プロジェクトストーリー
森ビル デジタルアートミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス(後編)
驚くほど評価が高い魅力的な空間が完成
私たちの思いを受け止めてくれたと感謝しています
―スケジュールの管理についてもお教えください。
- 土橋
- 今回のチームの意思決定がロジカルかつスピーディーなところには舌を巻きました。
- 杉山
- 山下PMCにもうひとつ感謝しているのは、私たちの思いをしっかりと受け止めてくれたことです。特にチームラボは、アーティストとして、「よりエッジが効いた体験が提供できるか」追求しています。それに対し、最後の最後まで寄り添って、スケジュール管理をしてくれました。
- 松本
- 整理整頓、進行管理……。今何をやるべきなのかさえ、私たちには見えていなかった。タスクを整理し、関係者の調整をするだけではなくて、よりよくするための提案もいただきました。本当に感謝をしています。私たちは、エキシビションとして空間をつくってきましたが、常設展示として、年間に何百万人も集め、安全に運営し、楽しんでもらうためのノウハウをもった、森ビルの総合力を目の当たりにしました。
- 杉山
- 互いが補完して、オープンから5ヵ月で100万人もの人が国内外から訪れる魅力的な空間が誕生しました。
―反応はいかがでしょうか。
- 杉山
- 驚くほど評価が高い。私も美術展を手がけてきましたが、「ボーダレス」の特徴は、年齢・性別・国籍を問わないことです。すべての属性を超えて伝わるからだと感じています。
- 松本
- 海外から東京に来てもらうときの目的地になっており、外国人観光客は全体の3割です。
- 土橋
- 民間事業としてのアートという体験を事業化するというのは、ある意味、新しいビジネスモデルになると感じています。
- 杉山
- VRなどの技術が発達し、その場所にいなくても似たような経験ができる時代です。だからこそ、「ここに来ないと体験できない」ことは大きな価値になります。
―「ボーダレス」内に導入したプロジェクターは470台に上り、ギネス記録を申請中と伺いました。
- 土橋
- すべてがコンピューターにつながっており、当初の想定よりも設置スペースをとりました。冷却のための空調を確保するという課題もありましたが、それらの問題も、ミーティングで解決しました。
-
520台のコンピューターが安定して稼働するよう、配置など、設備負荷に配慮した設計を採り入れた。
―作品の最終調整はどのように行ったのでしょうか。
- 松本
- 人が参加することで変化するアートなので、1000人規模の内覧会も実施して、バグが見つかればひとつひとつ修正していきました。すべての作品がコンピューターで制御され、タイムラインで流れています。実は、私たちもどの作品がどのタイミングでどのように出るのか、変わるのか分からない部分も多いんです。
- 杉山
- 作品に没入できるだけでなく、唯一無二、同じ世界が再現できないというのも、「ボーダレス」の魅力です。
- 松本
- 物質から解放されるのは、デジタルアートの本懐でもあります。
- 杉山
- 作品だけでなく、建物もバージョンアップし、今、新しい出口をつくっています。
- 松本
- ボーダレスは施設を使ったビジネスモデルの常識も変えました。まず場所を決めて“仕込む”ところから走り出すということです。
- 杉山
- 今思えば、この完成形は、誰も想像できていませんでした。これからも、面白い事業を行いたいと考えています。そのときはぜひまたご一緒したいです。
- 土橋
- ぜひ、よろしくお願いいたします。
-
チームラボ、森ビル、設計・施工者、内装、PMなどで構成されたチーム。いずれも中核メンバーは20 代後半から30代半ばの若手。
プロジェクト概要
事業主(発注者) | 森ビル・チームラボ有限責任事業組合 |
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施設所在地 | 江東区青海1-3-8 お台場パレットタウン |
施設用途 | デジタルアート ミュージアム |
面積 | 延床面積 約10,000㎡/建築面積 約7,200㎡/ 延床面積 約26,900,000㎡ |
規模/構造 | 地上4階/S造 |
基本設計・実施設計・施工者 | 株式会社大林組 |
内装 | チームラボアーキテクツ株式会社、株式会社丹青社 |
PM業務期間 | 2016年10月~2018年6月 |
PM業務範囲 | 事業性検討、企画、設計、発注、施工 |
PM | 株式会社山下PMC |
■山下PMC担当者
土橋太一、鈴木洋平、又地裕也、吉川大輝、吉森美成、進藤光信
関連する用途
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教育/文化/アート
少子化が加速する社会において、学校づくりも新たな局面を迎えています。老朽化の進む学校施設を、品質などの標準化を図りながら整備したり、場合によっては民間からの活力を導入する仕組みや、施設の統廃合を視野に入れた検討も行わなければなりません。私立学校では学生獲得戦略に基づいた、ブランディングや魅力ある施設づくりも重要です。また文化・アート施設では、多様化する社会のニーズに応えるため観賞を主眼に置いた施設から体験型、食事や買い物も楽しめる複合型やリアルとバーチャルの融合への対応など、施設の役割・機能の転換が進みつつあります。