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ソフトバンク施設技術部長に訊く「ネットワーク拠点のBCP強化策とは?」

ソフトバンク施設技術部長に訊く「ネットワーク拠点のBCP強化策とは?」

モバイルをはじめさまざまな通信サービスを展開するソフトバンクの最重要拠点「ネットワークセンター」。その設備設計、構築、設備増強などを担っているのが、同社施設技術部長・鈴木貴雄氏です。東日本大震災を教訓に、より災害に強いネットワーク構築を進めていると語る鈴木氏に、通信施設におけるBCP(事業継続計画)をいかに強化していけばいいのか、お話を伺いました。

ネットワークセンターの使命は「何が起きても稼働し続けること」

鈴木さんが属している施設技術部の業務について教えてください。

ソフトバンクの全国にあるネットワークセンターの設備増強や更新を担っています。ネットワークセンターというのは、当社が通信サービスを提供するための個々の装置・設備を収納している大きな施設です。サーバやネットワーク機器が並んだデータセンターのような施設ですね。

ネットワークセンターをつくる上で、最も重視しなければいけないポイントは?

われわれ通信事業者には、サービスが止まってしまうことは許されません。何が起きても稼働し続ける施設であること――それに尽きると思います。当然、災害にも強くなければなりません。建物自体が頑強であること、また電気などライフラインが断たれても事業継続できるよう、信頼性をどれだけ高められるかがいちばんのポイントになります。

東日本大震災のときは、どのような状況だったのでしょうか。

地震発生時、幸いにもネットワークセンター内の設備に重大な障害は発生しませんでしたが、停電が起こりました。通常、電気はインフラの中で最も早く復旧するはずのものとされますが、東日本大震災のときは、阪神・淡路大震災を上回る最大規模の停電となり、東北地方だけでも440万世帯がその影響を受けました。

ネットワークセンターではその間、発電機をフル稼働させ、また燃料タンクが小さい中継所に対しては、タンクローリーを走らせ給油して回らせました。なので、ネットワークセンターも中継所も、システムは一度もダウンしていない。問題は基地局です。もちろん基地局でも停電時には備え付けの蓄電池に切り替わり、しばらくは稼働できます。しかし電池が底をつくのも時間の問題でした。地震直後、携帯電話がつながらなかったのは、安否確認などで電話が集中したこともありますが、停電も原因の一つです。

そしてなんといっても津波による被害は想像を絶するものでした。地震で倒壊を免れた基地局も流失し、通信ケーブルが途絶するなど、被害は多岐にわたり甚大でした。エリア復旧には確か1カ月半ほど、4月後半までかかったと思います。

教訓が生きた熊本地震。いち早くエリア復旧宣言も

今年4月の熊本地震のときはどうだったのでしょう?

局所的な地震だったため、被害は限定的でしたが震度7の破壊力はすさまじいものでした。停電もさることながら、基地局周辺の通信ケーブルが切断されるなど、東日本大震災と同様、簡単には修復できないトラブルが沢山ありました。また、阿蘇山周辺は通行規制で入ることができないなど、復旧させようにも、現地にたどり着けない。震災直後は非常にもどかしい状況が続きました。

伝送路を迂回させたり、災害に備えて用意していた気球基地局(注:ソフトバンクでは係留気球を使って無線通信を確保する「気球無線中継システム」が2013年より全国主要拠点に配備されている)を、福岡県から熊本県・阿蘇地方に向かう国道442号線沿いに打ち上げるなどし通信状況の改善を図りました。

また、現地スタッフは基地局や回線網の確認に追われていたため、地震発生の翌日には東京から人員を送り出し、核となるネットワークセンターや中継所の設備をチェックさせました。震災直後に東京から人を派遣するというのは本当に恐ろしく不安なものです。しかし、メンバーは快くその依頼を受け対応にあたってくれました。本当に頼もしく素晴らしい仲間がいるんだと改めて感じさせられました。

報告を聞くと、幸いなことに設備には大きな問題は発生していませんでした。天井から吊るす構造のケーブルラックに補強をかけるなど、東日本大震災以降、全国の拠点で設備の耐震基準を上げ、補強を進めていたからです。また停電に備え、基地局に関してもバッテリーを増強したり、発電機を備えるなどして、対策強化を進めていました。その成果もあり、熊本地震の時は他社に先駆け、いち早くエリア復旧宣言を出すことができました。

東日本大震災で得られた教訓が生かされたということですね。

そのとおりです。災害や事故などの非常時こそ、人々は「つながりたい」と念じます。通信設備は人々の命綱を握っているといっても過言ではありません。ですから設備が止まらないよう、バックアップを設けるなど、信頼性・冗長性をしっかりと確保し、障害が発生してもシステム全体の機能を維持できるようしておかなければなりません。

しかし、それでも人知を超えた災害に見舞われることがあると、われわれ日本人は今回の熊本地震で再び思い知らされました。壊れてはいけないところが壊れる可能性は決してゼロではない。したがって運用面で、いかに早く障害箇所を検知し、駆けつけられる体制を準備しておくかも重要です。それが復旧スピードに大きく関わってきます。ですから、建物内の機器室などの配置や、細かいことですが、番号表示の仕方一つをとっても、誰が駆けつけても迷わないようシンプルでわかりやすいものにしておく必要があるのです。

聞き手・文:陣内一徳


次回、「ソフトバンク施設技術部長に訊く『通信施設における設備更新のポイントは?』では、進化のスピードが著しいITファシリティを陳腐化から守る秘訣について伺います。

鈴木貴雄
Suzuki Takao

1975年、東京生まれ。1998年、株式会社東京デジタルホン(現・ソフトバンク)入社。以来、旧J-フォン株式会社、ボーダフォン株式会社時代を通じネットワークセンターの設備設計・構築を担当し、現在、ソフトバンク 東京中央技術本部 東京保全運用統括部 施設技術部 部長。東日本大震災を契機に、設備の耐震性強化に尽力し、また最新鋭ネットワークセンターを埼玉に建設するプロジェクトでは、実務責任者として指揮を執った。