建設市況レポート(25年02月)
不透明な市場と建設業
米国の関税政策に対する不透明感や利上げ等も相まって、株価は停滞しています。
今回は日経平均株価と建築費指数、建設工事費デフレーター※1とを重ね合わせてみました。
図表1「日経平均株価/建築費指数/建設工事費デフレーターの推移(事務所S造)」

※建築費指数(純工事費)は東京の値を示す
※建設工事費デフレーターは全国指数を示す
※建築費指数(純工事費)及び建設工事費デフレーターは2015年平均指数を100とする
出所:建設物価調査会 建築費指数
日本経済新聞社 日経平均プロフィル
国土交通省 建設工事費デフレーター
図表2「日経平均株価/建築費指数/建設工事費デフレーターの推移(事務所S造)※直近3年間」

※建築費指数(純工事費)は東京の値を示す
※建設工事費デフレーターは全国指数を示す
※建築費指数(純工事費)及び建設工事費デフレーターは2015年平均指数を100とする
出所:建設物価調査会 建築費指数
日本経済新聞社 日経平均プロフィル
国土交通省 建設工事費デフレーター
図表1・2に示す通り、強い相関関係があると言えます。
日経平均株価と建築費指数との相関係数※2は0.95、建築費指数と建設工事費デフレーターとの相関係数は0.99となり、強い正の相関が見られます。上昇の起点に着目すると、日経平均株価の上昇から数カ月以上遅れて、建築費指数及び建設工事費デフレーターが上昇する傾向も伺えます。
一方、昨今の建設費の高騰や人手不足による建設計画の見送り等に端を発する設備投資の鈍化は、我が国の中長期的な経済成長にも影を落とします。
これはやがて株価にも影響を及ぼすことになります。
先日、国土交通省より2025年度公共工事設計労務単価が発表されました。
平均して前年度比6.0%の上昇となり、過去10年間で最も大きい伸び率となりました。
前々回のコラムでも触れましたが、労務費や輸送費は今後も継続して上昇する可能性があり、米国の関税政策によって、建設資材費がこれから更に上昇する懸念もあります。
我が国の経済に影響力のある建設をいかに推進していくか。
見通しの効かない情勢の中でも、歩みを進めるために関係者が協調し、考えを巡らせる必要がありそうです。
※1 建設工事費デフレーター:建設工事に係る「名目工事費額」を基準年度の「実質額」に変換するための指標。国土交通省が作成・公表する。
※2 相関係数:2つ以上のデータ間の関係の強弱を測る指標。1.0に近いほど正の相関が強く、0に近いほど相関がない。
資材、建築費指数の傾向
鉄鋼系資材、RC系資材とも横ばいです。
鉄スクラップ、銅及び電線も横ばいです。
建築費指数はS造が2.1P、RC造が1.5Pそれぞれ上昇しています。
直近2ヵ月の下降を帳消しにするような大きな上昇率となっています。
資材、建築費指数の推移(鉄鋼系)
出典:日経NEEDS / 建設物価調査会
建築費指数:2015年比/ それ以外:2011年4月比
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 S 建築
現状維持
- ●山形鋼6×50ミリ 東京
- ●異形棒鋼16ミリ 東京
- ●熱延鋼板1.6ミリ 東京
- ●H形鋼5.5×8×200×100ミリ 東京
- ●鉄スクラップ H2 東京
資材、建築費指数の推移(RC系)
出典:日経NEEDS / 建設物価調査会
建築費指数:2015年比/ 上記以外:2011年4月比
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 RC 建築
現状維持
- ●セメント バラ 東京
- ●普通合板Ⅱ類 4ミリ 東京
- ●生コンクリート 建築 180キロ強度 東京
-
【3代目】アナリストK
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プロジェクト統括本部 事業推進第二部門 5部 部長岩下孝樹 -
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