PROJECT 11

MOA美術館 
リニューアルプロジェクト(後編)

PROJECT 11

これからの時代にふさわしい美術館を目指す

「いいものを作りたい」みんなの気持ちがひとつに


  • 国宝を展示する展示室。写真の「紅白梅図屏風」等を展示する壁面展示ケースでは、高透過低反射合わせガラスを採用。
    ガラスがあることに気づかないほど展示物に集中できる。

モノづくりの時代は終わり、これからはコトの時代を迎える

貴重な展示物を守るために、それぞれの展示台に先進の免震構造を採用した。

日比生:
私も、これまでにない美術館になったと思っています。なかでもガラスの存在を感じさせない展示ケースは圧巻ですね。
内田:
展示物が触れそうに見えて前へと近づくと、思わず頭や手をぶつけてしまうぐらいですから。杉本さんがガラスへの映り込みを防ぐために、黒漆喰の壁を作ると提案したことを採り入れたのでしたね。これは本当に画期的で、これからは美術館、博物館などの展示物にはスタンダードな設備になると思います。
日比生:
ほかに高透過低反射合わせガラスを使っています。つまり映り込んだとしても黒いものだったら、ほとんど見えない。ガラスの存在が分からなくなるわけです。

どの展示室も美術品の鑑賞に適したスペースを確保している。黒漆喰の壁により映り込みを防いでいる。

内田:
おかげさまで、これからの美術館のモデルになれたのではないかと自負しています。単純にものを陳列するのではなく、まるで手に触れているかのように美術品を鑑賞してもらう。何を展示するかだけにこだわらず、どうやって体験してもらうかを重視するのが、これからの時代に必要なことなのです。
日比生:
館長からのご要望で、観光資源のひとつとして地元に貢献できる施設を作って欲しいというのがありました。
内田:
日本において、21世紀型の観光は、ひとつの産業として大きく成長すべきだと考えています。そのためには各地域が、それぞれ活性化していかなくてはなりません。私はMOA美術館を、熱海エリアの観光の目玉にしたいと思っています。MOA美術館に行ってみたいから、熱海へ行く。そんな人の動線を作り、熱海へ貢献したいと考えています。
モノづくりだけに頼る時代はもう終わりました。これからはコトの時代を迎える。そのためにカフェやレストランを作りたいと、私からお願いしました。体験する要素としては、食文化は非常に重要だからです。コーヒーの味までにこだわりました。
日比生:
海を眺めながらお茶のできるロビーがある美術館という館長の視点は、私にとっては大変勉強になりました。
内田:
立場は違っても「いいものを作りたい」という目的のもと、最終的には、みんなが一つになれたことも素晴らしい体験でした。プロジェクトが進むに連れて、意識が変わっていったのかもしれません。
その気持ちの共有が生まれたのはプロジェクトマネジメントという存在が大きかったと感謝しています。

  • 人間国宝・室瀬和美氏による高さ4mの漆塗の自動扉。朱と黒の片身替のデザインは杉本博司氏のアイデアによるもの。

  • 相模湾を一望できるカフェ、四季折々 の景色を眺めながら、自慢の食材を使った料理を愉しめるレストランなど、「食」の楽しみも盛り込んだ。

プロジェクト概要

発注者 宗教法人 世界救世教
建物用途 美術館
PM業務期間 2014年9月~2017年1月
PMr 山下PMC
所在地 静岡県熱海市
延床面積 14,810m2
規模/構造 地下2階、地上4階、PH1階/SRC造
基本設計者 (展示室・ショップ・ロビーエリア・カフェの意匠) 株式会社 新素材研究所/杉本博司+榊田倫之
(その他エリアの意匠、全エリアの構造・電気設備・空調設備・給排水衛生設備) 株式会社 竹中工務店 東京一級建築士事務所
(昇降機設備)三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(セキュリティ)セコム株式会社
(無線LAN) 株式会社クレヨンハウス
(中央監視・自動制御)伊藤設備・イトー計装JV
実施設計者 (意匠・構造・電気設備・空調設備・給排水衛生設備) 株式会社 竹中工務店 東京一級建築士事務所
(昇降機設備)三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(セキュリティ)セコム株式会社
(無線LAN) 株式会社クレヨンハウス
(中央監視・自動制御)伊藤設備・イトー計装JV
デザイン監修者 株式会社 新素材研究所/杉本博司+榊田倫之
照明アドバイザー 株式会社 灯工舎
工事監理者 株式会社 竹中工務店 東京一級建築士事務所
工事施工者 (建築・電気設備・空調設備・給排水衛生設備) 株式会社 竹中工務店
(昇降機設備)三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(セキュリティ)セコム株式会社
(無線LAN) 株式会社クレヨンハウス
(中央監視・自動制御)伊藤設備・イトー計装JV
(漆塗)目白漆芸文化財研究所/室瀬和美(人間国宝)
(金工・真鍮補修)前田宏智(東京藝術大学准教授)
(銘木補修)株式会社匠和 心傳庵/木下幹久棟梁
(万華鏡制作)依田満・百合子

山下PMC担当者

丸山 優子、日比生 慶、中野 裕紀子、大橋 祐則、山添 康彦、栗田 文久、深瀬 章子

取材・文:寺尾 豊 写真:末安善之

MOA美術館 リニューアルプロジェクト