The Report #06 持続可能なまちづくりに必要なエンジン
前回はアリーナ、スポーツビジネスを核としたまちづくりについてお伝えしましたが、今回は、まちづくりの根幹的な考え方について、山下PMC プロジェクト統括本部 都市創造部門 都市創造1部 部長の野澤 孝之がご紹介します。
消滅可能性都市から持続可能なまちへの転換
2024年4月24日に経済界の有識者グループ「人口戦略会議」から、「令和6年・地方自治体『持続可能性』分析レポート」が発表されました。この中で、全国の市区町村のうち4割超に当たる744の自治体で人口減少が深刻化しており、将来的に消滅の可能性もあることが言及されています。本レポートは、2014年に公表され大きな注目を集めた分析結果の第二弾にあたりますが、前回は896の自治体が消滅可能性都市に該当し、10年前から、持続可能なまちづくりは喫緊の課題として認識されていました。
前回のレポートで東京23区で唯一消滅可能性都市に該当した豊島区では、SDGsを軸にした経済・社会・環境の三側面の調和、好循環を生み出すモデル事業として、「公園を核にしたまちづくり」に取り組むなどした改善を重ねた結果、現在は消滅可能性自治体から脱却しています。豊島区では、特色ある4公園での取組と、それらをつなぐ電気バス『IKEBUS(イケバス)』の活用、エリアマネジメント組織などによる公園運営や、公園収益を芝生育成費等の運営費に還元する仕組み、IKEBUSのサポーター企業や周辺企業との連携などにより、公と民が一体となって地域の魅力をまち全体に広げ、池袋駅周辺の回遊性向上を図っています。
都市を創造する
当然、持続可能なまちづくりの実現に向けた課題、そしてその解決方法は、地域によってさまざまですが、単にハコモノ(施設)をつくり続けるだけでは実現できない点は共通しています。
ブランド、サービス、コンテンツ、そしてマーケティングにいたるまで、都市をとりまくあらゆる体験とビジネスの課題をいかに解決し、さまざまな可能性をカタチにし、いかに社会実装していくか、そのような可能性を創造することこそが、持続可能な次の都市、未来を生むのではないかと考えています。
ここで、あらためて消滅可能性都市・自治体が抱える課題について整理します。
- 地方財政の悪化による公共サービス水準の低下
- 生活関連サービス産業(小売・飲食・娯楽・医療機関等)や公共交通機関(電車・路線バス等)の撤退
- 空き屋などの増加
- 地域コミュニティ機能の低下
少子高齢化と人口減少が急速に進むと上記の問題が想定されます。よって、これからは「人口が減少しても持続できるまちづくり」が前提となり、持続のためには、国からの補助金などに頼るだけではなく、自力で生み出す「経済のエンジン」が必要になってきます。
経済のエンジン
では、民間企業がけん引して地域の「経済のエンジン」を生み出した事例を紹介します。
山下PMCは、神奈川県相模原市にある総延床約67万㎡の日本最大級の最先端物流拠点施設『GLP ALFALINK相模原』の建設プロジェクトを支援しました。
本施設の誕生によって雇用の創出と同時に地域への還元という、経済・社会・環境の3側面の好循環が、持続可能なまちづくりにつながっています。入居企業同士や地域住民との交流を促し、開かれた価値・事業創造の拠点を指す『Open Hub』を実現させています。
物流施設としてだけでなく工場やオフィス、研修施設としても利用できるようにし、入居する企業の人材育成のため共同で研修を実施するほか、企業同士が定期的に交流する場を設けていることで、コミュニティをつくり、課題やニーズを共有して新しいビジネスが生まれる共創の場となっています。
さらに、敷地内にはフットサルやバスケットボールなどができるコートが設けられ、共用棟のレストランとあわせて地域住民が利用できるようになっています。施設専用のスマートフォンアプリも用意されており、多くの従業員や子どもも含む地域住民がダウンロードし、盛んに利用しています。
2024年8月2日に開催された「ALFALINK相模原 サマーフェスタ2024」の様子。GLP ALFALINK相模原に入居するテナント企業の有志、地元ローカルラジオ局のエフエムさがみ、商工会議所青年部、日本GLPで実行委員会を組成し、相模原市、相模原市教育委員会、相模原商工会議所が後援して行われ、当日は2,000人超の地域の方々が来場した。出典:日本GLP株式会社公式YouTubeチャンネル
山下PMCが支援する都市創造
今回、自社が取り組むプロジェクトを含む事例をご紹介しました。当社は施設建築のPM/CMからスタートしましたが、近年、お客さまからのご相談で増えているのは、まちづくりをセットで考える施設づくりであり、単なる建築プロジェクトの管理にとどまらず、都市全体の価値を高めるための総合的なアプローチを実践しています。山下PMCは、その先進的な手法と確かな実行力「Cutting-edge Services」を示し、これからも地域社会の発展に貢献し続けます。
・北海道苫小牧市で9月20日~10月15日に自動運転バスを実証運行 https://www.ypmc.co.jp/info/news/19301/
・東日本旅客鉄道 中央ラインモール https://www.ypmc.co.jp/works/2129/
次回の「The Report」は、山下PMC 深瀬 章子がお届けします。