The Report #01 情報通信設備はいつ更新するのが正解?
2024年6月より、山下PMCのマネジャーが、施設建築・運営マネジメントの最前線についてお伝えする「The Report」の連載を始めます。マネージャーそれぞれの得意分野、経験値をもとにテーマを設定し、建設業界以外の方もスラスラ理解していただける優しい語り口にしています。私たちのコアコンピタンスであるCutting-edge Servicesのエッセンスを凝縮したレポートをぜひご一読ください。
フリーアドレス・オフィスの実現
新築の工事を行う際に、建築・空調・衛生・電気に加えてIT等の情報通信工事も必ずと言っていいほど必要な工種となってきている。その中で、更新修繕計画を考える場合、情報通信工事については、純粋な物理的な劣化に伴う更新とは異なる基準で投資回収判断を行うことが重要だ。
「The Report」初回では、山下PMCの旭 翔一がその判断基準や考え方の参考になる情報をお伝えする。
1990年後半~2000年にかけて、オフィスワークには、コンピュータとインターネット接続が大前提となっている。コンピュータの処理能力向上に伴って、デスクトップパソコンだけではなく携帯可能なノートパソコンでも一定以上の仕事ができるようになったこと、無線通信の標準規格ができ、通信品質の安定化が確保できたこと。
これらの業務環境の変化にともない、建築的にも固定席での業務からの脱却が可能となった。フリーアドレス・オフィスが実現できているのは、コンピュータとネットワークの技術進化による貢献が大きいのである。
直近では、コロナ禍によるWeb会議の需要増加が記憶に新しいと思うが、メールやブラウジングとは異なり、連続的に大容量の通信を行う必要があるため、ネットワークの通信速度だけではなく、「安定性」への要求が高くなっていった。
また、1人が、コンピュータやスマートフォンなどの通信機器を1端末以上所持していることが当たり前になっており、無線通信の接続数についての認識も改める必要性が出てきている。
“劣化”への対応ではなく“向上”のための投資
このように、たった数年間だけでも社会需要に合わせて通信環境は大きな変化を余儀なくされてきている。では、いつ、どこを目掛けて情報通信設備の更新を行っていくかという点は判断に迷う部分ではある。
この時に、建築などの中長期修繕計画のような物理的劣化による修繕更新と同じようには考えず、機能の追加や性能向上を伴う投資という考えを提唱したい。
これまでに言及した通り、情報通信工事において機能維持はほとんどなく、社会の変化に伴う機能向上、もしくはその先を見据えた設備投資に他ならないからである。
概念的に述べるとすれば、通信設備のハード面の改修は、内装改修に考え方が近いのではないだろうか。時代の変化、社員からのニーズ、もしくは、来訪者などへのホスピタリティ向上のため、建築を修繕するのではなく、新しい環境を整えるという考え方である。
投資による効果は見えにくい部分にはなるが、生産性向上への寄与は十分に期待できるだろう。
ITを導入する目的
このように、目まぐるしく変化する通信環境の整備を建築的な考え方に落し込んでみたが、いかがだっただろうか。
ITやAIの導入によって、業務の合理化が加速し、これから人が注力すべき分野はどこにあるのか? 本気の議論が深まっている。
技術の進化を好機ととらえ、自分たちにしかできない仕事の本質を見つめることで、後まわしにされてきた仕事の割り振りを変えて、創造的な事業展開ができれば、もっと面白い社会が待っているだろう。
私たち、山下PMCのマネジャーは、施設建築・運営マネジメントを通じて、お客さまの課題解決を支援しているが、新たなITの導入によって何を達成したいのか? 拙速主義に陥らず、お客さまと一緒にそもそもの部分に立ち返ったり、中長期の視点で目標設定をサポートしたりする役割も求められていることを日々感じている。
次回のレポートは、山下PMC 阿久津 太一がお届けします。