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症例2:「その場しのぎ症」コスト削減だけでは、施設運営改革は成功しない

症例2:「その場しのぎ症」コスト削減だけでは、施設運営改革は成功しない

連載第2回目は、山下PMCの『Facility Dr.』嘉門が、施設運営改革の「入り口」で陥りがちな勘違いと対処法をご紹介します。

何かと目を付けられやすい『コスト』。上司から、施設運営の生産性を上げろ、コストを下げろ、と指示がくだり、慌てて施設管理費・水光熱費・点検委託費等の見直しを始める。施設運営・管理に携わる方々にとっては、身に覚えがある光景ではないでしょうか。

しかし、真の改革のためには、施設そのものだけに注目すべきではありません。コスト削減の前に、そもそもの施設運営の目的を考えるべきです。施設とは事業を営む場であり、事業環境を形づくるもの。そう認識すれば、事業環境(生産拠点・ワークスペース・温熱環境・耐震性能・防災性能等)をより良くすることが施設運営の目的であるとわかります。

施設だけを見て施設に掛かるコストを削減し満足してしまう「その場しのぎ」では改革は進みません。『事業運営の長期的な動向や具体的なニーズ』も把握し、事業の成長を実現するための働き方や生産活動プロセスを検討した上で、それらに合った事業環境の構築を目指しましょう。

事業運営と施設運営は密接に関係

事業運営と施設運営は密接に関係

金融緩和に伴う不動産市場の活性化、インバウンドの増加、シェア経済の進行、AI・IoTといったテクノロジーの進化。このような環境変化に対応した自社・テナント企業の事業運営をとらまえ、『本当に必要な施設のあり方』を真剣に考えた施設運営が求められています。一例を挙げると、商業施設ではEC市場の拡大に伴い、リアルな施設のあり方を新規開発部門と既存施設運営部門が一体的に検討し、長期的な投資計画を立案し実行するといった取り組みが進んでいます。

資産運営上はROE・ROAが重要

資産運営上はROE・ROAが重要

もう一つ抜けがちなのが、『資産運営』の視点です。投資家を含めた社外への情報開示が求められる昨今では、資産運営(アセットマネジメント)を常に意識することも重要です。B/S上、施設は固定資産に該当し、保有するだけで多額のコストが掛かり、減価償却費の形でP/Lにも影響を与えます。そのため従来は、部門毎のP/Lが着目され、前年度よりも良い数字をあげることに重きが置かれてきました。しかし、REIT市場が整備され、海外投資家も含めて既存ビルへの投資が多様化する中で、投資家が拠出した資本に対するリターン(ROE)が重要視されるようになりました。そして、不動産市場では資本および負債で形成された資産に対するリターン(ROA)が重要視されています。日常の施設投資において、『ROA向上を一つの指標とし、保有資産をスリム化しつつ、稼働率向上やコスト削減を進めリターンを上げる』。この資産運営の視点を忘れないでください。

最後にもう一度繰り返します。その場しのぎのコスト削減だけでは、施設運営改革は進みません。事業運営および資産運営の視点も含めて総合的に考えることが重要です。そのためには、既存施設状況の把握はもちろん、事業運営計画および資産運営計画を所管する部署とも連携し、総合的な体制と業務プロセスを構築し、施設運営を行いましょう。

嘉門 隆史

山下PMC
事業管理運営本部 プロジェクトマネジャー
嘉門 隆史

京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻修士課程修了。大手事業会社勤務を経て、2011年12月に入社。新規開発プロジェクトにおけるPM/CMから、CRE/PRE戦略にもとづくFM/LCM(ライフサイクルマネジメント)業務等幅広い領域の総合マネジメント業務を展開。
主要資格:一級建築士、認定コンストラクションマネジャー、認定ファシリティマネジャー、エネルギー管理士

※本記事は、「週刊ビル経営」第1060号(2018年7月2日発行)に掲載されました。
発行元であるビル経営研究所の許可を得て、掲載しています。

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