SAGAサンライズパーク
街の賑わい、経済の循環を生み出す 佐賀の新しいランドマークが誕生
SAGA2024(第78回国民スポーツ大会・第23回全国障害者スポーツ大会の愛称)の開催を契機に、既存の総合運動場を、佐賀の未来を見据えた総合スポーツ・エンターテインメント施設に整備する。かつてない大規模な整備事業に、佐賀県はCMを導入しました。ハコモノで終わらせない。佐賀県の将来を託された一大プロジェクトは、公共事業として類を見ない先進的な取り組みでした。

SAGAサンライズパーク
SAGAサンライズパーク全体像。国道横断橋の北側上空からSAGAサンライズパークを望む。国際大会基準のスポーツ施設のほか、日常的に選手などの施設利用者や県民が集うパークテラスも整備され、街に賑わいをもたらしている。

話し手のご紹介
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市丸 雄基さん
佐賀県 SAGA2024・SSP推進局
SAGAサンライズパーク整備推進課 整備担当係長(建築) 事務局長 -
東 啓一郎さん
佐賀県 SAGA2024・SSP推進局
SAGAサンライズパーク整備推進課 整備担当 係長(電気)
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村田 達志
株式会社山下PMC
取締役 専務執行役員 -
池上 知久
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 本部長付 戦略担当
兼 プラットフォームビジネス本部
チーフプロジェクトマネジャー -
澤田 耕治
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進部門 1部
プロジェクトマネジャー
SAGA2024開催後も街の活性化につながる施設

佐賀県として初の本格的なCM導入。CM業務とは何だろう?から始まりました
整備事業が始まった経緯について教えてください。
- 東
- 本年、佐賀県では「SAGA2024」が開かれます。開催が内々定したのは2014年でした。前回の若楠国体(国民体育大会/1976年開催)から半世紀近くがたち、当時、整備されたプールや陸上競技場のリニューアルに加え、アリーナを新築することになりました。スポーツを核に佐賀を元気にする「SAGAスポーツピラミッド構想」もスタートしました。開催後も、街の活性化につながる、地域の拠点になる施設整備を目指しています。
- 市丸
- 基本計画は、スポーツを楽しむだけでなく、街の活性化につなげていくという視点で立てられました。
佐賀県での公共事業におけるCMの本格的な導入は初めてということですが、必要性があると判断された理由を教えてください。
- 市丸
- 佐賀県として、これほど大規模で多数の施設を同時期に整備する事業は初めてのことでした。基本計画の策定が進み、事業規模の大きさ、施工者等関係者の膨大な数が判明するにつれ、関係者間の調整や意思疏通をどのように図っていけばよいか、課題になっていました。
- 東
- SAGA2024という絶対的なスケジュールを前に、用途の異なる施設の設計、建築・土木を含む膨大な数の工事を並行して進めていかなくてはなりません。全体のスケジュールを見渡して管理する力が必要とされました。
- 市丸
- しかし、CMの導入も初めての試みですから、「CMとは何だろう?」というところからスタートしました。開催までの限られた時間内に何ができるのか、CMに何を依頼すれば成功できるのか、それを明確にするところから、山下PMCさんにお願いしました。
- 村田
- CMの活用は市町村単位では増えていますが、都道府県の事業でCMを導入するのはまだ珍しいケースでした。事業としても非常に魅力的でしたので、ぜひ参画し、我々の公共事業とスポーツ施設での実績をフルに活用させていただきたいと提案しました。
国際大会基準のスポーツ施設をつくる
- 東
- CMを選定するためのプロポーザルは、我々にとって事業をどのように進めるか改めて考える契機になりました。
- 村田
- 当然、プロポーザルは我々が審査される場になるわけですが、通常とは違って佐賀県の皆さんが我々の提案にとても熱心に聴き入ってくださり、勉強会のような雰囲気になったのが印象的でした。
- 市丸
- 本当に真剣でした。
- 東
- 整備事業の方針は基本計画に書かれていますが、具体的な計画は書かれていません。事業を進めていくための条件を山下PMCさんたちと一緒に詰めていきました。
- 村田
- 最初の打ち合わせで、具体的なご要望が二つありました。一つは既存の屋外プールを屋内化すること。基本計画では、屋外のプールに屋根を付けると記載されていますが、実際にはとてもハードルの高い計画です。二つ目に、設計者を年度末の3月までに決めたいという点です。その時、すでに11月でしたので、こちらも急ピッチで進める必要がありました。
- 池上
- 国際大会基準の水泳場に改修したいということでしたが、改修では対応が難しいことが判明し、解体して新築することになりました。
- 市丸
- 国際大会を開催できる水泳場をオリンピックの前に完成させ、代表チームをキャンプに誘致したかったのです。
- 東
- 設計者の選定についてもかなり厳しいスケジュールでしたが、当然質を下げるわけにはいきません。設計者の選定方法について、CM視点でアドバイスを頂きました。
- 池上
- 選定委員会の組成から、公開プレゼンテーションの段取りまで、整備推進課の皆さんと動き回りました。プレゼンテーションでは私が司会を担当しましたが、審査員、佐賀県の皆さんに設計者の提案や質疑に熱心に向き合っていただきました。
SAGAアクアのメインプールは、約1,200の観客席、大型ビジョン、水深3mに対応する可動床を備え、国際大会にも対応できる。
プロジェクトに関わったマネジャー
関連する用途
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スポーツ・エンターテイメント
これからの街が、より良い街であり続けるためには、市民に選ばれる魅力が必要不可欠です。今、その有力な魅力となりうるものにスポーツやエンターテインメントがあります。にぎわいのある街となるための在り方とは?スタジアム、アリーナの事業収益が成立するための工夫とは?日本の未来を力強くドライブする、しかし誰も答えを創れていないソリューションが、強く求められています。
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公共
2014年6月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が改正され、公共工事においても多様な発注方式の採用が認められたことで、DB(デザインビルド・設計施工一括発注)方式、ECI(施工者が早期に関与)方式などが普及しつつあります。一方で、自治体の技術職員が減少する中で、2020年9月には「地方公共団体におけるピュア型CM方式ガイドライン」が発行され、複雑化・高度化する事業をCM活用により着実に推進する手法が広がりをみせています。また、多くの自治体では高度成長期に建設された施設の老朽化が進み、PRE戦略や公共施設マネジメントの立案・実施も課題となっています。