週刊 施設参謀 週刊 施設参謀

経営課題を解決するファシリティ・
CRE戦略マガジン

スペースマーケット重松大輔氏に訊く「シェアリングビジネスの未来とは?」

スペースマーケット重松大輔氏に訊く「シェアリングビジネスの未来とは?」

「民泊」という言葉を生んだ宿泊サイトAirbnb、一般人の車をタクシー代わりに呼べる配車サイトUber。この2つのシェアリングサービスの日本進出が口火を切り、シェアリングビジネスがいま勃興しようとしている。大学を出た時から新規ビジネスの立ち上げを決めていたと言う重松大輔氏は、出会うべくしてこの分野に出会い、新しいネットビジネスを立ち上げることになった。

きっかけは平日がら空きの結婚式場

スペースマーケットを立ち上げるきっかけとなったのは。

2000年に大手通信会社に就職したのですが、新しいビジネスを手がけたいという意向はそのときから持っていました。当時はインターネットの勃興期、インターネット関連は面白いだろうなと思っていました。

そして2006年に、創立間もないベンチャー企業に転職したんです。その会社は、インターネットでスポーツやお祭り、イベントなどの写真を販売する会社で、私はウェディング写真を専用サイトにアップして、結婚式の参加者に好きな写真を買っていただくサービスを立ち上げました。

このとき、結婚式場と提携をするので、頻繁に現地に足を運んだんですが、そこで式場は平日の昼間は全く稼働していないという問題を「発見」したんです。なんとか稼働率を上げられないかと相談されるうちに、空きスペースを利用するというアイデアを思いつく。それが起業につながったのです。

この仕事を立ち上げる間に、少子高齢化で廃校問題はクローズアップされていましたし、地方に行けば空き家問題も深刻化していました。自然とシェアリングエコノミーに関心は深まっていきました。

手応えは、起業当初から感じていらっしゃったのでしょうね。

もちろんです。先ほど、アイドルタイムを個人のパーティに貸し出すカフェの話をしましたが、昼間はカフェのお店を開くが、立地条件によって夜は早々と人通りがなくなるので早仕舞いするお店がありました。夜に店を開けても、人件費や材料の仕込み代で赤字になるからです。そこでスペースを借りてもらえば、何もコストはかからず収益が見込めます。

また別の例では、もともとは居酒屋だったところを居抜きでオフィスに利用しているウェブ制作会社がありました。しかし、据え付けられている豪華なキッチンは使うことがなく無駄になっていると。そこで貸し出すことにしたら、パーティに使ってもらえたり、料理教室に使ってもらえて、月に50万円ほどの売り上げが立っている。そんな風に、手持ちのスペースをうまく利用する発想が必要だと思いますし、実際に収益をあげている方が大勢いらっしゃいます。

安心してスペースが貸し借りできる環境づくりを

しかし現段階では貸し手にとってはまだ未知のもので、不安もあるような気がします。

スペースマーケットのオフィス内の会議室。
自社で使用しない時間はレンタルスペースとして貸し出している。

経験がなければ、たしかに不安に思うことがあるでしょう。面倒じゃないかとか、本当に借りてくれるのかと。なので、私たちのほうから、この施設を誰かに使ってもらいませんかと、その集客の仕方も含めて提案します。たとえば「キッチン付きスペース」という単語を紹介記事の中に入れるだけで、借り手の反応がぐっと上がるんです。そういう売り出し方も含めて、ぜひ相談していただきたいです。

それでも企業さんであれば、自社のスペースを貸すことは新しい不動産活用の事例になるだろうし、そのためのいい練習台だと考えることができます。やはり個人の方はまだ不安があるかもしれませんね。古民家を所有されている方に、コスプレイヤーが撮影会で使いたいからと言っても、そもそもコスプレイヤーという人種が理解できなければ受け入れることはむずかしい。でも実際にお会いすれば、目的を持ったフツーの人たちだし、利用した後は後片づけして元の状態で返却してくれます。心配なら最初は小さくはじめて、確かめていただきたい。

個人の方が貸し手になるケースというのは増えているんですか。

もちろん。きちんと収益を上げるために部屋を貸す個人の方が増えています。たとえば、平日は仕事で外に出るので、空いている時間は自宅を貸していらっしゃる方がいるのですが、部屋の中にカメラを設置して、施錠はスマートロックにしています。借り手が現地に到着したら連絡を入れてもらって開錠してあげる。この方の場合、借り手が部屋を使用している間もカメラでモニターするのが約束です。なんということもない50平米のスペースですが、立地がいいので、月に80万円のほどの収益を上げています。

また、おもてなしを生きがいに感じて部屋を貸す方がいらっしゃいます。借り手との親密なコミュニケーションがこの上ない喜びと感じておられます。うちはプラットホームを提供しているわけで、それぞれの考え方で利用していただければと思います。

今後の展開をどう読んでいますか。

おそらく個人の貸し借りは増えてくるでしょう。普及の決め手はレビューだと思います。現状では利用者の3割くらいがレビューをつけてくれていて、物件の良し悪しもわかりますし、貸し手の側から借りる方の素性もわかりますね。

民泊へのアプローチも始められましたが。

現状では法律を遵守して、きちんと旅館業の登録をされた方が貸し主になっています。実際に私たちが本格的に参入するのは、民泊法案が施行された後ですね。

私は、シェアリングエコノミー協会の代表理事も務めていて、この新しい経済をもっと普及させていきたいという立場ですが、どうやって規制するかという方向に議論が流れやすいのが心配です。諸外国では、滞在する日数だけを規制してあとは自由というのが一般的ですが、日本では規制しないで事故が起こったらどうするかという問題になる。

でも法律で規制されても、ホテルなどで何らかのトラブルは起こっています。規制一辺倒の議論で日本がどんどん諸外国から遅れてしまわないか心配ですし、先ほどのレビューを充実させるなどして、より安心な市場をつくることに努力すべきです。

Airbnbさんは黒船のようにやって来ました。どうやって巻き返しを図りますか。

現状では、外国人観光客をターゲットにAirbnbに先行されました。われわれはもちろん、そのお客さまを取り込みながら、さらにどうやって日本人の国内旅行者に参入してもらえるかを考える必要がある。民泊の法律制度が整えば、若い家族連れなどの需要は必ずあるはずでしょう。そこに向けたアプローチの作戦を練っているところです。

一方で、貸し手側にとってもただ物件を貸すだけではなく、経理処理や税務処理など付帯する作業も発生します。税制はまだこの新しい分野に追いついておらず、今後大きく変わっていくでしょう。そんな中で、貸し手側をサポートしながらきちんとこのビジネスを育てていきたいと考えています。

聞き手・文:陣内一徳
写真:鈴木愛子

重松大輔
Shigematsu Daisuke

1976年、千葉県生まれ。早稲田大学卒業後、2000年にNTT東日本入社。主に法人営業企画、プロモーションを担当。2006年 に同社を退社し、社員十数人のベンチャー企業・フォトクリエイトに入社する。一貫して新規事業、広報、採用に従事する。事業基盤であるインターネット写真サービスやフォトクラウド事業の企画を手掛け、東証マザーズ上場に貢献した。2014年1月に全国の貸しスペースをマッチングするスペースマーケットを創業。現在に至る。また、2016年1月に発足したシェアリングエコノミー協会では、代表理事を務める。