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ディーコープ谷口健太郎氏に訊く「コスト削減で一番大切なことは?」

ディーコープ谷口健太郎氏に訊く「コスト削減で一番大切なことは?」

企業の購買に関する経営支援サービスを行うディーコープ。2001年の設立以来、国内大手企業1,683社に対して、累計件数69,620件、累計総削減金額2,387億円の経費削減を実現した実績を持ちます。建設プロジェクトや施設の維持管理業務においても、コスト削減は担当者にとって大きな悩みどころ。ディーコープでは「適正価格」をいかに実現しているのか、秘訣を伺いました。

医療機器から金融、建築までこなした病院建設プロジェクト

以前は大手商社に勤務され、海外の施設建設プロジェクトに携わっておられたとか。

いまも印象に残っているのが、トルコの国立大学病院建設プロジェクトです。とくにMRIやCT、超音波画像診断装置などの医療機器をメインに納入していました。主たる顧客はトルコ政府で、「ターンキー契約」が入札の条件でした。つまり建物の引き渡し時点で、顧客がキーを回したらすぐにオペレーションを始められる状態にまで仕上げるわけです。ベッド数220床、鉄筋4階建ての建物をつくり、さらに医療機器一式、カフェテリアの什器や冷蔵庫、放送設備、看護師のユニフォームや灰皿や注射針、カテーテルといった消耗品まで、24カ月間で院内のすべてを整えました。

プロジェクトでの谷口さんの役割は?

医療機器、医療設備に関するプロジェクトマネジャーをしていました。といっても仕事はロジスティクスも金融も……なんでもこなしました。というのも、当時の日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)の制度金融を活用して、資金をトルコ政府にお貸ししてそのお金で病院を買ってもらっていました。日本輸出入銀行からは全体の85%しか資金が出ないので、残り15%についてはこちらで用意してファイナンスする必要もありました。そしてモノを調達し、機器の据え付けではゼネコンとの調整業務もあります。たとえば、CTを下げるアンカーは天井のどこにつけるかといったことまで1つ1つ指示を出していました。プロジェクトに入ったときは建築について素人でしたが、現場に張り付いたおかげで建築のことも少しは見えてきました。

トルコで実体験! 2週間も続くリバースオークション

苦労されたのは、どういうところでしたか?

さまざまな理由があって、プロジェクトをスタートする前から赤字のプロジェクトでしたので、いかに収益を上げるかに知恵を絞りました。たとえば、病院のベッドで定評ある米国会社製のものを入れるとなると、だいぶ値段が上がります。だけど性能は日本メーカーのものと変わらない。そこで、その日本メーカーの代理店がトルコになかったことに目をつけ、現地で新たに市場をつくるお手伝いを申し出た。その代わりに今回調達するベッドの価格をほぼ無償に近いところまで下げてもらいました。そうやって収益を増やしていき、最終的には10数億円の利益を得ました。

プロマネや現場監督をこなしながら、次の入札にも備えます。トルコ政府からの病院のプロジェクトの入札が年間で5回程度あり、現地からアメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、イギリス、日本といった全世界のメーカーにアクセスして見積もりをとり、毎回入札の札をつくっていました。何しろ病院1棟分ですから、医療機器だけでなく什器も含めると1000種類を超えます。そのため、札といっても封筒に紙を入れるようなものではなく、厚さ15 cm ほどのファイルを100冊くらい作成して、それを「札」として段ボールに入れて提出していました。

入札はどのように進行するのでしょうか。

トルコでは、初回の入札はクライアントである大学病院側が要求仕様を確認するため、どのような製品をいくらで納入できるのか、概算見積のような意味合いで入札します。その後は、リバースオークション、すなわち競り下げ方式になるのが普通でした。私どもの他にはGE、シーメンス、フィリップスなどいつもの常連がいて、最初の見積もりで一番高い札を入れたところから順に、現状の最低金額を下回る金額を宣言していきます。

「では次の人」と順番に回していって、それを朝の9時から夕方6時までだいたい2週間、誰も金額を下回れなくなるまで続けていくんです。見積もりをとるメーカーは1000社に上りますから、次の自分の番までの間に、片っ端から「いくらにできるか」と電話をかけまくらなくてはなりません。それだけの製品の数を担いできているのですから手ぶらでは帰られない。交渉の重みをひしひしと感じましたし、腹の据え方も身につきました。

適正な購買には適正なサプライヤ情報の収集が不可欠

その後、誘いを受けてソフトバンクに。

ええ。2000年にソフトバンク・イーコマース(現・ソフトバンク)に転職し、当初はインターネット関連事業を新規に立ち上げる部署の責任者をやっていました。次に、建築資材などの入札支援をインターネット上で行うシーエムネットを経て、現在のディーコープに移りました。リバースオークションシステムなどを介して、お客様にコストの低減と透明化を図っていただくという点で、シーエムネットとディーコープは共通項があるとも言えます。実際、リバースオークションをディーコープに紹介して以降、ディーコープの大きな武器になっていきます。

ディーコープのサービスの概要は。

ディーコープではITを使って、間接材を中心に購買支援サービスを行っています。間接材とは小売流通業では、レジの用紙、レジ袋、ユニフォーム、ゴミ袋など、仕入れた商品以外がそれにあたります。製造業では、製品づくりに必須の原材料以外の梱包資材や作業着、事務機器、備品といったものを指します。別の言い方をするならば、会社の戦略に直接関係する直接財を買うことは「戦略購買」であり、売り上げに直接関係しない間接材の購買は「非戦略購買」と呼んでいます。ちなみにこれは私の造語です。

とくに非戦略購買に関して、私たちは経費削減のお手伝いをするわけですが、この領域は種類が雑多で、1つ1つの金額は戦略購買に比べて小さい。複数のサプライヤを選定し、相見積もりをとって……という比較購買の手間がなかなかかけられない領域です。そこをアウトソーシングしてもらい、私たちのノウハウを入れた上でコスト削減した結果をお返ししましょうというのが私たちのビジネスです。通常の見積もり合わせからリバースオークションまでのサービスを提供する購買のアウトソーシング企業と言えます。

値段を適正価格にするというのは、サプライヤをどう集めるかということと、仕様を適正なものにしていくことの2つにかかっています。常連の業者だけではなく、つねに新規業者を入れて競争に流動性を持たせる必要があります。また、発注者は何を欲しているのか、どんな仕様を求めるかを明確にしておく必要もあります。当社は、これまでの経験からお客様のニーズに沿ったサプライヤをリストアップする一方で、お客様の購買に関する課題に対して的確なソリューションを提供します。

聞き手・文:陣内一徳


次回、「ディーコープ谷口健太郎氏に訊く『リバースオークションの賢い使い方とは?』」では、購買支出削減の強力な武器、リバースオークションについて伺います。

谷口健太郎
Kentaro Taniguchi

1961年、広島県生まれ。早稲田大学理工学部大学院にて修士号取得。日商岩井株式会社を経て、2000年、ソフトバンク・イーコマース株式会社に入社。2001年、インターネット上で建築オープンマーケットプレース運営および入札を行うシーエムネット株式会社取締役副社長、2003年ディーコープ株式会社執行役員、2006年現職。