PROJECT 03

医療法人社団恵生会 
上白根病院(アフターストーリー)

アフターストーリー

BCPを強化し、地域のニーズに応える病院に

利用者、職員の気持ちを一新させた新施設

上白根病院


施設を実際に使ってみて、印象はいかがでしょうか。

冨田:
建物がきれいになり、交通量の多い中原街道からの視認性もよくなって、患者さんも増えました。概ね好評で、応援のような言葉もいただきます。その分、患者さんをお待たせする時間が出てしまっているので、オペレーション面を改善し、せっかくつくっていただいたよい施設を生かしていきたいと思っています。
大矢:
概ね計画通りのものができて、よかったと思っています。明るくてきれい、通いたい、という声をよく聞くようになりました。 他の病院に行ったとき、医療従事者に褒めてもらうようなことも増え、うれしく感じますね。スタッフステーションなども機能的になって、病院全体に活気が出ました。建物だけではなく職員の気持ちまで変わったという意味でも、よかったなと思います。

最後に一言ずつ、CM導入とプロジェクト全体を振り返ってのご感想をお話し下さい。

冨田:
もしCMを採用していなかったら、コストや工程上、さまざまな問題に対処できなかったのではないかと思います。CM方式とは一方的に建設会社を叩いてコストを下げるというものではなく、裏付けに基いて、適正な契約に落とし込んでいくものだとわかりました。発注者の立場からすると本当によいシステムだと思います。
大矢:
私どもは素人ですから、建設会社の提案に対して曖昧な判断しかできません。CMという存在は、建物の機能やコストの裏付けを示し、どの程度なら妥当なのか、問題点がどこにあるのか、といったポイントをあぶり出し、我々でも比較検討し判断できるように補って下さいました。また建設会社に何をお願いすると追加コストがかかるのか、といったこともわかりやすく教えてくださって、交渉なども計画的にできました。
冨田:
建設会社にも山下PMCさんにも一生懸命対応いただいて、頭の下がる思いでした。どんなプロジェクトにも言えることだと思うんですが、やはり人が大事ですね。よい方に入っていただいたおかげで、よいプロジェクトになったと感じます。
丸山:
建設会社は発注条件をしっかり受け止めて「発注者が喜んでくれるものをつくりたい」と、最後まで真摯な対応を貫いてくださいました。みんなが同じゴールを目指していける、よいプロジェクトチームだったと思います。何より理事長、副理事長は常にはっきりとした施設のビジョンをお持ちで、それが最後までブレませんでした。だからこそみんな同じ方向を向いてプロジェクトを完遂できたのではないでしょうか。プロジェクトチームがぎすぎすしていると、どんなに能力が高い人間が入っていても、いいものはなかなかつくれません。少し青臭い言い方になりますが、チームの結束や和というものは人と人とが仕事をしていく上で、本当に大事なことなんですよね。



取材を振り返って

高度経済成長期に開発された住宅街に立地する上白根病院。冨田理事長が病床過剰地域で差別化をはかる必要性を、大矢副院長が地域の高齢化を指摘していたが、いわゆるニュータウンに立地する多くの病院にとっても共通する話題が含まれるのではないだろうか。かつて急速な開発がなされた地域は21世紀に入って一気に高齢化を迎える。地域にあるさまざまな施設もまた老朽化し、時代やニーズにあわせた更新が求められている。
上白根病院には、災害対応ができるようBCPを強化したいという明確なビジョンがあった。だが迷っていたのは免震か、耐震か。山下PMCへの依頼のきっかけは、建物の性能やコストについて的確な判断するために、専門家の知見を頼りたいということだった。
医療の世界では主治医以外の意見を求め、妥当な治療法を探る「セカンドオピニオン」の採用が一般化し、ただ病気を治療するだけではなく「クオリティ・オブ・ライフ」の向上という視点が求められている。こうした動きは、施設のハードのみならずライフプランを発注者と共に考えていく、山下PMCの役割と重なっている。そして免震構造の増築棟と改修棟をシームレスに連続させた高スペックな増改修を、病院のオペレーションを妨げずに行ったことは、発注者の真の想いを実現したと言えるのではないだろうか。

平塚 桂(取材:2014年11月18日)

TEXT:平塚 桂
PHOTO:久瀬 修一