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発注者目線の仕事術

4段階のコスト精査で施工者と対等に価格折衝 2

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単価の上振れに要注意

3つ目は単価のチェックだ。工事費の大部分を占めるのは、人(人件費)と物(材料費)。歩掛かりや単位数量の基準は、国土交通省の「公共建築工事標準歩掛り」や「公共建築工事標準単価積算基準」といった公開情報が基本となる。単価については、「月刊建設物価」や「季刊建築施工単価」(経済調査会刊)などをベースに把握できる。しかし、こうした刊行物の数字は急激な変動を反映しにくい。また一般的な形態の建物を前提としているため、施工の難易度が高い場合や、多くの部材を少しずつ使うような場合、単価は上振れしやすい。現状では刊行物に記載された工事単価より2〜3割高くなるリスクを織り込んでおいた方がよい。

4つ目はこれまで精査した結果を踏まえた、バリューエンジニアリング(VE)やコストダウン(CD)の提案だ。VEでは品質を保ちつつ、調達しやすい製品や資材に変更したり、省力化工法を採用したりしてコストの削減を目指す。設計の一部やり直しもできれば効果的だが、そのための検討期間を見込むなど、あらかじめ全体のスケジュールを組む時点で配慮しておきたい。

前倒しでできるコスト対策

上昇局面にある工事費を見越して設計できれば、手戻りを防ぐことにもつながる。コストに配慮した設計の基本は「軽く」「浅く」「低く」「狭く」の4ポイント。例えば「浅く」では、地下の湧水ピットを、透水処理層を設けるマットスラブに変更することで、掘削量を減らすことができる。高騰する土工事などの総量を減らせるため、コスト縮減が期待できる。

工事費高騰時代はパートナーシップが重要

[図3]
工事費高騰時代はパートナーシップが重要
工事費が発注者優位で決まっていた時代は、施工者が厳しい金額で受注するケースもあった。工事費高騰が続く今は、誰もが納得できる契約を結んだうえで、良きパートナーとしてプロジェクトに取り組む必要がある

上振れしそうな要素については、建設会社や専門工事会社、メーカー各社にあらかじめヒアリングをかけて、受注状況や資材の調達状況などをつかんでおく。早めに関係者を巻き込み、情報を得ることも重要だ。それによって、施工者からの創意工夫を引き出す余地も生まれる。

施工者が仕事を選べる売り手優位の現状では、施工者のアイデアを早い段階から取り込んで、彼らのモチベーションを引き出すことも大事だ。それによって工事費が削減できれば、発注者の利益にもつながる。

さらに支払い金についても、着手金の提示や工程途中での分割払いの容認など、契約上の配慮も欠かせない。設計者からは、見積もり要項作成時に発注者に提案することができる。発注者もこうした実務上の助言を求めている。発注者、設計者、施工者がお互いの立場を考慮しながら対等の交渉テーブルに着くことで、プロジェクトを成功に導くことができるだろう〔図3〕。

POINT

  • 施工者が提示する工事費には、様々な思惑が込められている
  • 設計段階からヒヤリングなどを通し、パートナーシップを築くことが重要
  • ●構成・本編イラスト:ぽむ企画  ●企画:納見 健悟
  • 本記事は、『日経アーキテクチュア』2014年6月25日号掲載されました。一部内容を改変し、掲載元の許可を得て、掲載しています。

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