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勝てる提案書へ 潜在ニーズをどう読む? 2

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限られた情報から発注者を知る

要項書を読みこなすだけでは、競合他社と同じスタートラインに立っているだけにすぎない。ありとあらゆる入手可能な情報のなかから、提案に役立つ情報を選別して収集しよう。発注者が株主などに向けて情報公開するIRリポートはもちろん、一般的な公開情報に至るまで提案のヒントが隠されている。

あるプロポーザルで1社のみ、敷地形状から角度を振ったプランを提案してきたことがあった。気象統計をもとに、敷地には特定方向からの強い風が吹くことを読み取り、建物の角度をずらすことで荷さばきスペースを風のあおりから免れるようにするという提案だ。このように公開情報からでも敷地固有の問題などを読み解いて提案に結び付けると、説得力が出るだろう。

提案前に開かれる説明会や現地調査は、発注者の生の声に触れられる貴重な機会だ。何気ない一言でも聞き漏らさないようにしよう。

例えば現地調査の際のふとした会話で、発注者側の担当者が、「駐車場が足りていない」とこぼしたことがあった。こうした一言からも、駐車スペースをもっと増やすように提案に盛り込む、あるいは工事の際に駐車場に現場事務所を建てられそうにないので、別の敷地に建てることを検討した方がよい、というように課題や解決策が見えてくる。

総合力を提案で示す

それでは評価が高い提案書のポイントとは、どのようなものだろう。第一には発注者の思いを的確に理解し、良い意味でのサプライズに昇華すること。さらにもう1つ、重要な項目として挙げたいのが、提案内容で「総合力」を示すことだ。

総合力の高い提案書とは意匠面だけではなく、構造、設備、ITといった多方面から検討を加え、アイデアの裏付けをしっかり練り上げたものだ。

発注者は複合的な、時には相反する要望を持っているものだ。例えばイノベーションを生み出すような流動性の高いプランを望む一方で、セキュリティーや施設管理のしやすさも重視する。複雑に絡み合う課題に答えを出すためには、意匠設計者のみならず、幅広い分野の視点から多角的に検討し、総合力で解決する必要がある。意匠に力を入れるあまり、大事な要望や与件を見逃したりしていないか注意が必要だ〔図2〕。

提案書は相手の事情をよくのみ込んで

[図2] 提案書は相手の事情をよくのみ込んで
良い提案書はしっかりした情報収集を前提に、発注者のニーズを的確に反映したもの。悪い提案書は、裏付けに欠けるデザインや、自社の技術を盛り込んで的を外すなど、独りよがりな手紙にも例えられる

総合力の高い提案の例として、ある物流センターを紹介しよう。一般的には鉄骨造の採用が想定されたが、構造形式を自由提案としたところ、1社から鉄筋コンクリート造の提案が出てきた。その建設会社独自のハイブリッド工法によるもので、プランもまとまっていた。鉄骨の価格が上昇局面にあり、コスト面でも優位性があった。さらに海に近い立地だったため、さびに強いコンクリートの採用は、維持管理面でも有利だった。技術力のある会社がさまざまな視点から検討を加えながらもしっかりと力を発揮し、コストを抑えた合理的な提案をしたケースと言えよう。

弱い部分はチームで補強

さらに、プロジェクトの特性に応じて最適な担当者でチームを編成し、そのことを発注者が感じられるようにすることが大切だ。会社全体がプロジェクトの重要性を理解し、バックアップする体制を持っていると受け止められるからだ。

とはいえ、幅広い技術者を自社に抱えている企業はそう多くないはずだ。そうした場合でも、アドバイザーとなる専門家や専門工事会社などとの協業体制を構築し、その組織体制も提案の一部とすることで、取り組みへの真剣さを伝えることにつながる〔図3〕。

特に経験豊富な発注者は、それまでのプロジェクトでさまざまな困難を体験していることから、担当者の人柄を重視する傾向にある。最後までパートナーとして協業できる人を求めているからだ。だからこそ、専門のプレゼンテーターによる流れるような発表よりも、担当予定の技術者が実直に発表し、質疑にも真摯に対応する方が、発注者の心に残るプレゼンテーションになることが多い。

プロポーザルは団体戦

[図3] プロポーザルは団体戦
発注者の複合的な要望に応えながらチームで最後までやり抜けるよう、社内外からベストプレーヤーを集めて臨む

POINT

  • 要項書や公開情報、発注者の何気ない一言など、あらゆる情報に提案へのヒントが隠されている
  • 提案のみならず「人」も評価される。組織づくりも提案の一部だ
  • ●構成・本編イラスト:ぽむ企画  ●企画:納見 健悟
  • 本記事は、『日経アーキテクチュア』2014年5月25日号に掲載されました。一部内容を改変し、掲載元の許可を得て、掲載しています。

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