STORYお客さまの声

横浜市役所新庁舎(中編)

性能発注方式のデメリットを
どうやって乗り越えたのか?

コスト変動リスクの軽減。CMとしてのノウハウが活かされます

性能発注方式のデメリットとその対処方法について具体的に教えてください。

鴨下
性能発注、DB方式のデメリットとしては、主に2つの点が挙げられます。1つ目は「設計者と施工者が同一人格のため品質管理に懸念が生じやすい」ということです。これに対してはCMである私たちが工事監理者とは違う視点で品質(図面・現場)を確認することで品質低下を防ぐようにします。
木下
また、本プロジェクトではよりよい品質を担保できるコンソーシアム体制の提案を求め、それによって、設計・施工者共同企業体から、「自らの設計者や施工者とは別の第三者を工事監理者とする」という提案を引き出しました。発注に関する資料は、すべてが戦略、というと大げさに聞こえるかもしれませんが、今後何が起きるか等、深い検討にもとづいて作成する洞察力が求められます。
鴨下
実際、現場でも工事監理者が厳しく品質管理を実施してくれました。

設計が始まる前の段階で工事費を決めることにリスクはないのでしょうか。

鴨下
まさにこれが2つ目のデメリット。「求める性能が不確定であったり、あいまいであったりすることで、期中の追加変更によるコスト変動リスクがある」という点です。これを軽減するためにこそ私たちCMとしてのノウハウが活かされます。山下PMCは発注者要望を性能として明確に規定した発注仕様書を構築し、それを用いてコストマネジメントを行うことで根拠のない増額を防ぎ、一方で追加要望によるコスト増を明確にしリスクコントロールしました。

リスクコントロールには、しっかりとした発注仕様書が不可欠なのですね。。

鴨下
はい。コストを抑える、ということを主眼とした場合、発注仕様書さえしっかりと構築していれば問題となるようなリスクはないと考えています。目標のコスト内に抑えるために、設計段階から施工者が作成した概算見積書の単価や歩掛かりを用いてコスト管理を実施していくことで、工事着手前に大幅な増減額が生じるようなことを軽減できるからです。
木下
もちろん、一般論的なリスクはあります。大切なのはそのリスクを、どのように回避するか、マネージしていくかです。性能発注に用いる発注仕様書って何だろう? どうやってつくるの? と、クライアントからも、また多くのCMからも質問されることがありますが、先ほどの鴨下の発言にもあるとおり、発注仕様書は、いわゆる実施設計図書で引いている図面を「言葉」に置き換えたものです。少なくとも設計・施工者側が見積りができないといけない。ただし、すべてを決めてしまっては設計・施工者のよさが活かせない。よい提案を出してくれることを期待して、あえて余幅を残すところ、逆にもめると困るような部分はしっかり書いておく等、その勘所を押さえながらまとめることができれば、リスクというほどのリスクはないといえます。

設計・施工者は、コストコントロールに積極的に協力してくれましたか?

鴨下
発注者、設計・施工者、我々が同じマインドをもってVE(バリュー・エンジニアリング)・CD(コスト・ダウン)提案を行う等、請負金額内に収まるようにしていく、チームづくり・一体感の醸成が必要です。このように、言葉にするのは簡単ですが、今回のプロジェクトではそのために様々な苦労を重ねました。結果としては、チームとして強くまとまり、請負金額内で竣工を迎えることができました。
鴨下
発注者、設計・施工者、我々が同じマインドをもってVE(バリュー・エンジニアリング)・CD(コスト・ダウン)提案を行う等、請負金額内に収まるようにしていく、チームづくり・一体感の醸成が必要です。言葉にするのは簡単ですが、今回のプロジェクトではそのために様々な苦労を重ねました。結果としては、チームとしてまとまり、請負金額内で竣工を迎えることができました。

先ほどおっしゃっていた「実感した成果」について詳しく教えてください。

菅野
独自の「総合評価落札方式」が確立できたことです。設計・施工者の技術や金額の比較に加え、高度技術提案型の入札が実施できました。優れた提案を採用できた上に、事前に予測していた積算よりもかなり下がった落札金額にもなったのです。横浜市が求める市庁舎像を理想的な形で実現する道筋が見えました。
鈴木
高度技術のなかには、建築計画、さらにはデザインの提案も含まれています。横浜の新たなランドマークとしての外観だけでなく、市民や職員が日々利用する施設の機能に紐付くデザインによって、高い品質と価値をもった市庁舎が実現しました。

発注段階では、契約約款でも独自の工夫をされたそうですね。

菅野
この時点では、横浜市には、従来の「工事請負契約約款」しかなく、DB方式に適合した約款がありませんでした。
鴨下
そこで、横浜市の「工事請負契約約款」をベースに、土木学会の「公共土木設計施工標準請負契約約款」を参考にした「工事請負契約約款(設計・施工一括)」を作成。こうした発案が、今回のプロジェクトでDB方式のメリットを引き出した要因の一つとなっています。

前例のない大規模公共施設建築でのDB方式の適用を経験して、気づいたこと、次に活かしたいことはなんでしょうか? 

鴨下
これまでに経験したことがないことといえば、やはり発注準備段階の制度設計です。民間ではあまり想定することのない「見えない発注者」である市民、議会等の多くの関係者に対して最大公約数(落とし所)を意識しながら制度を構築していくことが求められました。厳しい局面もありましたが、今となれば大変貴重な経験をさせてもらえたと思っています。
この経験により見えない相手への対処方法を感覚的に養えたので、プロジェクトに対する第三者的立場の側面をもつCMとして、民間のプロジェクトにも活かしていけると思います。
木下
多くの都道府県、市町村が新たな公共施設建築のあり方を模索しています。限られた予算でよりよいものをつくろう。新しい公共建築物はどうあるべきか? 激甚化する災害にどのように対応しようか? 民間のよいところを取り入れながら、公共としての公平性や手続きをどう守るか? 今回のプロジェクトではそれらすべてのことを高度に構築できたと思います。
この経験と、民間の経験という、いわば対極にある2つの端を押さえられたことで、本当に多くの市町村のみなさまへのニーズに応用することができると思います。
何より、ここで構築した基盤をもとに、私たちがサービスを提供できるのは、コスト的にも、時間的にも、サービスのクオリティー的にもお客さまには大きなメリットです。
また、民間であっても、公共並みに公平性が求められる仕事も多いでしょう。そのようなお客さまにも、この横浜市役所新庁舎の経験が安心感ともなり、よりよい社会づくりに貢献できるのではないかと思います。すべての経験を、そのような高い視座で活かしていきたいと思っています。
  • 当初の基本構想では、アトリウムと大岡川が分断されていた。山下PMCは職員のメインエントランスを3階に移動し、1・2階は市民が自由に利用できる空間を大きく確保する提案を行い、これを設計・施工者への与条件として設定することで、具現化に貢献した。

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