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The Report #11 PMr/CMrは一日にして成らず

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同じ建設業界でも、設計者や施工管理者といった職種とは異なり、コンストラクションマネジャーのキャリアパスは想像しにくい方も多いと思います。そこで、今回は、特定事業推進部門 部門長 兼 人財開発部 部長の渋谷 宣隆が「ひとりひとりが自立したマネジャーとして成長するために必要な要素」について述べ、当社の教育方針と実際の取り組みを紹介します。

『マインドセット』×『知識×スキル』×『人間力』

私は現在、プロジェクトの前線で責任者を務めると同時に社員教育や人財のマネジメントを担う部署の責任者も兼任しています。
各プロジェクトでのチームメンバーの動き方、振る舞い方を含むマネジメント実践方法を自分の目で見ながら、今後、突出したマネジャーに成長してもらうために、人財開発責任者としてはどのように背中を押せるだろうか……と考え、模索しながら、各々が自立したマネジャーとして活躍できる環境づくりに取り組んでいます。

私たちが目指すマネジャー像は、単なる技術者ではありません。会社は、ひとりひとりが「山下PMCの」「技術力が高く」「クライアントから高い信頼を獲得している」マネジャーであることを社員に求めるわけですが、そのためにはいくつかの能力を獲得し、伸長させる必要があります。
「山下PMCの」はマインドセット、「技術力が高く」は知識×スキル、「クライアントから高い信頼を獲得している」は人間力を意味します。

マインドセット:組織の理念と価値観を体現する力

数あるCM会社から当社を選んでいただいたのには必ず理由があり、当然クライアントをはじめとするステークホルダーと相対する際は、“フリーコンサルタント渋谷 宣隆”ではなく、“山下PMCのマネジャー渋谷 宣隆”として振る舞うことが求められます。
これを実現するために必要なのがマインドセットです。理念体系や行動指針、求める人財像等について会社側から積極的・継続的に情報発信し、価値観を浸透させ、体現につなげていく場を定期的に設定しています。
といっても、すぐに変化が起きることでもないので、根気強くマインドセットをやり続けることが前提です。

知識×スキル:実務で活かせる専門性を磨く

PM/CMサービスを提供する上で、建築やマネジメントに関する知識の習得は不可避です。もちろん知識をインプットするだけではなく、それを適切にアウトプットできるスキル、いわば「知恵」が必要になります。
社内外の教材や講習やe-learningによる知識をインプットする座学とアウトプットの場としての実務を通したOJTを組み合わせ、実践的な学びを提供するようにしています。
現場での実務経験を通じて身につけた知識は、同時に「応用力」として発揮され、状況に応じた柔軟な対応力を育んでいきます。これにより、クライアントの多様なニーズや、予測不能な課題に対しても的確に対処する力を養えるものと考えています。

人間力:クライアントの信頼を得るための魅力

深い知識をベースとして高度なマネジメントスキルを発揮することは当然のこととして、クライアントから高い信頼を獲得するためには人間力の発揮は不可避です。
私たちが“懐刀”としてクライアントに寄り添いつつソリューションを提供していくこと、堂々たるプレゼンスを発揮すること、信頼に足る立ち居振る舞いをすること。人間として魅力的であることもマネジャーに求められる要素のひとつです。
この人間力を養うために、社内外の研修やフィードバックを通じて個々の行動変容を促しています。特にクライアント対応においては、専門知識だけでは解決できない問題も多く、人間力をベースとした対話力や調整力が信頼関係を築く鍵となります。

「『仲間』を知る〜連帯感を醸成する」をテーマにした社内勉強会を定期的に開催。この回はPFI/PPP方式を活用した業務に関してPFI事業の担当マネジャーが講師をつとめ、社員間での知識を深めた

教育と学習の違い

人財開発責任者としては、「マネジャーとしてスキルアップしてもらいたい」「そのために必要なマインドセット、知識、スキルの獲得をしてもらいたい」という思いがあって研修等を企画するわけですが、現場側からすると、「忙しくてやっていられない」「日々の業務や自己研鑽を通して習得できている」という思いを持ちがちです。私自身、プロジェクトの実務に関わっているので、気持ちは本当によく理解できます。

これは学習と教育に関する認識のズレによって発生するようです。人間は研修等のフォーマルな教育プログラムの中だけではなく、日々のプロジェクト業務を通して意識する・しないに関わらず学習しています。あるマネジャーが成長した(=学習した)、と感じられたときは上司や先輩からの指導、チームメンバーとのディスカッション、クライアントとのやり取り、そして本人の取り組み姿勢や意識が相まったものであり、会社側が提供する教育がすべての要因ではありません。

※参考文献:中原淳:編著 荒木淳子/北村士朗/長岡健/橋本諭:著,企業内人材育成入門,ダイヤモンド社,2006,p.67

成長の実感のためには、上司と部下、部門間の垣根を越えた、日常的なフィードバックが重要

教育とはこのような学習を効果的・効率的に実現するための意図的な支援活動です。教育とはあくまでも“支援”であり、人財育成という活動における主体者はマネジャー自身ということです。このような認識のズレが起こりがちであることを自覚した上で、社員側と研修等を企画する会社側との思い違いを解消するための丁寧な対応をしつつ“学習支援”を行い、自立したマネジャーとして成長していってもらうことに寄与したいと考えています。

新しいレシピを開発する次世代のマネジャーへ

ところで、辻口博啓という方をご存知でしょうか。自由が丘の超有名パティスリー「モンサンクレール」のオーナーで、様々なブランドショップを展開されています。ずいぶん昔、テレビか雑誌で、「モンサンクレール」で提供されている実際のレシピを本にして出版された際に「似て非なる物は作れるだろうが、自分が作ったものを超えることはできない。レシピは過去の自分であり、私はそれを超えていく自信がある。だからレシピを公開しても問題ないのだ」というようなことを言われていた記憶があります。

私、渋谷も大ファンのモンサンクレールのスイーツ。たゆまぬ研鑽に裏付けされた自信がレシピの公開に見て取れる。Photo:PIXTA

現在の建設産業も建設DX化、働き方改革等の荒波を受けて取り巻く環境が変化し、それを踏まえた次世代の建設産業へと進化を迫られています。私たちが実践しているPM/CM業務も現在の枠組みの中で“レシピ”通りに粛々と業務を実施していけばよい、というマインドのままでは時代に取り残され、淘汰されていくでしょう。

次世代の建設産業を担うPMr/CMrとして、その中で新たな仕組みやルールという“レシピ”を作っていこうとする、そのような気概を持ったマネジャーをどんどん創出していく。それを促し、会社として背中を押すアクションが求められるのだろうと考えています。

自立したマネジャーとして成長することは一朝一夕に成し遂げられるものではなく、地道な積み重ねしかありません。それこそ「PMr/CMrは一日にして成らず」です。マネジャーとして一段階グレードアップするための行動変容を促すことに寄与する積極的な支援を実施していきたいと考えています。

山下PMC プロジェクト統括本部 特定事業推進部門 部門長 兼 管理統括本部 人財・知財開発本部  人財開発部 部長 渋谷 宣隆

次回の「The Report」は、山下PMC 井上 茂樹がお届けします。

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