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発注者目線の仕事術

専門分化が進むほど重要度増すマネジャーの存在 2

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自然になじむ場をつくる

マネジメントスキルには、スケジュール管理はもちろん、その前提となる協力会社や担当者間の関係づくりも含まれる。合意形成に手間取るような状態では、プロジェクトのスムーズな進捗は望めないからだ。

例えば当社がコンストラクションマネジメント(CM)業務を担った総工費1000 億円以上の研究所のプロジェクトでは、発注区分が80以上に及んだ。多数の工種や工区に分割され、設計事務所や建設会社、設備会社の設計者が入り混じっていた。定例会議や分科会だけでスムーズに合意形成を進めるのは不可能に近いと、早期に判断した。

そこで提案したのは、ワンフロアを見渡せる開放的な設計室だ。使われていなかった工場を改修して利用した。各社からは当初、プライバシーがない空間に対して総反発を受けた。だが、いざ設計が始まると、いつも同じ空間に同居していることで意思疎通が円滑になり、各工事区分間の調整も想定より速やかに完了した。このように現場の職場環境をひと工夫するだけでも、大きな効果がある。

(3)のヒューマンスキルの要素には、「礼節」や「第一印象」が含まれる。多くの関係者と協力しながらプロジェクトを推進するには、礼節が不可欠なのは言うまでもない。ではなぜ第一印象が重要なのか。

人間が相手を受け入れるか否かといった本能的な判断は、直観を頼りにする傾向がある。その印象が良ければ、その後も安心感や信頼感を抱いてもらえる可能性が高い。だからこそ、直観が働く最初の5 秒に意識を集中させ、常に笑顔で、人を迎え入れるような振る舞いを心掛けたい。

こうした技術は、生まれ持った性質によるところも大きいが、普段から意識して訓練を積むことで、習得することも十分可能だ。 私自身、礼節や笑顔を常に意識するようになったのは、当社に入ってからだ。設計事務所に在籍していた頃は、自分は技術者だという意識が頭の片隅にあり、相手に与える印象については、現在より無頓着だったように思う。実践を通じて少しずつ獲得すればよいだろう〔図3〕。

スキルを習熟して武器に

[図3] スキルを習熟して武器に
マネジャーには「テクニカルスキル」「マネジメントスキル」「ヒューマンスキル」 がバランスよく必要。 これらを意識しながら経験を積むことで、スキルアップの早道となる

そして3つのスキルとは別に必須と捉えているのが、「考え抜く力」だ。私は採用面接の際に必ず、「誰にも負けないものは何ですか」と聞く。何かを究めた経験は、考え抜く力があることの1 つの証明だ。発注者が100 人いれば、解決すべき課題は100 通りある。複雑な課題に対する解決策を導くためには、徹底的に考え抜く必要がある。何かを究めた経験は、さまざまなプロジェクトの課題を解決する思考へと発展可能だ。

マネジメントで職域を開拓

近年は、データセンターや研究施設など、さまざまな機器が建物と複雑に絡み合う施設が増えている。熱環境や省エネ、セキュリティー系の性能についても、発注者の要求水準は上がっている。

形になっていない発注者の要望を引き出し、関係者と調整し、発注を整理していくには、前述の3つのスキルをフル活用していく必要がある。複雑なプロジェクトをハンドリングできるマネジャーの需要は、幅広い施設計画で高まっている。

近年、建設会社や設計事務所、不動産会社などに、PM・CM部門を置く会社が増えている。設計業務の延長として手掛けてきた業務をPM業務として位置付けし直し、設計料とは別の形でフィーを獲得する方法を模索している会社もある。

設計業務は図面という成果物が要求されるため一定の時間がかかり、工事費に準じた相場も決まっている。対してPM業務は比較的相場が確立されておらず、フィーの組み立てにも自由度がある。能力や工夫次第で、1 人当たりの売り上げ効率を上げることも可能だ。だがそのためには、発注者の事業への貢献がより厳しく問われるということも、忘れてはならない。

POINT

  • 大規模で複雑なプロジェクトが増加し、マネジャー需要が高まっている
  • 共同作業を推進するには対人間的なスキルが必須
  • ●構成・本編イラスト:ぽむ企画  ●企画:納見 健悟
  • 本記事は、『日経アーキテクチュア』2014年4月25日号に掲載されました。一部内容を改変し、掲載元の許可を得て、掲載しています。

・株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツは、2018年4月1日に、株式会社山下PMCに社名変更しました。
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