ソフトバンクモバイル新ネットワークセンター
分離と連携のバランスで「最善」を導く
本日はソフトバンクモバイル株式会社の新ネットワークセンター開設を担われたお2人に、プロジェクトを振り返っていただききます。
話し手のご紹介
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鈴木 貴雄
ソフトバンクモバイル株式会社
保全運用本部保全計画統括部
施設技術部部長■本プロジェクトでの役割
新ネットワークセンター
プロジェクト実務責任者 -
安田 明弘
ソフトバンクモバイル株式会社
保全運用本部保全計画統括部
施設技術部部長補佐
■本プロジェクトでの役割
新ネットワークセンター
プロジェクトリーダー -
村田 達志
山下ピー・エム・コンサルタンツ
事業創造本部
事業創造部部長
■本プロジェクトでの役割
統括プロジェクトマネジャー -
野村 康典
山下ピー・エム・コンサルタンツ
取締役 専務執行役員
事業管理本部担当役員
■本プロジェクトでの役割
電気計画プロジェクトマネジャー
[~2011年9月]災害にも強い、最先端の施設をつくる
東日本大震災が大きな契機となり、
災害に強く、バックアップもしっかり取れる
新ネットワークセンターのニーズが
社内で一気に高まりました。(鈴木)
まずは新ネットワークセンターを新設することになった経緯を教えてください。
- 安田
- 我々の部署は、全国にある当社ネットワークセンターの設備増強や更新を担っています。新ネットワークセンターの建設構想が具体的な計画として動き始めたのが2010年頃でした。事業拡大に伴い通信データ量も増えたため、通信装置を増強しなければならず、新たに機器室が必要になったことが1つ。また、都内にもソフトバンクモバイル最大規模のネットワークセンターがあるのですが、BCP(事業継続計画)の観点から災害時のリスク分散化を進める必要もありました。そして新設するのであれば、環境面でも低負荷の最先端のネットワークセンターにしたい、ということでプロジェクトがスタートしたのです。
そもそもネットワークセンターとはどういう施設なのでしょう。イメージ的にデータセンターとも似ている感じを受けますが。
- 鈴木
- ネットワークセンターというのは、携帯電話サービスを提供するために必要な通信装置をまとめて設置する大きな施設です。これに対しデータセンターは、お客様のサーバーを設置したり、クラウドサービスなどを提供したりするものと言えばわかりやすいでしょうか。ネットワークセンターはあくまで当社の通信事業を展開するための施設です。
これまでずっとスペース不足で悩んできて新設するタイミングを見計らっていたのですが、その判断が難しかった。というのは、通信機器の必要数は増える半面、製品の小型化がどんどん進んでいるので、確保しなければならないスペースの予測が立ちにくいのです。「もう足りなくなる、いや、まだ大丈夫」の繰り返しでここまでやってきました。けれども2011年に入って東日本大震災が大きな契機となり、災害に強く、バックアップもしっかり取れる新施設のニーズが社内で一気に高まりました。
コンストラクションマネジメント(CM)方式を採用されたのは、どのような理由からでしょうか。
- 安田
- とにかく大きなプロジェクトであり、最先端の施設にするためには、新しい考え方や手法を取り入れたい。そのためのさまざまな情報や、また建設の際に生じる課題についても解決していくための支援がほしいと考えたからです。
- 鈴木
- 2011年の6月にプロポーザルを実施して、PM会社数社から提案をいただきました。
設計施工者の選考に時間をかけたのは、品質を追求しながらコストも最適化したいという我々の希望に沿う受注者を吟味するためではないかと(安田)
- 安田
- 山下PMCを選ぶ決め手となった1つは経験値です。実は過去にソフトバンクグループのデータセンターの開設にあたって、我々も山下PMCと一緒に仕事をしたのですが、その時の仕事の進め方を見ていて非常に勉強になりました。そういうデータセンターや通信センターなどの実績とノウハウを持っているところにコンサルタントに入ってもらえたら非常に心強いだろうと。
プロポーザルで山下PMCから出してもらったマスタープランを今、見直してみると、改めてすごいと思いますね。35カ月間の工程が、ほとんど実際と合致している。
最後は2社に絞り込んだのですが、両者のプランの違いで目を引いたのが設計施工者の選定にかける期間の違いです。プロジェクト全体の期間は変わらないのに、山下PMCはもう1社より約1.5倍以上、施工者の選考に日数をかけていた。なぜだろうと。我々はいいものをつくりたい。しかしコストも最適化したいと考えていたので、高レベルでそのバランスをとるために時間が必要だったのではないかと思っているのですが。
- 村田
- おっしゃるように、最適なものを経済的につくるという点で、基本的に私どもでは設計施工者の選定に時間を取るようにしています。今回のプロジェクトでは、建築工事を性能発注、設備工事を仕様発注と、分けて選考する方法をとったことが特徴です。建築工事の得意なゼネコンにまず参画してもらい、コスト縮減や工期短縮のためのさまざまな技術提案を受ける、ということが狙いの1つです。そのためにはまずゼネコンに提案依頼する発注図書をしっかりと作り込む必要があります。そして的確な技術提案を数多くしてもらうためにも、ある程度の時間の幅をとりたかったのです。
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ソフトバンクモバイル新ネットワークセンターの外観。
(提供:大成建設) -
新ネットワークセンターの正面エントランス。
プロジェクトに関わったマネジャー
関連する用途
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データセンター
昨今、クラウドプラットフォームの増加やデジタルサービスの拡大などによりIT需要が急拡大しています。IT技術の進化はとても速く、その進化スピードに対応した設備機器の入れ替えや需要に合わせたサーバーの段階的な設置など、将来のメンテナビリティ、フレキシビリティを十二分に確保しておくことが事業性の観点からデータセンターには求められています。同時にBCP(事業継続計画)に対応し、非常時にもダウンすることのないインフィル・インフラ計画とするといった施設計画も、信頼性の観点から重要です。加えて、「脱炭素社会」を背景とする電力消費量の抑制のため、エネルギー効率〈PUE〉を低減することも主要な課題となっています。