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新たな戦略の必要性

新たな戦略の必要性2005年全米でベストセラーになった「ハイ・コンセプト:ダニエルピンク」(訳:大前研一)では、これからの時代は、ハイ・コンセプト(新しいことを考え出す人)の時代であると説いている。なかなか不透明な経済状況を打破できないでいる今日、このビジネス環境をブレイクスルーするための戦略を多くの企業が求めていることであろう。
現在のような激動の時代には、「市場や業界を刷新しよう」と意気込むだけでは物足りない。波乱を乗り越えていくためには、効果的なビジネス戦略を取り入れて、逆説的に聞こえるかもしれないが、多くのパートナーを味方につけるための術を学ばなくてはいけない。
そこで、どうすれば数多くのビジネスパートナーを巻き込み、より実の多い未来を切り開けるのか。
今回の特集号は、このあたりの可能性の模索と、その兆しが垣間見える新ビジネスを紹介し、今後のビジネス戦略の本質を浮き彫りにしたい。

「適応」

「適応」古くて新しい課題の一つに、環境の変化に素早く「適応」するという課題がある。
不況にあってはその重要性は非常に高いわけだが、適応という言葉に受動的な意味を感じてしまうがために、その重要性は軽んじられがちである。地球上の生物は、環境に適応するために多様化、つまり新しい形質の獲得を試み、これがその環境にふさわしいものであれば生き残ることができる。もちろん、適応できなければ生き残れないということになる。また、適応行動は決して受動的ではなく、しかも難易度が高い。少なくとも、変化を正しく把握する能力、さまざまなシナリオをプランニングする能力、状況に応じて修正する能力が必要である。
IMF(国際通貨基金)は、全世界における100 以上の景気後退例について研究したところ、金融危機に誘発された景気後退の根は深く、長期化しやすいという傾向を見出し、今回の景気後退は、底が、2、3倍深く、2~4倍長期化し、GDP は4.5%のマイナス成長に陥ると報告している。

新たな2つの側面

新たな2つの側面このような不況の中で、状況を打破する2つの側面が見えてきている。一つはICT(情報通信技術)の圧倒的な進歩によって、個人や企業などいろいろな単位が、世界レベルで(距離的な広がり)、瞬時に(時間的広がり)、低コスト(従来の投資制限でない)で、多くの情報や知識を発信・共有化し、各単位が縦横無尽に結びつく可能性が開かれつつある。地域のオープンシステム(外部の協力・参加体制)に世界的であると同時に地域性を重視したクラスター(技術・生産・研究・人材教育・資金・情報などを提供する機関がぶどうの房状に連結・集積している地域のこと)、すなわち、ローカルでありながら、グローバルなネットワークをもつオープンシステムが登場している。

もう一つは、狭い範囲での自社の戦略立案だけに閉じこもらず、周囲の事業環境に働きかけようとする企業、中でも自社のユニークな資産を活用して、現在の課題を解決しようという企業が活動を始めていることである。これら2つの新しい側面は、従来はトレードオフであって、どちらかを選ばねばならないと思われてきた利益を追求する事業活動と、広く地域や世界の課題を解決しようとする社会活動が相反しないばかりか、相乗効果を持つ可能性さえ見えてきた。今までの業界を基盤に競合や顧客を想定するのでは、成果に結びつく事業戦略を立案することは難しい。事業戦略は、ある時点で完成されるものではなく、進化し、成長するものとしてとらえる必要がある。つまり、大体の方向性を決め、実行しながら、周囲の状況を見て、ダイナミックに軌道修正や微調整を繰り返し前進する必要がある。企業は、(1)「正しい答え」としての戦略を求めるのではなく、大体の方向を決め、実行しながらダイナミックに軌道修正をするイノベーションの追求、(2)それを実現するためのオープンシステム(外部の協力・参加体制)の構築、さらには(3)外部に対する積極的な働きかけが必要である。戦略を固定的で自社だけのものと考えず、時間、空間いずれにおいても広げるアプローチが重要である。

シェイピング戦略

前述のような新たな2つの側面を戦略として構築されている理論がある。シェイピング戦略と呼ばれている。シェイピング戦略は、デトロイトセンター・フォー・エッジ・イノベーションのジョン・ヘーゲル3世らが作り上げたものである。このシェイピング戦略は、無数のパートナーを巻き込んで、業界を変える戦略である。現在のような不況下においては、他との競争ではなく、他を巻き込んで現状を打破するこの戦略には大きな可能性を感じる。このシェイピング戦略は、世界各地でデジタルインフラが進歩しているために、10年前よりも実現性が高くなっていると言える。多数の企業にプラスのインセンティブを示して仲間を増やし、中心となる企業の周りには、ビジネスパートナーが集まり、互いに相乗効果を出しながら、膨大な価値を生み出そうとする戦略である。

新たな2つの側面/シェイピング戦略

シェイピング戦略の3つの要因

シェイピング戦略は、3つの要因(シェイピングビュー、シェイピングプラットフォーム、シェイピング企業の行動と資産)から成り立つ。これら3つの要因は、参加企業や参加を検討中の企業の考え方や反応に、直接ないしは間接的に影響を及ぼす。これらの3要素を生かして、数多くの企業を集め、シェイピング戦略を成功に導くこと、すなわち、この混沌とした世の中で、ブレイクスルーする可能性を高めることになるであろう。

シェイピング戦略の3つの要因