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医療法人社団恵生会 上白根病院 中編

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[2011年6月~2011年10月]ブレない発注図書をつくる方法

最も気を遣ったのは、シーンの想定ができる材料を与えること。(丸山)

発注図書をまとめ、建設会社を選定するまでのプロセスを教えてください。

渋谷
東日本大震災の後で、資材や労務費の高騰がすでに予想されていたことなども関係して、免震構造で進めるとご決断いただいてから発注図書をまとめるまで、2週間しかかけられませんでした。短期間でも提案にブレが出ないよう、気を配って発注図書を構築しました。
丸山
最も気を遣ったのは、提案をする側に“シーンの想定ができる材料を与えること”でした。有事にどういった医療行為をしたいのか、入院患者にどういった方が多いのか、病棟で看護師がどう患者に対応しているのか。実はそういったことは発注者にとっては日常風景なので、特徴だと気づかれていないことも多いんです。そこで我々が関わってきたいくつもの病院の事例を踏まえた上で、この病院ならではの特色を整理し、提案側に理解してもらえるようにまとめました。もう1つ重要なのは、設計者が自由に提案できる部分と、できない部分を明確に分けることでした。設計者は、一般的な病院のニーズに当てはめて、自分の判断で機能を取捨選択してしまいがちなので、この病院が求めていることが何なのか、どのような運営やサービスを提供していこうとしているのか、シーンが想定できるような文章にまとめて伝えました。また医療施設を専門とする設計者ならば常識となっている、例えば免震構造の増築棟と耐震構造の既存棟をシームレスに使いたいといった条件も、あえてきっちりと定義し、提案者が条件を読み変える余地を挟まないようにしました。

建設会社による提案書。明るさ、使いやすさを重視して計画された。

渋谷
増築棟を免震構造にする、手術室、画像診断等の重要機能を増築棟に移転させるといった計画上の条件とは別に、発注者をリスクから守るための条件を加えました。1つは本工事、別途工事の区分関係をきっちりと規定すること。例えば医療機器を既存棟から移設する工事は別途工事に入るのですが、本工事の段階でアンカーボルトの設置などが必要になります。そのような別途工事との調整を含む、発注条件で規定したC工事の統括管理業務を本工事範囲として条件提示しました。もう1つは物価上昇についての考え方の明記です。資材や労務費の相場の変動に応じて工事費を変更しないことを条件とし、契約時の金額で工事を行えるよう設計変更の際の増減額決定のルールなども詳細に、発注図書に盛り込みました。

平面効率よりもやわらかさを優先し、丸みを持たせたデザインを
採用しました。地域での印象もがらっと変わって、
ホテルと間違えられたこともあるほどです。(大矢)

提案選定のポイントは、どのような部分にあったのでしょうか。

渋谷
このプロジェクトが抱えていた大きな課題は、構造既存遡及の問題でした。既存棟の1/2以上の床面積の増築を行う場合、当時の規定では既存棟も現行法に適合させる必要があったんです。既存遡及への対応はコストがかかりますし、杭や基礎も現行法規に適合させることは現実的ではありません。そこで合理的な解決策を検討し、増築棟と既存棟とを同時に大臣認定を受けることで一体的に計画することを発注者サイドとして考えていました。この手法を更によりよい方向で解決する提案をいただいたことが一番のポイントです。
冨田
私どもは完成度の高い提案よりも、その後一緒につくっていくことのできる柔軟性のある提案に魅力を感じました。担当される方々の雰囲気も柔らかくて、これなら現場からの声を汲み取りながら柔軟に変更をしていける余地があると思ったのも決め手の1つになりました。
川原
選定方法は、技術提案とコストの内容による総合評価という形を取りました。各社のプレゼンテーション時に担当者の人柄や業務への姿勢などの資質面での評価が決定を後押しすることになりました。
大矢
前理事長は生前、「病院らしくない、やわらかく少しラグジュアリーな雰囲気にしたい」と言っていました。そうした想いも受け、平面計画の効率よりもやわらかい雰囲気を優先し、丸みを持たせたデザインを採用しました。おかげで地域での印象もがらっと変わって、ホテルと間違えられたこともあるほどです。
冨田
開院してからは、動線をよく考えていらっしゃいますね、と褒めていただくことが増えました。この計画の特徴は、患者さんのためのスペースが窓側にあることです。普通は外側に診察室を配して中を待合室にしますが、うちでは逆なのです。
  • 丸みを持たせたプランの増築棟。

  • 待合室や共用スペースなど患者が長時間過ごす場所を窓際に配し、居住性を高めたプランが特色だ。

関連する用途

  • 医療・健康施設

    医療施設の整備には、経営・運営・施設の視点を統合した計画立案が欠かせません。しかし、診療報酬制度の制約を受ける経営、多数の専門職が関わる運営、24時間365日止められない施設において、全体を見渡し最適な計画案を見出すとともに、関係する専門職の納得感を得ながらプロジェクト推進を行うことは容易ではありません。3つの視点を横断的に俯瞰し、複数の分野・部門にまたがる関係者の合意形成を実践できるプロジェクトマネジャーが求められてます。

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