週刊 施設参謀 週刊 施設参謀

経営課題を解決するファシリティ・
CRE戦略マガジン

20周年記念パネルディスカッション(4) 大河正明×山下真輝×妹島和世×松本明耐

20周年記念パネルディスカッション(4) 大河正明×山下真輝×妹島和世×松本明耐

山下PMC創立20周年記念の第2部として、Bリーグチェアマンの大河正明さん、JTB観光立国マネージャーの山下真輝さん、建築家の妹島和世さん、そしてチームラボキッズ代表取締役 松本明耐さんという各分野で先進的な取り組みを行っているパネリストたちによるトークセッションを行いました。テーマは「日本の社会を元気にする」。これは「もの」づくりから「こと」づくりへと変わり、地方がモデルケースとなった新しい社会のあり方が国内外から注目されるリアルな日本社会を、多方向から紹介し、考察するというものです。
最終回は、ダイヤモンド社クロスメディア事業局編集長花岡則夫さんの司会による登壇者のディスカッションの一部をお届けいたします。

アートと地域活性化は重要なキーワード

花岡 地域活性化を起こす場合、地元がひとつにまとまらないといけないと山下さんは何かのインタビューで答えておりましたね。

山下 ある集落で住人同士が互いにいがみ合っている地域がありました。そこにオーストラリア人アーティストがやってきて、アート作品を作ることになりました。そうするといつもいがみ合っていた住人たちは『こりゃえらいこっちゃ』と、大騒ぎ。

今まで見たことがない人がやってきてアート作品を作ると言うときに、地元の住人がいがみ合っている場合ではないと一緒に協力して成功させようという話になったと聞きました。 異質な人や文化が入ってくるので対応する、と言う場合、地元の人たちが協力しあっていかないと対応出来ません。地元を一つにして、盛り上げるためにはこのようなプロジェクトが必要です。アートやスポーツなどのプロジェクトがきっかけで、協力を引き出せる。自分たちの街へ外から招くと言うことは地域の心をひとつにできる、いいきっかけになると思いますね。

しかし、アートを地元の方々が理解すると言うことは難しいと思います。ある地域で蔵をアート作品にした家がありました。その持ち主は『私の家のアート作品を見ろ!』と言わんばかりに誇らしげに説明してくれました。しかし、おそらくその方はアート作品についてあまり理解できていなかったと思います(笑)。特に現代アートは一種独特の表現力を持った作品が多く、その芸術性を理解させることなど、地方の集落では非常に難しいことではないでしょうか。

妹島 アートを皆に理解してもらうことは難しいですが、地元の方々もこれらのイベントに関わることで、いろいろなインスピレーションが広がっていくケースは多いです。地元の方々はアーティストに、その地域のことを知ってもらおうと一生懸命に説明します。一方、地元の方も、そのアートを見て、自分が持っていた感性を広げていくことができます。

このようなコミュニケーションがあり、互いにリスペクトし合って自然に広がっていく。仕掛けた立場から見ても、この先どのように広がっていくのか、想像もできません。しかし地方でこのようなプロジェクトチームを作ることで、皆が参加し、アートに触れようと他の地域から来た人たちに説明する役割を担っています。そこには責任を持つと言う意識があるからです。こうすることで、地元の方々もより積極的になります。

熱い盛り上がりを見せる地元スポーツチーム

山下 高松にいるときに地元のBリーグ、ファイブアローズの試合を観戦したことがありましたが、とても盛り上がっていました。東京にいるとあまり感じませんが地元では、どのような方法やプロセスを踏んで、あれほどの熱い盛り上がりを見せることができたのでしょうか。


大河 Jリーグでは岡山や甲府、新潟は成功しております。Bリーグは千葉や沖縄で大成功を収めています。とはいえ、47都道府県ではやり方が違います。大切なことは県内に敵を作らないこと。市民と行政、応援してくれた企業のバランスを取りながら運営するチームは成功していますよ。


松本 皆さんの意見はとても参考になりますが、改めて考えると『日本の社会を元気にする』というのはとても難しいテーマですね。どうすれば元気になるのか、考えれば考えるほど奥深く入ってしまう。

花岡 これはもう一歩踏み込んでいく必要がありますね。今の社会を元気にするのは、様々な角度からアプローチする必要がある、ということですね。

建築、スポーツ、観光、アート……それぞれの専門家たちによるパネルディスカッションでは、「日本を元気にするには、地域から!」という結論に達しました。アートやスポーツなど様々なプロジェクトを媒介にして、互いに助け合い、個人が充足していくことが、これからの日本の未来を幸せにすることにつながる。そう確信し、山下PMC20周年記念講演会は幕を閉じました。

取材・文:前川亜紀
撮影/末安善之

山下PMC創立20周年記念 講演会「日本の社会を元気にする」

大河正明

(公社)ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグチェアマン、(公財)日本バスケットボール協会 副会長
大河 正明(おおかわ・まさあき)

京都大学卒業後30年近く勤務した三菱東京UFJ銀行を退行し、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)入社。クラブライセンスマネージャー、常務理事を務めたのち、その手腕を買われBリーグのチェアマンに就任。地方創生の時代の地域根差したクラブづくり、地域を活性化する夢のアリーナづくりに取り組む。

山下真輝

JTB観光立国推進マネージャー、日本版DMOサポート室室長
山下 真輝(やました・まさき)

地域活性化伝道師(内閣官房)。地域新成長産業創出促進補助金審議委員(経済産業省平成26年)、地域創生ワーキングメンバー(経済同友会平成27年)、スポーツによる新しい地域振興方策を考える検討委員(スポーツ庁平成28年)。日本全国の地域、自治体に対して観光による地域活性化事業のアドバイザー業務やプロジェクト支援を行っている第一人者である。

妹島和世

建築家
妹島 和世(せじま・かずよ)

日本女子大学大学院修了、建築家ユニット「SANAA」共同代表。横浜国立大学大学院Y-GSA教授、ミラノ工科大学教授、ウィーン国立応用芸術大学教授、日本女子大学客員教授。日本建築学会賞(※)、ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞(※)、プリッカー賞(※)、芸術文化勲章オフィシエ、紫綬褒章などを受賞。金沢21世紀美術館、ルーブル・ランス(フランス)、海の駅なおしまなど、特徴のある建築デザインは、人の流れを変えるほどのインパクトを備えている。
※=SANAAとして

松本 明耐

チームラボキッズ代表取締役
松本 明耐(まつもと・あきたえ)

情報化社会の様々なものづくりのスペシャリストを結集したウルトラテクノロジスト集団『チームラボ』の新しいセクションであるチームラボキッズを率いる。インスピレーションを受けてものを作る「クリエイション(創造)」と、みんなでやったほうが素敵だと感じられる「チームプレイ」の場である未来の遊園地「チームラボブランド」を全世界で展開中。