The Report #10 PPP/PFIの潮流とコンサルタントの役割
PPP(Public-Private Partnership)/PFI(Private Finance Initiative)を導入する地方自治体は年々増えており、私たち、山下PMCもコンサルタントとしてプロジェクトに参画する機会をいただいています。
今回は、山下PMC プロジェクト統括本部 事業推進第一部門 2部 鈴木 太郎がPPP/PFIの基礎知識と取り組み事例をご紹介します。
PPP/PFI事業の増加
財政の厳しさや人口減少、インフラの老朽化が進み、公共施設の建設、運営管理における効率的な資金調達や運営を求める声が高まるなか、課題を克服するための手段として官民が連携して公共サービスの提供を行うスキーム、PPPが注目されるようになりました。現在、道路、空港、港湾、学校、病院のインフラ整備、環境管理、廃棄物処理、公共交通サービスなどにおいて、PPPは幅広く活用されています。
1997年にはPPPの代表的な手法のひとつである「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が国会で成立し、PFIの導入件数は年々増加傾向にあります。
そもそもPPP/PFIとは何か?
今では、PPP/PFIという言葉自体もすっかり定着しましたが、その定義についてはあいまいな点もあるので、簡単に補足したいと思います。
PPPには、民間の関与度合いや資産保有区分等に応じて、PFI以外にもさまざまな手法が存在します。たとえば、自治体に代わって民間が公共のスポーツ施設や文化施設の管理を行う指定管理者制度も、高度成長期に生まれた第三セクターもPPPの手法のひとつです。
つまり、PPPとは特定の法律にもとづいた制度ではなく、官民連携のスキーム全般を意味します。
一方、PFIは「PFI法」にもとづき、民間の資金力・技術力・ノウハウを活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う手法を示します。ちなみに、最近よく耳にする「Park-PFI」は、「都市公園法」にもとづき、都市公園内に商業施設やスポーツ施設を公募で設置・運営する手法であり、通称としてPFIという言葉を使っていますが、PFIとは全くの別ものです。
PFIのメリット・デメリット
地方自治体に代わって資金調達から施設の運営管理まで民間が担うPFI事業では、一般的に以下のスキームをとります。
① 事業主体
PFI事業においては、落札者グループ自体ではなくSPC(特別目的会社)がPFI事業者となり、地方自治体等との間で事業契約を締結して事業を行うことが多い。
② 民間企業による資金調達
PFI事業における施設整備のためにまとまった費用を要するが、その資金は民間事業者が自ら調達する。PFI事業者が自らプロジェクトファイナンスで金融機関から調達することが一般的である。
③ 事業の財務の独立性
PFI事業の財務は、PFI事業者であるSPCの財務として、落札者グループを構成する民間企業の財務からは独立させる必要がある。
④ 業務の対価
典型的PFI事業では、全ての業務を一体として捉え、地方自治体等はPFI事業者からサービスを購入する対価として、決められたスケジュールに従ってサービス対価を支払う。 施設整備費は事業期間全体にわたって分割して支払われることが多い。 運営・維持管理期間は長期にわたるため、期間中の物価変動等に対応することを目的に、一定期間ごとに、物価や人件費を示す指標に大きな変動があった場合に対価を改定する仕組みが設けられることが多い。
⑤ リスク分担
PFI事業では、業務が多岐にわたり、かつ長期契約のため、リスク分担の明確な取り決めが必須である。このため、地方自治体・SPC間での事業契約において、事業全体についての詳細なリスク分担が規定される。
⑥ モニタリング
PFI事業においては、定期的なモニタリングが行われる。民間事業者によるセルフモニタリングにおいては、業務日誌や業務報告書の作成、装置による計測記録等が行われ、地方自治体によるモニタリングにおいては、PFI事業者から提出された資料の確認と評価等が行われる。 モニタリングによりサービスの内容が要求水準を満たさないことが判明した場合は、サービス対価が減額される仕組みが事業契約に組み込まれている。
当然のことながら、PFI事業はメリットばかりではなく、参画するプレイヤーそれぞれメリットと同時にデメリットも存在します。
PPP/PFI事業におけるコンサルタントの参画機会
PFI事業にコンサルタントが参画する場合の立ち位置として、大きく分けて2つのパターンが考えられます。
・パターンA:PFI事業の発注者である地方自治体とコンサルタント会社間での契約
・パターンB:受注者であるPFI事業者とコンサルタント会社間での契約
ではこれより、ABそれぞれの事例をもとに、事業における課題とその解決策についてご紹介します。
事例A:広島市中央卸売市場 新中央市場整備事業
広島市は、施設の老朽化や機能向上の必要性の理由で、「安全・安心な生鮮食料品等の安定的な供給を担う、中四国地方の拠点市場」とのコンセプトを踏まえた市場施設の整備を行うとともに、余剰地を活用した物流施設の一体的な整備及びにぎわいの創出を目指すことを目的として、新中央市場整備事業を進捗中です。
本事業において、山下PMCは広島市とCM業務委託契約を締結しています。
卸売市場再整備事業の主な特徴として、以下3点があげられます。
① 市場の営業を継続しながらの整備
② 場内事業者との合意形成
③ 活用できる補助金の条件等
難しい課題に対して、当社では以下のソリューションを導き出しました。
① 工事費、工期、品質に配慮し営業上の支障を最小限にするローリング計画の策定
② プロジェクトマネジメント手法を導入し関係者間の横軸を通し丁寧でわかりやすい資料を用いた合意形成
③ 補助金要件をクリアし民間事業者の参画意欲を促す発注方式の選定
これらのソリューションによって課題を解決し、DB(デザインビルド)方式による事業者選定まで事業を前に進めることができました。
現在、私たちは引き続き、選定された事業者をはじめとする関係者の方々と協力し、設計・施工段階のCM業務を推進しています。
https://www.ypmc.co.jp/info/news/19515/
事例B:長崎市交流拠点施設PFI事業
https://www.ypmc.co.jp/stories/story38/
長崎市では“交流の産業化による長崎創生”をキーワードに、PFIを活用し、長崎駅前の敷地に、MICE施設「出島メッセ長崎」、ホテル「ヒルトン長崎」、放送局「NBC長崎放送新社屋」、および3施設の来訪者が使用する駐車場を整備しました。
本事業において、山下PMCは、ホテルおよび放送局のPM/CM業務を担当するとともに、全体事業のCMとして代表企業である九電工を支援しました。
BTO方式※のPFI事業(MICE・駐車場)、民間収益事業(ホテル・放送局)からなる複合型PPP/PFI事業において、当社に求められたのは「横断的なマネジメント力」です。
PFI事業においては、プロジェクトに伴うリスクを適切に分担し、課題を解決するための体制が重要となります。
3事業それぞれが輻輳して進められる本件においては、複数の事業にまたがる課題が置き去りにされるリスクや、事業全体の方針と単体施設の方針を連動させる難しさが存在していました。
山下PMCでは、全体事業のCMとして事業の全体像を俯瞰しつつ、3事業それぞれを相互連携させ一つの事業として構築することで、民間の技術力とノウハウの最大化に貢献しました。
※BTO方式:民間事業者が自ら調達した資金により公共施設等を整備した後、公共に施設の所有権を移転し、民間事業者が運営等を行う方式
さて、PPP/PFIの潮流とコンサルタントの役割についてお伝えしてまいりましたが、まだほんの入り口しか触れていません。さらに詳しく知りたい方は、山下PMCまでご相談ください。
次回の「The Report」は、山下PMC 渋谷 宣隆がお届けします。