あのとき言われた一言がずっとトゲのように心に突き刺さっている──そんな言葉が誰しもあるもの。しかし、自分のちっぽけなプライドを捨て去ることができれば、その言葉は未来を開くカギになるかも。
- キノシタ
- 建築のプロジェクトマネジメントに特化したコンサルティング会社の、こう見えてもトップコンサルタント。
- タスクくん
- キノシタも所属する草野球チームで4番でサードを守るチームの主力選手。菓子メーカーに勤務する35歳の中堅ビジネスパーソン。
- タスクくん
- この間、上司に意見されたんですよね。「キミは私が言ったとおりに手堅く仕事してくれるが、たまには意外性も見せてくれよって」
- キノシタ
- へえ。意外性って言われてもねえ。きちんと仕事しているのに不満を言われたんじゃ、腹も立つよね。
- タスクくん
- そこですよ。でもぐっと我慢したんです。腹を立てたら負けでしょ。ついこないだまでの僕なら、「きちんと仕事をやってて、なぜ意見を言われなきゃならないんですか」って食ってかかったかもしれませんが、それじゃ大人気ないなって。
- キノシタ
- へえ? だいぶ人間がこなれてきたみたいじゃない。
- タスクくん
- 「僕の意外性は簡単には見れませんよ。見物料高いですけど、それでも見たいですか」って、冗談で返しましたよ。
プライドの出し入れができると仕事はラクになる
プライドを持って仕事をしようと誰もが考えます。自分のパフォーマンスが受け入れられて、上司やクライアントお得意さんに認められるのは嬉しいことですし、それが励みになってさらに仕事への意欲も増大します。しかし、逆に自分の仕事がさほど認められず、逆に難癖をつけられたりすると、プライドは傷つき、不愉快になったり、相手に抗弁したくなったりするものです。
そもそもプライドは使うには厄介な代物で、自分の外にプライドを向けると、自分の心を守るバリアの働きをしてしまいがちです。上司の正しい忠告も、同僚の的を射た意見も、プライドが邪魔して素直に聞くことができません。
今回のタスクくんは、プライドを外に向けることなく、自分自身にそのベクトルを向けたようです。つまり、なぜ上司は自分に意外性を求めるのかといった問いを素直に考えたらしい。上司の言葉を受け止めて、自分はどうすればいいのかを模索し始めました。
直接の返答こそ冗談めかしましたが、「どうも、淡々と仕事をしすぎたようで、できると思ったら少し冒険することも必要みたいだ」と自己分析していました。おそらくタスクくんはいまごろ「意外性のある」アウトプットを出すタイミングを見計らっているはずです。
ビジネスの現場での不愉快な仕草や否定的な態度は問題外ですし、自身のプライドを守るためだけとしか見られない抗弁には益することがないのは明らかです。
一方で、何のわだかまりもなく、さっぱりとした気持ちで、忠告を受け入れる謙虚な姿勢は、周囲自ずと相手に伝わるものです。もしも目の前の相手に伝わらなかったとしても、組織やプロジェクトの誰かには必ず伝わることでしょう。その気丈さは好感を持って受け入れられ、仕事上の人間関係を良好なものに導いてくれるはずですでしょう。
プライドを自分の心を守るバリアには使わない。それが、仕事で成長するためのコツではないでしょうか。
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株式会社山下PMC
取締役 常務執行役員 / CIO(イノベーション推進責任者)
木下雅幸
1968年、茨城県水戸市生まれ。
神戸大学大学院工学研究科建築学専攻修了。建築設計事務所大手の山下設計で超高層オフィスビルなどの大型プロジェクトの設計を手掛ける。その後、三井生命保険の不動産部不動産投資グループで数多くの投資ビル全体のCRE戦略の構築やアセットマネジメント全般に従事。2010年に山下PMCに入社し、多数のプロジェクトに関わる。現在は取締役 常務執行役員 / CIO(イノベーション推進責任者)の立場で、クライアントの参謀として未来を描き・実現するビジネスモデル創出型のサービスを展開。
プレゼンテーションの勝率9割の実績を持つ、山下PMCのトップコンサルタント。
主な受賞に、グッドデザイン賞、日本コンストラクションマネジメント協会CM選奨ほか。