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20周年記念講演 チームラボキッズ代表 松本明耐氏

20周年記念講演 チームラボキッズ代表 松本明耐氏

山下PMCは、2017年12月1日に設立20周年を迎えます。
これを記念して、「日本の社会を元気にする」をテーマに特別講演会を実施いたしました。
これは「もの」づくりから「こと」づくりへと変わり、地方がモデルケースとなった新しい社会のあり方が国内外から注目される日本社会を、多方向から紹介し、考察するというものです。建築、アート、スポーツ、観光etc.……各分野で先進的な取り組みを行っている皆さまをパネリストとしてお迎えし、それぞれの最新の取り組みを、全5回の連載で紹介いたします。
第1部は、デジタルとアートを融合させた空間演出やデジタルテーマパークの運営をしているチームラボキッズの代表取締役・松本明耐さんによる講演です。

ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」

チームラボは2001年に創業した会社です。今400人くらい社員がおり、デジタルアートを制作しています。在籍しているのは、エンジニア、プログラマ、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、サイエンティストなど、さまざまな分野のスペシャリストたち。作品の他にも、空間演出、デジタルテーマパークの運営などをしています。

世代や性別を問わず楽しめる作品作りを目指す

最初に紹介するのは、『お絵かき水族館』という作品です。これは壁全体が大きな水族館になっており、泳いでいるのは、紙に子どもたちが描いた絵をスキャンしたものです。次に紹介するのは、LEDのドットを空間に立体的に配置した、光の彫刻のような作品『クリスタルユニバース』です。鑑賞者はこの中を自由に動き回り、自分のスマートフォンから、エレメントを出現させて空間に放ちます。鑑賞者同士が放つエレメントが相互に関係し、光の変化を続けていきます。最後に紹介するのは、『花と人』という作品です。これは、空間全体に花がプロジェクションされており、鑑賞している人の動きで、花が咲いたり、散ったり変化を繰り返しています。

他の人の存在をよりポジティブな存在に感じられる作品

僕らの作品のテーマは、『他者の存在をポジティブな存在として感じる』ということです。例えば、従来の美術館は、静かに落ち着いて鑑賞するものですが、僕たちの『花と人』では、子供が走ったり動き回ったりすることで、空間がいつもと違った美しさに変化します。従来の美術館では、静かにしていられない子供にとってはネガティブな存在でした。しかし、この作品では、子供はポジティブな存在になります。また、人が寝ていると、そこには美しい花が咲き、他の鑑賞者を楽しませることができます。このように、自分がコントロールできない他者の存在がポジティブになるアートを、僕たちはこれからも発表し続けていきます。

芸術家は人間の“見える世界”を変えてきた

世界的に見て、歴史の教科書に出てくるような人々を大別すると、国を作った革命家、科学者、芸術家の3種類に分けられると思います。彼らが世界の歴史に名を残すのは、世界を変えた人だからではないでしょうか。物理的に世界を変えたのが革命家なら、科学者や芸術家は“見える世界”を変えたと言えます。

例えば、私達がボールの軌跡を追えるのは、科学者がボールの軌跡を研究し、定義づけたからです。目で見る世界は、脳が情報を補完しているから成立すると実証されています。“ボールが辿る軌跡についての知識”がなければ、目でボールを追えないのです。他にも科学者たちは、人類の“見える世界”を変えてきました。

今、皆さんに“雨を描いてください”と言ったら、おそらく多くの人が縦線で雨を表現すると思います。しかし、1800年代後半の雨の日のパリを描いた絵を見ると、傘や地面の濡れた感じだけで雨を表現しています。今のように、雨が降っている様子を表す縦線で表現しているものはほぼありませんでした。

これを変えたのは、絵師・歌川広重の浮世絵作品『大はしあたけの夕立』です。この絵はヨーロッパに渡り、ゴッホが模写するなど、欧米に大きな影響を与えました。このあたりから、雨を線で描くようになります。広重の登場以降、“雨=線”として見えるようになったのです。このように、芸術家は“見える世界”を変えてきた、と感じています。だからこそ、世界の歴史にその名を残しているのでしょう。

アートは“カッコいい”の基準を動かし、人類を変える

アメリカのポップアート作家、アンディ・ウォーホル(1928-1987)がスープ缶やマリリンモンローをモチーフにした作品を制作します。ポップアイコンとありふれたスープ缶を描いた作品でアンディが世の中に問いかけたかったのは、大量生産・大量消費のモノってカッコいいよね、ということです。

それまでの企業は、既製品とオートクチュールが別れており、大量生産型の商品は、大衆が使うものだとされていました。一流のステイタスと言えば、仕立屋さんでオーダーメードスーツを作ることだったのです。

しかし、この作品以降は、よく知られているブランドで、みんなが評価しているものがカッコイイということになりました。この結果、生まれたのは大量生産だけれど、ラグジュアリーだというブランド。誰も発見していなかったこのブルーオーシャンは一大産業になりました。

基準が代われば、産業も変わるのです。今、デジタルによって、さまざまな産業が再構築され、イノベーションがおこっています。従来なら考えられなかった産業も生まれ、世界は変化を遂げている。アートには世界を変える力があります。僕達は100年後に、“他社の存在をポジティブなものにする”というアート作品で、世界を変えたという評価を得たいと思っています。

取材・文:前川亜紀
撮影/末安善之

山下PMC創立20周年記念 講演会「日本の社会を元気にする」

松本 明耐

チームラボキッズ代表取締役
松本 明耐(まつもと・あきたえ)

情報化社会の様々なものづくりのスペシャリストを結集したウルトラテクノロジスト集団『チームラボ』の新しいセクションであるチームラボキッズを率いる。インスピレーションを受けてものを作る「クリエイション(創造)」と、みんなでやったほうが素敵だと感じられる「チームプレイ」の場である未来の遊園地「チームラボブランド」を全世界で展開中。