文教大学 東京あだちキャンパス
キャンパスとまちづくりの再編による価値向上の相乗効果
文教大学は、2021年4月、東京あだちキャンパス(東京都足立区)を開設しました。大学経営の新たな改革を目指し、既存の2キャンパスとの3キャンパス体制のスタート。大学誘致は、地域の自治体や住民からの大きな期待も背うプロジェクト。大学の思いと地域の思いを一つにする「開かれた大学」の誕生は、まちに変化を生み出しています。
文教大学 東京あだちキャンパス
文教大学にとって第3のキャンパス。開設時に湘南キャンパスから国際学部と経営学部が移転。文教大学全体を一つの総合大学として発展させる3キャンパスの中心的な活動拠点であり、さまざまなイベントを行う場、地域との連携強化を図る拠点を目指す。
話し手のご紹介
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本田勝浩さん
学校法人 文教大学学園
常務理事 法人事務局 局長 -
東 誠さん
学校法人 文教大学学園
法人事務局 局次長
管財部 部長 -
三岡 裕和
山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進部門
チーフプロジェクトマネジャー -
佐藤 誠一
山下PMC
事業創造推進本部
チーフプロジェクトマネジャー -
渡辺 啓太
山下PMC
事業創造推進本部
ヴァイスプロジェクトマネジャー
都心回帰だけではない
新キャンパスに求めたもの
一緒に汗をかく、思いを共有することで、同じゴールを目指すチームになった
既存の埼玉県越谷市の「越谷キャンパス」、神奈川県茅ヶ崎市の「湘南キャンパス」に加え、新キャンパス開設に取り組まれた経緯をお教えください。
- 本田
- 国内の18歳人口のピークは1992年の約205万人。現在は約107万人と30年間で半減しました。都内・近郊の大学は、学部の増設やキャンパスの都心回帰など、90年代から学生確保に向けた変革を進めてきました。一方、文教大学はそうした動きが若干遅く、相対的な競争力低下が懸念事項でした。
特に湘南キャンパスでは入試希望者の減少傾向が続きました。周辺の自然環境、学内の設備は素晴らしいのですが、二つの最寄り駅からバスで20分という立地。さらに神奈川県西部の人口減が影響しました。 - 本田
- 本学でも厳しい時代を自覚し、中期経営計画の策定を行いました。第一次(2009〜12年)、第二次(13〜16年)を経て、既存キャンパス維持と再開発、さらに新キャンパスの開設で3拠点化による学内連携の強化と魅力向上を図ることとなりました。
そうした中で、東京都足立区の花畑団地(1964年入居開始)の再開発に取り組むUR都市機構からキャンパス用地の打診があったのですね。
- 本田
- 新キャンパスの条件は、3万3000㎡規模の用地、最寄り駅から徒歩圏内、越谷キャンパスと1時間以内で移動可能なこと。この土地は、元は団地棟があった場所で2区画に分かれ、足立区の道路が通っていました。その道路を区が払い下げ一体化させることで4万9000㎡の広大な土地が実現。理想的な条件が揃いました。地域の再開発に取り組む足立区の強力な支援が期待できることも、ここに決定した大きな要因です。
土地売買契約が2015年3月。山下PMCの参加は2016年8月から開学まで5年間に及びます。外部のPM/CMがプロジェクトに参加することで期待したことは?
- 東
- プロジェクトは管財部が中心となって進めましたが、キャンパス内の校舎の建替の経験はあっても、更地からキャンパス全体をつくり上げることは未経験でした。
- 本田
- 本学としても、この規模感のプロジェクトは、1985年開学の湘南キャンパス以来のこと。学内には、その経験を知る者も専門の技術職もいません。施主としての要望を設計者・施工者に伝える役割が必要と考えました。その時期に理事の1人が、コンストラクションマネジメントという存在を知り、山下PMCさんに協力を依頼しました。
- 三岡
- 5年間にわたり協力させていただき、常に感じていたのは、このプロジェクトの重みです。施主である学園がキャンパスに懸ける思い。それは施設をつくるための技術面だけにとどまらない、社会的な背景も理解し、翻訳し、このプロジェクトに関わる者すべてが共有しなければいけない。そのために、大学の学生や職員、さらには地域に与える新しい価値とは何かを、一緒に考えていくことから始めました。
- 本田
- 我々だけではできなかったことに、実施設計を設計事務所と施工会社のJV(共同企業体)にしたことがまず挙げられます。実施設計からのJV体制ができたことで、大学の思いを実際の施設づくりに反映しやすい環境が整いました。
- 佐藤
- JVの体制づくりを念頭に設計者をどう選ぶのか、そのためにはどのようなスキームが一番いいのか。それを最初に整理できたことは、「結果を出せる」体制としてチームが機能した大きな要因でした。
- 三岡
- チームが機能するためには見通しの共有も大切です。最初に開設までの5年間を見通せるマスタースケジュールをつくりました。行政との調整、発注者の意思決定に関わるすべてのマイルストーンを設定し、いつ、誰が関わり判断するのかを見える化しました。
- 渡辺
- さらに大学側の意思決定がとても早く、次々に結果を積み重ねることができた点も大きかったですね。
- 本田
- 全員で同じゴールを目指すプロジェクトチームとして開設まで取り組むことができました。途中、コロナ禍でコミュニケーションが制限されることになりましたが、それ以前にチーム連携が強固になっていたので乗り越えることができました。
- 東京あだちキャンパスでの経営学部の授業風景。
- 地元住民にも人気の食堂棟にあるカフェラウンジ。毛長川沿いの自然を窓外に眺める開放的な空間になっていて、野外テラスもある。カフェ以外にも食堂棟には2フロアに学食がある
- 東京あだちキャンパスで最も大きな講義室。外部向けの講 演会、学会、シンポジウムでの活用を想定してつくられた。
プロジェクトに関わったマネジャー
関連する用途
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教育/文化/アート
少子化が加速する社会において、学校づくりも新たな局面を迎えています。老朽化の進む学校施設を、品質などの標準化を図りながら整備したり、場合によっては民間からの活力を導入する仕組みや、施設の統廃合を視野に入れた検討も行わなければなりません。私立学校では学生獲得戦略に基づいた、ブランディングや魅力ある施設づくりも重要です。また文化・アート施設では、多様化する社会のニーズに応えるため観賞を主眼に置いた施設から体験型、食事や買い物も楽しめる複合型やリアルとバーチャルの融合への対応など、施設の役割・機能の転換が進みつつあります。