「ちゃんとやってるけど、どこか物足りない仕事相手」。そんな微妙な評価を下されてしまう理由とは?
木下雅幸の3分間マネジメント 「ちゃんとやってるけど、どこか物足りない仕事相手」。そんな微妙な評価を下されてしまう理由とは?
自動車メーカーに勤務する晋作さんは野球チームの最古参。現在はヘッドコーチを拝命するも、最近は試合に参加するよりは、飲み会への参加が生きがいになっています。御年55歳の熟年ですが、仕事の悩みは尽きることがなく、今日もキノシタに何やらこぼしています。
- キノシタ
- 建築のプロジェクトマネジメントに特化したコンサルティング会社の、こう見えてもトップコンサルタント。
- 晋作さん
- 自動車メーカー勤務、開発部長を務める。妻1人に娘2人、孫3人。草野球チームでは8番バッターでライトを守る。
晋作さん
キノシタ
車の内装デザインは新車をつくるときの重要テーマだって聞きます。その部分をその会社に任せるかどうかは、晋作さんにとっては大きな問題ですよね。
晋作さん
そう。その会社はいままでにない斬新なデザイン提案をしてくれたし、社内でもその提案が受け入れられたんだから、結果としてはOKなんだけどね。
キノシタ
私も同じような経験をしています。ちょっとしたボタンの掛け違いかもしれませんよ。
“アウトプット”だけでなく“プロセス” を示すことで説得力が増す
「ちゃんとしたアウトプットだと理解できるけど、なんだかもの足りない」晋作さんの不満はそこにあります。なぜこうした問題が起こるのでしょうか。
部品会社には、新しい技術と素材を使って、高級感を訴える自動車内装部品を制作するというミッションが与えられました。
コストをかけていいのであれば解決は比較的容易ですが、当然、コスト圧縮といった課題もあって、その開発には困難があったと思われます。また、新規技術を採用することで、いままで経験したことがない不具合に遭遇することもあったでしょう。
さらにいえば、デザインの方向性に関して、ホントは発注者である晋作さんともっと打合せの必要があったが、ちょうど晋作さんは海外出張で出かけていた……云々。
今回の部品は、そうしたさまざまな問題をクリアした結果生まれたものでした。
ところがその部品会社の担当者は口べたで、折り触れてそうした“プロセス”を語ることはなく、淡々とアウトプットだけが晋作さんに提示されたようです。晋作さんはそこにもの足りなさを感じました。
ある課題解決を行おうとする場合には、かならずその結果に至るプロセスがあるはずです。アウトプットを示すときには、なぜそうなったか、プロセスを同時に語ることで、相手の納得度は高まるのです。
私の経験でも、提案する内容にそれほどの新規性はなかったけれど、なぜその提案に至ったかのプロセスをていねいに説明することで、相手は大いに納得し、その提案を受け入れたということがしばしばあります。
自分は一生懸命やっているんだけど、相手がどうも納得していない──そんなときは、先方とプロセスを共有することで改善できることがあります。
一方で、晋作さんの方からも、たとえばこんなデザインが望ましいといった希望を機会あるごとに部品会社に伝えるなど、普段からコミュニケーションを心がけていたら、だいぶ様子が変わっていただろうとも思います。
満足いく仕事には、必ず円滑なコミュニケーションがあることを肝に銘じましょう。
「3分間マネジメント」の続きはnote「続・3分間マネジメント」で連載中です。 木下著「ムダな努力ゼロで大成長 賢い仕事術」も発売中!
新しい内装部品会社とのつき合いがどうもしっくりこないんだよ。頼んだことはきちんと守ってくれているし、納期だって問題ない。でもそれだけ。「仕事はちゃんとやっています」感は醸すんだけど、肉薄してくるものがないというか。いっしょにモノづくりするという興奮が伝わってこないんだよね。