PROJECT 05

ソフトバンクモバイル 
新ネットワークセンター(後編)

プロジェクト座談〈後編〉

分離と連携のバランスで「最善」を導く

[2012年9月〜2014年3月]

「三方良し」のコストコントロール

社内には設備を分離発注にすべきとの意見もありましたが、
複数の設備会社を個別に管理するのは大変。CMrが公平な視点で
説明した結果、コストオン方式とする合意を得ました (鈴木)

建築工事が設計施工一括発注であるのに対し、設備の工事と機器類の発注は分離発注ですね。その理由を教えてください。

村田:
ネットワークセンターの建設では、設備にかかる費用が全体の半分以上を占めます。ですから、この部分のコスト縮減は非常に重要。ソフトバンクモバイルさんの購買部は設備機器の購入に関して実績が豊富で調達力がありますから、設備工事会社や機器メーカーに直接発注したほうが有利なのです。また、設備は実施設計後でないとスペックを確定できないという事情がありました。これら2つの理由から、設備工事と設備機器については設計施工分離発注方式を採用しました。つまり、建築工事の設計施工を担当するゼネコンが設備の実施設計までを手掛け、その段階で確定したスペックをもとに設備の仕様発注をかけたわけです。
鈴木:
弊社の購買部は、分離発注で直接契約したいという意向を持っていました。しかし、複数の設備会社に対し個別に発注を行うのでは安全や品質の管理が大変で、責任の所在があいまいになりかねません。そこで、山下PMCの提案を受け入れ、コストオン方式を採用しました。設備会社の選定と工事金額の決定は直接行い、その後にゼネコンに統括管理を任せるやり方です。社内には「コストオンフィーを支払ってまでゼネコンに依頼する必要があるのか」という議論もありましたが、直接管理をする場合のリスクと窓口を一本化するメリットを説明して合意を得ました。CMrという第三者が入り、公平な視点で説明したことで説得力が増したと思います。
村田:
設備機器の割合が高いので、コストオンフィーがパーセンテージだと発注者にとって納得感がありません。そこで、料率ではなく、ゼネコンが積み上げで算出した統括管理業務費を固定費で支払う方式を採用しました。1億円の機器だろうと1000万円の機器だろうと、やるべき仕事内容が10倍変わるわけではありませんから。これである程度は経費を縮減できたはずです。
安田:
ゼネコンのやる気を削ぐことなく、コストを圧縮するにはどういう方法でフィーや責任範囲を決めればいいのか。山下PMCにはさまざまなパターンを考えてもらいましたね。最終的に、当事者全員が納得できるところへ落ち着きました。
野村:
関係者間でコストオン協定を結び、ゼネコンの統括管理業務の範囲、ゼネコンとサブコンの共通仮設などの業務区分、費用負担などを規定しています。そこが曖昧だと合理的なコストオンのフィーも出てきませんから。
鈴木:
そういう調整は、当社の社内だけでは無理でしたね。

設備工事や設備機器の調達にはリバースオークション(RA)方式を採用しています。これはどのような仕組みですか。

安田:
「逆オークション」「競り下げ入札方式」などと呼ばれるもので、複数回の価格提示の結果、最も安い価格を提示した会社を選定する仕組みです。当社の調達ではポピュラーな方法で、今回もRAによって競争原理を活用することは、最初から要件に入れていました。
鈴木:
山下PMCと相談しながら、設備工事は電気、空調・衛生、防災の3パッケージに分け、機器類は受電設備、発電機、UPS(無停電電源装置)、整流器、バッテリー、セキュリティの6パッケージに分けました。RAでサブコンとサプライヤを選定した時期は、実施設計がほぼ固まった2012年の9月でした。パッケージごとに複数社に声を掛けた結果、全部で30社程度の企業がオークションに参加してくれました。

BIMだと物理的な位置が把握しやすく、運営面でも有効に使えます。
データは入れてもらったので今後、それをどう使っていくかですね(松浦)

今回のプロジェクトでは、新たな取り組みとしてBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)を導入しています。どのようなメリットを期待されたのでしょうか。

BIMによる検討。構造や設備の情報が3次元で可視化できるので、取り合いの調整もしやすい。
BIMによる検討。構造や設備の情報が3次元で可視化できるので、取り合いの調整もしやすい。

鈴木:
ゼネコンの発注条件にもBIMを使うことを明記しました。というのも、ネットワークセンターは配線、配管が錯綜しているので、「施工時の取り合いの調整なども可視化できるメリットは大きい」と山下PMCから提案を頂いたからです。ゼネコンも当初はBIMで設計図をつくり、打ち合わせもBIMでやります、というくらいの意気込みだったのですが、何しろ時間のないプロジェクトだったので、実際は必要性のある限られた施工図だけBIMで検討していきました。最終的には、ゼネコンがすべてBIMにまとめてくれましたが、ちょっと大変でしたね。
安田:
配管などの情報が3次元で入っているので、BIMだと物理的な位置が把握しやすく、運営面でも有効に使えます。ある配線の系統だけを追っていく際などにも、使い勝手はいい。データは入れてもらったので今後、それをどう使っていくかですね。社内でもCADデータをBIMのデータに置き換えて入れていくとか、やることもいろいろ出てきます。
村田:
今回BIMの活用で、課題も見えてきました。たとえばBIMソフトにもいろいろあり、違ったソフト間で、属性情報を含めて完全に連携させることは難しい。共有できるデータ形式にすると属性が表示されなくなってしまう。設計や施工だけでなく運営段階も含めてBIMをいかにうまく活用していくか、課題の克服を含めて、まだこれからという気がしています。

聞き手:三上美絵、たかぎみ江、納見健悟

※ソフトバンクモバイル株式会社は、2015年7月1日よりソフトバンク株式会社へ商号変更されています