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症例8:「現状維持依存症」施工経験者に頼らない戦略立案とは?

症例8:「現状維持依存症」施工経験者に頼らない戦略立案とは?

前回連載第7回目で、事業戦略と財務戦略を施設戦略につなげる仕組みを構築することの重要性についてご紹介しました。連載第8回目は、山下PMCの『Facility Dr.』進藤が、その施設戦略での推進に欠かせない投資判断の質とスピードを⾼めるDS(投資判断支援 Decision Support)の実践事例をご紹介します。

【図1】設備投資要件の基本フレーム

施設管理者が施設戦略に対する悩みとして、「そもそも自分の専門領域ではないから、何を検討してどう判断してよいのかが分からない」「図面管理が出来ていないため、施工経験者以外に相談することができない」「自分たちで投資要件を定義することが困難。疑問はあるが、施工者からの提案を信じるしかない」という声をよく耳にします。
まず、確認すべき点は、個々の施設の投資計画はどのようなプロセスを踏んで実行されているか、ということです。
一般的には、施設への計画的な保全に対する投資は、次のステップで行われます。

【①長期修繕計画】
建築・設備の各部位、部材、機器の修繕周期や耐用年数等から長期修繕計画等のLCMに関するマスタープランを作成。
【②中期修繕・改修計画】
長期修繕計画に基づいて、直近5年程度の保全項目を選択して、実行するかどうかを判断して中期の修繕・改修計画を立案。
【③単年度修繕・改修実行計画】
中期修繕・改修計画に基づいて単年度の実行予算を確保して、単年度修繕・改修計画を実施に移す。

【図2】計画的な投資判断プロセス

一方、忘れてならないのは、現況や課題を把握した上で、施設ニーズの変化、施設の社会的な機能の劣化、省エネ効果等、事業戦略・財務戦略・施設戦略の要素からの検討を加えて、修繕のみで対応するのか、バリューアップを盛り込んだ改修を行うのかの方針を定め、計画に盛り込むことです。
では、この検討は①②③のどのタイミングで実施すれば良いでしょうか?
一般的には②のステップです。この検討により、通常維持保全よりも多くの費用が発生する可能性があります。③の段階では一般的には予算を大幅に増額できないと思いますので、手遅れとなってしまう可能性が高いのです。

そして、この検討に際して重要なことは何でしょうか?
それは、事業部門(経営サイド)、財務部門、施設運営部門(現場サイド)の共通認識をもつことだと考えます。このために、投資目的、投資効果、IRR(Internal Rate of Return 内部収益率)、投資判断フロー、今後の推進プロセスなどを文書化・見える化し、多様な視点から投資要件を定義すると共に、事業戦略と施設戦略をつなげるための議論を巻き起こすことが必要でしょう。私たちは、そのドキュメントを「投資要件定義書」と呼んでいます。例えば、議論を進めていくと、大きな投資をしない場合でも、運用改善等で同等の効果が得られることもあります。実行か先送りか、どういう方法で解決するのか、修繕か改修か、財務的指標との関係は、といった様々な観点から知恵を出し合って、計画の優先順位を定めていくのです。

施設のあるべき姿の可視化に向け、アイデアの幅を広げ、合意形成を促すためのプラットフォームを構築すること。客観的視点から、施設戦略策定・予算編成・予算執行のための判断材料を可視化すること。これらが重要ということです。
ちなみに、前述の施設管理者の悩みのうち、「施工経験者に頼らない戦略立案」の手段として、私たちのようなプレイヤーを利用することも解決策でしょう。

進藤 光信

山下PMC
事業管理運営本部 部長
進藤 光信(しんどう みつのぶ)

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。総合建設会社設計部門、化学製造業エンジニアリング部門を経て、現職。新規開発プロジェクト、改修プロジェクトのPM/CMから、CRE/PRE戦略にもとづくFM/LCM業務など幅広い領域の総合マネジメント業務を展開。
主要資格:一級建築士、認定コンストラクションマネジャー

※本記事は、「週刊ビル経営」第1084号(2019年1月7日発行)に掲載されました
発行元であるビル経営研究所の許可を得て、掲載しています。

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