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The Report #02 非サプライチェーン企業がTCFDに参画したら?~ゼロカーボンへの道・前編 ~

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ESG経営の一環として、ゼロカーボンへの取り組みは喫緊の課題となっています。しかし、非製造業など、自社のサプライチェーンを持たない企業にとって、CO2削減の明確な指標を開示し、達成に向けた道筋を描くのは容易ではありません。

山下PMCは施設建築・運営のマネジメント会社ですが、ゼネコンや設備メーカー、インフラ会社とは異なり、建築生産における直接的なサプライチェーンでのCO2の排出はありません。

そこで今回は、山下PMCの阿久津太一が、非サプライチェーン企業がどのようにゼロカーボンに向けた取り組みをしているのか? 社内の取り組み事例をご紹介します。

TCFDに名乗りを上げて自らにプレッシャーを

事業者が行う原材料調達、製造、物流、販売といった、利用者に製品が届くまでの一連の流れをサプライチェーンと言います。工場やプラント、農園など生産に関わる施設や場所を所有している業界、運輸・物流などの大量の輸送機器を用いている業界、飲食やホテルなどのサービス業界はゼロカーボンへの取り組みを可視化しやすく、消費者や株主などのステークホルダーにとっても納得度の高い説明が可能です。

たとえば、とある食品メーカーのサイトを覗いてみると、再生可能エネルギーの活用、共同配送やモーダルシフト(トラックから鉄道への変更)、環境負荷の小さい原材料を調達するグリーン調達など、私たちが「地球に優しい!」と直観的に理解できる取り組みが紹介されています。

トラックによる貨物輸送を鉄道や船舶に変更することで、環境負荷の軽減と同時に輸送の効率化にもつながる。Photo:PIXTA

もちろん、PM/CMとしてお客さま企業の省エネや環境対策を支援してきた私たちは、、自社内の取り組みに鈍感だったわけではありません。印刷用紙を再生紙に切り替えたり、来客時の飲料水をペットボトルから紙のパッケージに変えたり、働き方改革を徹底し土日祝日のオフィスの電力消費量をゼロにしたり……。できることから地道にコツコツと、身の回りのことから始めていました。

そうは言っても、私たちを含む非サプライチェーン企業は、提供できるネタ探しに苦労しているのではないでしょうか?

私たちがゼロカーボンに向けた、より現実的なアクションにアクセルを深く足を踏み込んだのは、2023年12月の「TCFDコンソーシアム」への参画とその宣言です。

▼山下PMCが「TCFDコンソーシアム」に参画(ニュースリリース、2023年12月28日)
https://www.ypmc.co.jp/info/news/19951/

2023年10月時点で日本の企業の1,470社※1が賛同の意を示すTCFDコンソーシアムへの参画は、ESG経営、エシカルを標榜する企業にとって、もはや必須条件とも言えます。

私たちは、TCFDコンソーシアムへの参画・宣言というアクションによって、自らにプレッシャーをかけ、ゼロカーボンへの姿勢と成果を公にすることを選びました。

横断的に取り組むゼロカーボンへの道

TCFDコンソーシアムは参画したらそれでOKというものでは決してありません。参画企業は、TCFDのフレームワークに基づき、気候変動によるリスクおよび機会が経営に与える財務的影響を評価し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示する責任があります。

それぞれ、気候変動が起こる前提の世界観の中で、企業の企業戦略、強靭性の開示が求められます※2

ガバナンス 気候関連のリスクと機会に関する組織のガバナンスを開示する。
戦略 気候関連のリスクと機会が組織の事業・戦略・財務計画に及ぼす実際の影響と潜在的な影響について、その情報が重要(マテリアル)な場合は開示する。
リスクマネジメント 組織がどのように気候関連リスクを特定・評価し、マネジメントするのかを開示する。
指標と目標 その情報が重要(マテリアル)な場合、気候関連のリスクと機会を評価し、マネジメントするために使用される指標と目標を開示する。

もちろん、いい加減な指標と目標では許されませんので、私たちは、部門横断型の「サステナビリティ推進委員会」を組成し、チームとして実効性の高い計画づくりに着手しました。委員会には電力やガスなどの省エネ技術に精通した専門家だけではなく、環境問題に関心をもつ新卒1~3年目の若手社員、まだ今ほど環境問題への関心が高くなかった時代からサステナブルな施設建築・運営の提案を行ってきたベテラン社員まで、さまざまな属性のメンバーがいます。あえて価値観を分散させることで、ゼロカーボンへの道という、険しい道のりをわくわくするような旅にしていきたいと考えています。

GHGとは温室効果ガスを意味します。TCFDの提言では、GHGプロコトルに即した方法で、GHGの排出量を算出します。Scope1、Scope2、Scope3の3つのフェーズに分けて、GHGの排出量を算出し、現状を把握し、将来の目標を定めることが推奨されています。

分類区分 内容
Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope2 他社から供給された電力や熱、蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

私たちは、サステナビリティ推進委員会および外部の有識者も交えて議論を重ね、GHGの算出を行い、2024年6月、具体的な数値を用いて目標を開示しました。

▼TCFD提言に基づく情報開示(ニュースリリース、2024年6月19日)
https://www.ypmc.co.jp/info/news/20730/

Scope3、具体的シナリオ作りの難しさ

山下PMCは、Scope1、2におけるGHG排出量削減方針を策定し、2050年までにネットゼロ達成を目標とし、中間目標として2030年までにScope1とScope2(電力由来)における排出量をゼロとしました。

ゼロカーボンに向けたGHG削減活動としては、Scope1の排出量ゼロを目標とする社用車のEV車への移行施策、ならびに事業所における再エネ電力メニューへの切り替えによるScope2排出量の削減施策を検討・計画しています。

そして、2050年の目標は、SBT(Science Based Targetsの略。企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」の指標のひとつとなる国際的なイニシアチブ)※3のシナリオ分析や、他の企業の動向調査をもとに設定するのですが、具体的な施策の形にするためにはまだまだ課題が残されています。

今後期待される技術革新は、電力由来以外のエネルギーの脱炭素化(グリーン水素利用・バイオマス利用・e-メタン※4など)、ネガティブエミッション技術※5(CCUS、DACCSなど)などがありますが、これら技術動向を把握し、各企業にあったものをどのように採用するのか、また、短期ではなく、中長期的視点でライフサイクルとしてCO2排出量を考える必要があると感じています。

※1:日本のTCFD賛同企業・機関(METI/経済産業省)
※2:FINAL-TCFD-2nd_20220414.pdf (sustainability-fj.org)
※3: SBT_syousai_all_20210810.pdf (env.go.jp)
※4:027_03_01.pdf (meti.go.jp)
※5:007_03_02.pdf (meti.go.jp)

山下PMC 環境・運営推進本部 2部サステナビリティ戦略部 部長 阿久津 太一

次回「The Report」#03 ゼロカーボンへの道・後編も、山下PMC 阿久津 太一がお届けします。

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