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症例4:「発生型課題解決症」経営の将来像を見据えた課題設定でアプローチ

症例4:「発生型課題解決症」経営の将来像を見据えた課題設定でアプローチ

連載第4回目は、山下PMCの『Facility Dr.』進藤が、施設運営プロセスで陥りがちな勘違いと対処法をご紹介します。

「AIやロボットが産業を大きく変革していく」。2016年1月のダボス会議で第四次産業革命が大きく取り上げられてから2年余り。新たな産業構造変革に、企業はますます危機感をつのらせています。そのため、経営資源をコアコンピタンス(本来業務)に集中させ、企業競争力を高める『経営のスリム化』に躍起になっています。

経営のスリム化は主に3つの観点で行われます。

①財務のスリム化:本掲載の第2回でもご紹介した企業の保有する不動産や製造機器などの動産を売却するなど資産をスリム化し、負債を圧縮することでB/S(賃借対照表)を改善。また減価償却費の削減でP/L(損益計算書)を改善。

②事業のスリム化:不採算事業などから撤退しP/Lを改善。

③業務のスリム化:固定費の削減のために間接部門などを圧縮し、販売管理費を削減して損益分岐点を下げる。人員削減もこの中の一つ。

これらのスリム化のための施策は施設運営・管理業務にも大きな影響をもたらします。①では、各施設が財務上どのようなインパクトがあるのか判断し、保有・売却あるいは賃貸するのか、また保有の場合でもどう維持していくのか戦略を練る必要があります。②では、不採算事業に関わる施設を今後どう活用していくのか考える必要があります。③では、施設管理「部門」自体がスリム化の対象になる可能性も大いにあり、スリムな組織の構築や業務プロセス簡潔化の検討が必要です。

経営のスリム化 3つの観点

経営のスリム化 3つの観点

さて質問に戻りますが、施設管理部門のお客さまの多くが『発生型課題解決症』に陥っています。課題解決とひとくくりにされますが、「発生型課題解決」と「設定型課題解決」に二分されます。発生型の課題とは、「今のあるべき姿」と現状を比較して課題を定義します。設定型の課題は、「将来のあるべき姿」を描いてそれと今を比較して課題を定義します。

つまり、設定型の課題が将来から今を考えるのに対して、発生型の課題は過去からの延長線上で課題をとらえることになります。自らの組織形態や規模あるいは存続そのものを課題の範囲とし、「自分たちだけ」で前のめりになって拙速に解決しようという発生型課題解決の手法では、真の施設運営改善は実現できません。

発生型課題解決と設定型課題解決

発生型課題解決と設定型課題解決

施設とは事業を営む場であり、事業環境を形づくるものです。真の施設運営改善を進めるためには、施設管理部門内部だけ、または施設そのものだけに注目すべきではありません。事業運営(経営サイド)の将来像(経営ビジョン)と施設管理部門との総合的な視点で課題を設定し、総合的な体制と業務プロセスを構築し、事業活動(=利益の創出)の持続的成長を実現するためには、設定型課題解決により施設運営改善を進めていくことが大事です。将来像とのギャップを知ることによって、現存の予算編成・予算執行に関わる業務プロセス自体の見直し等、全社的なプロセス改善が解決策になりうることもあります。

施設運営を改善するために、経営課題の全体像をとらえ、経営陣も納得する真の課題を設定し、それを解決することで、施設運営改善を進めるとともに、施設管理部門の価値も見出しましょう。

西村 貴裕

山下PMC
事業管理運営本部 部長
進藤 光信(しんどう みつのぶ)

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。総合建設会社設計部門、化学製造業エンジニアリング部門を経て、現職。新規開発プロジェクト、改修プロジェクトのPM/CMから、CRE/PRE戦略にもとづくFM/LCM業務など幅広い領域の総合マネジメント業務を展開。
主要資格:一級建築士、認定コンストラクションマネジャー

※本記事は、「週刊ビル経営」第1068号(2018年9月3日発行)に掲載されました。
発行元であるビル経営研究所の許可を得て、掲載しています。

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