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参謀レポート

設備投資効果を高める「経営」視点と「保守管理」視点の一体化(後編)

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経営と保守管理が一体となった設備改修の実例

私がPM/CMを担当した設備改修事例のなかから、経営者と施設管理者の双方の視点を取り込み、改善効果があったアプローチを紹介します。

竣工後20年を経過した某商業施設より、既存の熱源機器を寿命が尽きるギリギリまで保守をして使い続けるべきか、あるいは今のうちに更新すべきか、という検討を依頼されました[図2]。

①源機器を継続使用するかどうかの検討
事業主からの依頼により、20年が経過した熱源機器を寿命まで保守しながら継続使用すべきか、今すぐ更新するべきかを検討した。その結果、更新することを推奨した。
しかし熱源機器だけを更新したところで、空調システム自体の効率が悪い限りベストな解決とは言えない。そこで②③の検討を行った。

②空調システム効率化の検討
蓄熱槽を用いた現状の空調システムを調査したところ、効率が悪いことが判明した。これを改善するため、大きな投資が伴うが、高効率で保守が容易な熱源機器を用いた空調システムに変更するという提案を行った。

③経営的視点からの検討
今後20年間にかかる費用を比較した結果、現状の空調システムを継続利用すれば初期投資額は小さいが、変更する場合よりもライフサイクルコストは大きくなることが分かった[図3]。また老朽化した既存空調システムを使い続けることによる営業へのリスクも浮上したため、新システムへの変更を提案した。

[図2] 竣工後20年が経過した商業施設の設備改修CM例

この課題に対して、まずは寿命まで使い続けた場合に必要となる年間保全費をまとめました。保守の手間がかかるタイプの熱源機器であったため、寿命までの保全費を積み上げると新しいものに更新できるほどの額が必要になることが判明しました。

さらに商業施設という建物用途上、熱源機器が故障して空調機能が停止してしまってはテナントに迷惑をかけることになるため、故障してから更新という事後対応は許されません。寿命を過ぎればいつ故障するかわからない状態で使い続けることになり、膨大な保全費をかけたところで経営上のリスクが高くなってしまいます。よって、既存熱源機器は更新するという結論に至りました。

しかし、現状と同じ熱源機器に更新するだけでは、わざわざ私たちが介入しなくても済むことです。保守管理業務や費用について経営者と施設管理者が常日頃抱いている課題点を整理し、双方の課題を解決できる提案を行うことが、設備改修におけるPM/CMとしての重要な役割だと思います。

長期的視点での設備投資判断を

そこで私たちはまず、現状の空調システム自体の効率性について検討することにしました。この商業施設では蓄熱槽を用いた空調システムを採用していましたが、検証の結果、非常に効率が悪い運転となっていることが判明しました。そこで私たちが提案したのは、現状の空調システムの使用を中止し、高効率で保守の手間がかからない熱源機器を使った空調システムに変更することでした。保守管理的視点から見て、日常の管理業務を効率化できる選択です。

これは既存熱源機器を継続使用あるいは単純に新しくする場合に比べて、当然投資額は大きくなります。しかし長期的な視点から検証したところ、その投資額を保全費や光熱費の縮減分により約7年で回収できるという結果になり、経営的メリットがあることがわかりました[図3]。加えて、この蓄熱槽も竣工以来未更新であり、更新工事を行うためにはテナントの営業停止が必要になります。リスク回避という点からも、蓄熱槽の使用を中止し、新しい空調システムを導入することになりました。

[図3] 空調システムのライフサイクルコストの比較

[図3] 空調システムのライフサイクルコストの比較

この商業施設の場合、空調システムを高効率で保守が容易なものに変更すると、現状のものを継続使用するよりも初期投資額は増えるが、投資後7年でライフサイクルコスト(修繕・更新費+保全費+光熱費)の収支が改善する。

経営的視点と保守管理的視点は、施設運用において融合が遅れてきた分野でした。しかし、このように経営者と施設管理者が一体となって積極的な設備投資判断にたどりついたことにより、両者にとってメリットが生まれる結果となりました。経営資源として施設の運用方針を検討するのと一体的に、保守管理計画を立案することによって、投資の効果をより高め、合理的な施設運用が実現できると実感しています。

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