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ソフトバンク施設技術部長に訊く「通信施設における設備更新のポイントは?」

ソフトバンク施設技術部長に訊く「通信施設における設備更新のポイントは?」

技術進化のスピードが速いITファシリティ。それだけに設備構成の方向を見誤ると、陳腐化してしまう恐れがあります。ネットワークセンターの立ち上げからメンテナンスまで、そのすべてに精通するソフトバンク施設技術部長の鈴木貴雄氏に、機器の進化をどのよう読み、設備構成を考えていけばいいのか、設備更新のポイントについてお話を伺いました。

新設・更新の判断が難しいネットワークセンター

鈴木さんは、埼玉で新しいネットワークセンターの開設を担われました。これも災害対応の一環だったとか。

都内には当社最大規模のネットワークセンターがあるのですが、BCP(事業継続計画)の観点から、災害時のリスク分散化を進める必要があったこと、また事業拡大により、首都圏ではトラフィックが増大していたことから、埼玉に新ネットワークセンターを建設しようということになりました。

建設プロジェクトを進める上で、コンストラクションマネジメント(CM)方式を採用されていますね(注:本プロジェクトでは山下PMCがコンストラクションマネジャーの立場で参加し、センターの設計・施工の支援を行った)。

最新鋭の施設にするために、積極的に新しい情報や提案を求めていましたし、また建設の際に生じる課題についても解決のための支援が欲しかったからです。こういうファシリティがつくりたい、それにはこれくらいのスペックが要る、というところは、こちらである程度決められます。しかし、受注者の方々がきちんと競争できる環境を整えて適正価格に導く、しかも効率よくそれを実現するとなると、自分たちだけではかなり難しい。そこでCM会社に期待したのです。こちらの希望に対し、さまざまな提案、選択肢の中から決断することができたので、いま振り返っても間違いない選択だったと思っています。

一方、通信拠点における設備更新も担われています。そのポイントは?

やはり、サービスを止めないで更新しなければいけない点がいちばん難しい。とくに電源装置の入れ替えですね。新しい電源装置をつくり、古い装置を運転したまま冗長構成を組んでつなぎ、古い装置を取り去ります。これは大きなリスクをともなう、非常にシビアな作業です。

それからスペースに関する読みも課題です。通信機器というのは需要に応じて必要数は増えていきますが、一方で、製品は時代とともに小型化・省スペース化がどんどん進む。2つの相反する方向性があって、確保すべきスペースの予測が立ちにくい。「これ以上は機械室が満杯」と思えても、案外すんなり納まってしまうという経験を何度もしました。ですから、長期的な視点に立って新しい拠点を検討する場合に、新設に踏み出す判断がとても難しいんです。

設備更新では、電源を交流電源にするか直流電源するか、という悩ましさもついてまわります。今後、どちらが増えていくか予測がつかないという問題です。直流は通常48Vが使われていますが、他社さんでは新たに「HVDC」という380Vの高圧直流をデータセンターなどのサーバーに向けて使い始めています。それが市場で支持を得れば、施設の設備構成も変わってくることになります。結局、どちらに転んでも対応できるよう、柔軟性のある設備を少しずつ備えていかざるを得ない。

通信サービスの統合を契機に、資産の有効活用がますます大きな課題に

過去に目を向けると、施設の進化もあったでしょうが、鈴木さんの会社にもずいぶんと変遷があったと伺っています。

ええ。デジタルホングループと、デジタルツーカーが統合してJ-フォンに社名変更し、その後、外資系のボーダフォンが日本テレコムとともにJ-フォンを傘下に納めます。そして2006年にボーダフォンをソフトバンクが買収し、社名がソフトバンクモバイルになりました。

鈴木さんは一環してネットワークセンターなどの施設回りを見てこられました。そのお立場から見てどんな変化がありましたか。

ボーダフォンの時は外資系という特徴からか、目先の利益が優先され中長期を見据えた計画的な投資がなかなかできませんでした。一方でソフトバンクは常に先を見据えたなかで、戦略を立てていくのが大きな違いですね。「30年後には世の中はこう変わる。そのときソフトバンクはこうありたい」と。そこから逆算して中期目標、短期目標を立てるので、計画に具体性があり、目標とする地点がはっきりしている。施設をつくる上ではやりやすいし、やりがいもあります。トップダウンでベンチャー的な会社と思われているかもしれませんが、若手の意見にも積極的に耳を貸しますし、バランスはいい会社だと思います。


これからの計画は?

大きなプロジェクトの計画はありませんが、施設運営における効率化は一つのテーマかと思います。いかに資産を有効活用し、運営コストを下げていくかさらに追及していく必要があります。施設の統廃合など拠点集約も一つの方法です。リスク分散とは逆行しますが、分割損を無くすことによりメンテナンス効率も上がり、トラブル時の復旧への対応も早めることができ結果的にサービス品質を向上させることができます。

2015年4月に、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB、ワイモバイルが1つにまとまり、ソフトバンクになりました。これからは、これまで各社が保有していた施設の有効活用も考えていかなければなりません。また今後の施設新設計画をにらみ、各社まちまちだった設計基準を少しずつ統一しながら、いまの時代にあった、より効率的なものに変えていきたいと考えています。

ソフトバンクには5つのバリューがあります。「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」。逆境や壁、難題をも乗り越える。しかも楽しんで。それがソフトバンクのDNAなんです。日々の業務の中には大変なことや辛いこともあるけれど、乗り越えた先には、達成感やお客様の笑顔がある。そのための努力であれば、楽しいのではないか。われわれソフトバンクは情報革命で人々を幸せにするため、そのバリューを胸に日々業務に取り組んでいます。

聞き手・文:陣内一徳

鈴木貴雄
Suzuki Takao

1975年、東京生まれ。1998年、株式会社東京デジタルホン(現・ソフトバンク)入社。以来、旧J-フォン株式会社、ボーダフォン株式会社時代を通じネットワークセンターの設備設計・構築を担当し、現在、ソフトバンク 東京中央技術本部 東京保全運用統括部 施設技術部 部長。東日本大震災を契機に、設備の耐震性強化に尽力し、また最新鋭ネットワークセンターを埼玉に建設するプロジェクトでは、実務責任者として指揮を執った。