建設市況レポート(24年09月)
立ち位置の確認と、未来への見通し
選挙イヤーである本年を象徴するように、今月も日本、アメリカとそれぞれの状況が話題に上がっています。
選挙においては各国の未来について語られ、課題の棚卸もされて、自国を見直す良い機会であるようにも思います。
さて、これまでに国内の建設投資額や就業人口について見てきましたが、それぞれ世界的にはどのような位置付けとなるでしょうか。
前回記事における世界競争力ランキングでも取り上げたアメリカ、中国との比較で見てみます。
図表1を見ると、建設投資額は3国とも増加傾向ですが、その増加率は大きく異なります。
ここ20年で見ると、日本が約1.3倍、アメリカが約3.5倍、中国は約13.7倍となっています。
アメリカと中国においては、いずれも名目GDPの増加率を上回っています(図表2)。
最新の名目GDPに対する建設投資額の比率を見ると、日本は約11.9%、アメリカは約8.9%、中国は約25.6%となります。
図表1「各国の建設投資額の推移」
図表2「各国の名目GDPの推移」
3国すべてにおいて建設投資額が増加している一方で、建設業就業者数はどうなっているでしょうか。図表3より、直近の20年間において、日本を除きいずれの国も増加しているように見えます。しかし、中国では2022年より総人口が減少に転じ※1、生産年齢人口についてはもっと前の2017年から減少局面にあり(図表4)、同時期より建設業従業者数も伸び悩んでいるようです。アメリカの建設業就業者数は、その建設投資額に比して絶対数が存外少ないように見えますが、生産年齢人口の増加率をゆうに超える割合で増加しています。
図表3「各国の建設業従業者数の推移」
図表4「各国の生産年齢人口の推移」
各国で事情は異なり、それぞれに課題が見え隠れしますが、翻って日本を見たときに、じわじわと確実に進む生産年齢人口の減少、そしてそれを超えるペースで進む建設業就業者数の減少はやはり深刻に映ります。人材を集めることに成功しているアメリカは2100年までも人口は減らない見通しとなっています※2。言語や文化、宗教、歴史、地政学的な条件等様々に異なり、同じ戦略はとれませんが、我々は自分たちの国の未来について大いに考え、各所で様々な議論や動き出しが起こるような、前向きな熱量を持ちたいものです。
※1 中国の人口が減少、2023年にはインドが世界首位:国連予測(日本貿易振興機構 地域・分析レポート2022年9月27日)
※2 World Population Prospects 2022
資材、建築費指数の傾向
鉄鋼系資材(鉄スクラップを除く)、RC系資材とも横ばいです。
鉄スクラップ、銅、電線の価格は減少しています。
建築費指数はS造、RC造それぞれ1.3p、1.1p、上昇しています。これで3ヵ月連続の上昇となります。
資材、建築費指数の推移(鉄鋼系)
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 S 建築
現状維持
- ●山形鋼6×50ミリ 東京
- ●異形棒鋼16ミリ 東京
- ●熱延鋼板1.6ミリ 東京
- ●H形鋼5.5×8×200×100ミリ 東京
下降
- ●鉄スクラップ H2 東京
資材、建築費指数の推移(RC系)
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 RC 建築
現状維持
- ●セメント バラ 東京
- ●普通合板Ⅱ類 4ミリ 東京
- ●生コンクリート 建築 180キロ強度 東京
-
【3代目】アナリストK
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進部門 3部 チーフプロジェクトマネジャー岩下孝樹 -
アシスタントM
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進部門 1部松尾一輝