PROJECT 05

ソフトバンクモバイル 
新ネットワークセンター(中編)

プロジェクト座談〈中編〉

分離と連携のバランスで「最善」を導く

[2011年9月〜2012年9月]

計画段階での緻密な与条件整理

ネットワークセンターとしての性能を確保するため、
あらかじめコミッショニング(性能検証)の実施を規定して、
それらを盛り込んだ発注図書を作成しました (野村)

前編で「建築工事は性能発注」と伺いましたが、基本計画の段階で与条件をどのように整理していったのでしょうか。

野村:
まず設計者を決めるに当たっては、工期短縮のためにも設計・施工を一緒に依頼できる設計施工一括発注方式にしようと提案させていただきました。
村田:
発注者としての考え方を設計施工者に知ってもらうため、最初にコンセプトについて議論しました。軸としたのは「信頼性」「機能性」「環境配慮」です。ネットワークセンターなので耐震性と、災害時に顧客へのサービスを最大限に継続させるBCP(事業継続計画)は絶対条件です。そこで信頼性に関して、データセンターの信頼性基準であるティア4をベースにしようと決めました。
野村:
ネットワークセンターとして必要な性能を確保するため、あらかじめコミッショニング(性能検証)の実施を規定して、それらを盛り込んだ発注図書を作成しています。後に、元請けのゼネコンがコミッショニング計画書を作成し、それぞれのフェーズごとに試験を行って、所定の性能が発揮されていることを検証しました。
鈴木:
機能性に関して重視したのは、フレキシビリティです。ネットワークセンターには事務所エリアもあり、諸室の使われ方が流動的です。そこで機器室のエリアでも、将来的に用途転換が可能なスペックにする、天井チャンバー方式もシステム天井を使って空調の吸い出し口をどこでも自由に開けられるシステムを採用するといった提案をしました。
安田:
環境については、エネルギー効率を示すデータセンターの指標であるPUE1.5を目標にするという大命題を掲げました。また、CASBEEはAランク相当を目指し、実現しています。ネットワークセンターというエネルギーを大量に消費する施設としては、かなりのレベルだと思いますね。
村田:
今回は発注を2段階に分けていて、設備は後から発注するので、それまでなら変更がきく。まずはゼネコンのコストができるだけぶれないようなスペックを設定しましょうとお話ししました。具体的には新ネットワークセンターに必要な諸室と面積、配置条件、そして各室の諸条件などです。外装材や内装材はある程度仮設定をしてグレード感を具体的に共有しました。
安田:
基本設計に近いレベルまで詰めましたね。2〜3カ月しかない中で、「極力決めてしまおう」と言われ、プランに必要な条件を社内で引き出して設定していきました。
鈴木:
データセンターと違って、ネットワークセンターは電源にしても直流電源をたくさん使うなど特殊な仕様を求められるため、我々の考え方を記した分厚い設計ガイドラインに基づき説明させていただきました。
野村:
本来、機器室のためのネットワークセンターなのですが、近年、空調機やUPSなどのバックアップ電源のための機器がどんどん大きくなっていってしまう傾向があり、機器室と空調機室・電源室のバランスをどこでとるのが最適か、必要な情報を出していただいてスペックを想定し、相当議論を重ねて検討を進めました。
村田:
基本計画段階でかなり詳細な情報を出してもらえたので、我々としてはすごく助かりました。どれくらい発電機のバックアップを見込むのかなど、ネットワークセンターとしてのスペックをこの段階でほぼ決めていただいたのです。運用についてもかなり突っ込んで検討されていて、稼働後のメンテナンス性などを先見で盛り込みました。

安田:
使い勝手の良いものを目指していたので、当社の設計担当者にも保守経験のある人に入ってもらい、アドバイスをもらったりしました。
野村:
機器室は、通信系のケーブルや電源系のケーブルが錯綜しています。あとから装置を追加できるようにするには、最初の段階で合理的なルート構成を検討するなどして課題を整理し、我々がもつノウハウを詰めておく必要がありました。ソフトバンクモバイルさんからもしっかりとした情報を出していただき、それを設計に反映できたと思っています。

設計施工方式なら、設計段階でゼネコンが独自の工法を
構造設計に入れ込めるので、経済的な合理性を追求できます。(村田)

建築工事のコストの縮減に関しては、どのような工夫をされたのでしょう。

村田:
良いものを経済的につくるということでは、ゼネコンからいろいろ技術提案してもらい、いくつかの工法を採用しました。外周壁柱構造(TOLABIS)もその一つです。建物外周部の構造体を壁柱にすることで、機器室のパイプスペースなどを効率的に配置できるようにし、事務室は窓周りに広いスペースを確保できました。
また基礎工事において杭の長さや本数の低減を目的に、直接基礎と杭を併用した工法(パイルド・ラフト工法)も採用して構造面からトータルコストの縮減を図っています。
安田:
無柱の大空間をつくるCSビーム工法も技術提案の一つですね。建築工事では新しい技術を数多く使っているので、建設業界ではかなり注目を集めていたようですね。
村田:
設計施工方式の場合、設計段階でこうした自社の工法を構造設計に入れ込めるので、経済的な合理性を追求できます。建設資材の調達も今回は施工者からの提案により一部を海外調達しています。
安田:
建築は性能発注だったので多少のブレは覚悟していましたが、最終的にグレードを維持したまま想定の範囲内で納まっている。非常にうまくコストコントロールできたと思っています。
鈴木:
コストを圧縮できた分、違うところでグレードを上げられた、ということもあります。宿直室が何部屋かあるのですが、そこで待機する人は夜お酒も飲めません。せめて部屋の環境をよくしようと、機械室の音を防音するなどグレードを上げています。「高級ホテル並みだ」と言ってもらえると良いのですが(笑)。

スケジュールのネックとなる作業項目をもれなく抽出し、精度の高いマスタースケジュールを作成、管理した。
スケジュールのネックとなる作業項目をもれなく抽出し、精度の高いマスタースケジュールを作成、管理した。

外周部の構造体を壁柱とすることで窓周りに有効スペースを確保した。外周部の構造体を壁柱とすることで窓周りに有効スペースを確保した。