションを行いました。テーマは「日本の社会を元気にする」。これは「もの」づくりから「こと」づくりへと変わり、地方がモデルケースとなった新しい社会のあり方が国内外から注目されるリアルな日本社会を、多方向から紹介し、考察するというものです。パネリストから、さまざまな興味深い意見を伺いましたが、ここではその一部を紹介します。
今回は、石川県金沢市の『金沢21世紀美術館』や岡山県岡山市『犬島「家プロジェクト」』などを手がけ、“建築界のノーベル賞”とも言われるプリッカー賞を受賞した建築家・妹島和世さんのお話です。

年間来場者数20万人以上
石川県金沢市「金沢21世紀美術館」で新しい美術館のあり方を提案

まず、建物を作る時に考えているのは、多様な人が一緒にいられる場所をどうやったら作れるかということです。私達の建築物の中で、一番知られているのは、石川県金沢市の『金沢21世紀美術館』でしょう。プロジェクトが始まったのはもう、20年近く前ですが、当時の金沢市長が“金沢市を元気にしたい。割烹着で来られる美術館を作りたい”とおっしゃったことをみんなで共有していました。

それまでは、美術館は高尚な人だけが行く敷居が高いイメージのある存在でしたが、金沢市は街の真ん中に敷地を用意しました。私達が提案したのは、まずは入りやすいことを目指し、入口を4つ設け、どこからきても、正面から迎えられるようにすることでした。

それから周囲をガラス張りにして、展示室から距離をとりながら設け、それにより、通りから中の様子をうかがえるようにしました。アーティストによって空間を作り替えるなどの展示ができます。

今も、時折訪れますが、いろいろな形で使い続けられていると感じます。有名なプールの作品(『スイミング・プール』レアンドロ・エルリッヒ作)がありますが、無料でプールの水の中で人がゆらゆらと動いているのを鑑賞することができます。また、金沢は雨が多いですが、曇った天気にも美しく見えるものを作りたいと考えていました。建物がアートになった取り組みも行われました。アーティスト日比野克彦さんによる『明後日朝顔プロジェクト21』です。これは、建物ぐるりとアサガオで覆ってしまうというものでした。

子供たちと日比野さんが、春に朝顔の苗を植えると、夏に成長します。そのときに美術館を歩いていると、アサガオにくるまれたことによって、ガラスの存在を感じなくなっていました。まるで、軒下を歩いているような気持ちになったのです。

建築というのは動かないものですが、人々の使われ方により、様々な空間が作り出され、思いもよらない体験が生まれているのです。

「島を元気にしたい」ー犬島プロジェクト

瀬戸内海にある犬島のプロジェクトも“島を元気にしたい”という依頼をいただいてスタートしました。始まった頃は島の人口は5~60人足らずで、高齢の方が多く住んでいました。そこで、空き家を使い、集落全体を美術館にしようと考えました。島の自然や島の人々の生活、そしてアートが一体的に表れていくる風景を作ろうと考えていました。

アーティスト、ワークショップに参加する学生、訪れる人……さまざまな人々が交流し、農園や宿泊施設を作るプロジェクトもスタートしました。犬島は小さな島だからできると思っていたのですが、そうではなく最近は東京でもやれるのではないかと思うようになってきました。

取材・文:前川亜紀
撮影/末安善之

山下PMC創立20周年記念 講演会「日本の社会を元気にする」

妹島和世

建築家
妹島 和世(せじま・かずよ)

日本女子大学大学院修了、建築家ユニット「SANAA」共同代表。横浜国立大学大学院Y-GSA教授、ミラノ工科大学教授、ウィーン国立応用芸術大学教授、日本女子大学客員教授。日本建築学会賞(※)、ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞(※)、プリッカー賞(※)、芸術文化勲章オフィシエ、紫綬褒章などを受賞。金沢21世紀美術館、ルーブル・ランス(フランス)、海の駅なおしまなど、特徴のある建築デザインは、人の流れを変えるほどのインパクトを備えている。
※=SANAAとして