山下PMC

お問い合わせ

施設にまつわる
“モヤモヤ”解決マガジン

MENU 開く 閉じる
発注者目線の仕事術

コスト増にも対応できる 性能発注への関心高まる 2

  1. ホーム
  2. 施設参謀マガジン
  3. 発注者目線の仕事術
  4. コスト増にも対応できる 性能発注への関心高まる 2

「提案を引き出す発注の工夫

発注方式の違いは、建物のアウトプットにも影響を及ぼす〔図2〕。

発注方式が変わればアウトプットも変わる

[図2] 発注方式が変わればアウトプットも変わる
設計・施工分離方式では発注図書の通りに、設計・施工一括方式は大まかな条件で建設会社に一任する。性能発注を導入することで、設計者や施工者の工夫を引き出せる

設計・施工分離方式は、いわば設計事務所が用意した緻密なレシピ通りに建物をつくる手法だ。仕様通りの施工が要求される建設会社にとっては、提案の余地が少ないなかでコストやスケジュールの調整が厳しく求められることになる。一方、従来型の設計・施工一括方式は注文が大まかで、建物の形状やプロセスの選択の多くは建設会社任せになる。品質やコスト、スケジュールのチェック機能が働きにくい場合もある。

性能発注型の場合は、まず発注者がどんなものが欲しいのか、きめ細かく与件を整理する。設計者や施工者の提案や工夫が盛り込まれ、かつ発注者のイメージからぶれないものが出来上がりやすい。

技術力や創造的な提案を引き出すために我々がよく行うのは、細かいプランや構造、工法などは指定せず、要求性能だけを設定することだ。例えばプランについては、必要諸室の関係性だけを決めておく。発注者のニーズを大きく外した提案が出てこない境界を見極めて、最低限の守るべき枠組みをつくり、残りは設計者や施工者の提案に任せる。このさじ加減が、性能発注の肝とも言える。

その一方で、各種工事の境界は明確に線引きしておく。例えば外構やネットワークの設備、セキュリティー系の設備やブラインドの取り付けなども建築工事に含めるのか、別途工事なのか、あらかじめ明確にしておく。金額の負担を巡るトラブルを防ぐためだ。

幅広い提案を許容する

性能発注を採用すると、設計・施工分離方式ではまず想像できないような提案が出てくることもある。私がプロジェクトマネジャー(PMr)を担当した関西地方の高層複合オフィスビルの建設プロジェクトでは、こんなことがあった。

都心部の、近くに川が流れる地盤に超高層を建てる計画で、課題は基礎工事だった。建設会社から出てきた提案は、土や水を遮るための山留めと、建物を支持する杭を一体化させる技術を採用し、施工の工程を合理化することだった。

このように初期段階から建設会社が参加していると、建設会社のみならず、専門工事会社などの持つ細分化された技術も引き出しやすい。デザインに力を入れたいときは、設計事務所に基本計画や設計監修を担当してもらうこともできる。世の中に存在する生産システムを、適材適所で組み合わせる仕組みだ〔図3〕。

性能発注で得意な能力を引き出す

[図3] 性能発注で得意な能力を引き出す
性能発注では、コンストラクションマネジャー(CMr)を通して、建築技術者の得意な能力を引き出すことができる

スケジュール感覚を強く持つ

性能発注が効力を発揮するのは、規模が大きく複雑なプロジェクトで、かつ今までにない新しい使い方を求めるような場合だ。震災復興や五輪関連施設など、工期短縮への要求が強い場合にも有効だ。

性能発注型では建築技術者はスケジュール管理の意識を強く持つ必要がある。工期短縮がメリットであることもあり、設計、施工それぞれのスケジュールがタイトになる場合が多い。従来の方法に慣れた建築技術者は、戸惑いを感じることもあるようだ。

発注者が性能発注を支持するのは、金額や工期が早く決定できるからだ。資材や労務の規模を早期に見通せるメリットは大きい。職人不足の折、省力化工法などの提案も引き出せる。

その背景にあるのは、発注者がプロジェクトの進め方そのものに変革を求めているということだろう。発注方式がどうであれ、建築技術者がそうした発注者ニーズの変化に応えなければならないという状況は揺るぎない。

POINT

  • 建設会社の技術力を活用し、発注者の要望を合理的に達成する「性能発注」への関心が高まっている
  • 求められているのは建設費や工期の早期確定とリスク回避。建築技術者に必要な能力が変わりつつある
  • ●構成・本編イラスト:ぽむ企画  ●企画:納見 健悟
  • 本記事は、『日経アーキテクチュア』2014年3月25日号に掲載されました。一部内容を改変し、掲載元の許可を得て、掲載しています。

 

・株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツは、2018年4月1日に、株式会社山下PMCに社名変更しました。
・記載されている内容は、掲載当時の情報です。予告なく変更する場合もございますので、あらかじめご了承ください。
・記載されている会社名、商品名は、各社の商標、または登録商標です。なお、本文中では™、®マークは基本的に明記していません。

おすすめ記事

  1. ホーム
  2. 施設参謀マガジン
  3. 発注者目線の仕事術
  4. コスト増にも対応できる 性能発注への関心高まる 2